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18. 試合日記(11月第2週目)

日記を始める前に・・
前回のnoteで、コーチが痛みに耐えて戦うといった意味で ”Stop in the pain"とよく言っていると書きましたが、実際には"Stop in the paint"といっていたそうです。これは、リバウンドなどを叩けるようにゴール前でストップすることです。アイスホッケーのゴールには、キーパーしか入れない水色で塗られた小さなゾーンがあり、得点を決めたければそこでしっかり止まってリバウンドを叩けという意味でこの言葉が使われているとのことです。(写真の、キーパーが立っている水色の部分)

いやーお恥ずかしい。確かに今思うと、この言葉ゴール付近でしか使われてなかった!!(笑)とっても勉強になりました。
現在早稲田大学アイスホッケー部で活躍しており、過去に北米でホッケー経験のある友人、高橋寛伎(たかはしひろき)くんが教えてくれました。どうもありがとう!これからもみなさん英語教えてください!


それでは気を取り直して。日記の始まりです!

15日(木)
遠征地、オハイオ州ボーリンググリーンへの出発日。
朝、8時半に家を出てリンクへ向かう。
昨日の夜荷造りしておいてよかった。いつも遠征行くときは忘れ物ないか不安になるな。ずっと昔から、この心配性は治りそうにない。

リンクについてから、防具やスティックをバスに積んで、9時半にいよいよ出発。オハイオ州は暖かいのかな?初めて行く!楽しみ!

5時間ほど移動してから道中にあるレストランでランチ。サラダ、パスタ、チキンだった。アメリカにいる間にパスタを後何回食べることになるんだろう。美味しかったけどね。

再びバスに乗り移動。ちなみにバスはこんな感じ。

あと2時間ほどで到着するはず。ホテルに一度チェックインし、夜は練習。

おそらく、今日の練習は移動後で足がかなり重たいはず。だからこそ、いつもより多く走る。辛くても、もう一歩全力でスケート。無理だと思ったところからもう一歩だけ足を前に進めよう。本当に足がパンパンになるくらい動いておけば、明日の試合が楽になるはず。

最高の準備をして、明日の試合を迎えたい。
まずは今夜の練習。「優希は準備できている」というところをわかりやすく見せよう。

実は、移動中の時間はそんなに嫌いではない。今回は読書をした。
読んでいたのは、「銃・病原菌・鉄」という人類史の本。現在の世界に広がる「地域ごとの人類格差」がいかにして生まれたのかを紐解く本。なかなか面白い!空いている時間で読破したい!

9時半に出発して、16時15分にようやくボーリンググリーンに到着。

長かったけど、そこまで苦ではなかったな。
このあとディナーに行き、そのまま練習!

練習おわり!
45分間だったかな。
やっぱり足は重かった。でも、練習後半にはだいぶ動くようになってたからよかった!
内容は、5-0の攻め出しの形の確認だったり、小さいエリアでの3対3などを行った。
ボーリンググリーンのリンクは、自分の学校と比べてかなり小さい。特にコーナーはほぼスペースがない。
それに加えて、相手チームはかなりフィジカルにプレイしてくるチーム。おそらく、自由にパックを持たせてもらえる時間は1秒もないと思う。パックをもらう前に状況を確認して、パックをもらってからもすぐにシュートもしくは味方に繋げるようにする。そして、パスした後の相手のチェックにしっかり準備すること。怪我しないように。

これは簡単にパックを手放すということではない。もし選択肢がなければ、パックを隠して自分の体で守って味方を待つ。ヘビーにプレイする。

このあとディナーを食べにいったらホテルに戻って自由時間。なるべく早く寝るようにしよう。

夕食はステーキだった!美味しい!

部屋に帰ってきてからはリラックス。
ルームメイトとアメフトを見てる。

ねむいな。明日に備えて早く寝よう。
移動お疲れ様。


16日(金)
9時に起床。かなりゆっくり寝れた!気持ちのいい朝!

シャワーを浴びて、そのあと朝食を食べる。
再び部屋に戻り少しゆっくりしてから、プレゲームスケーティング。

多分15分くらいだけだろうな。二つのメニューやったらおわりのはず。夜の試合で、しっかり足を動かせるようになるためにも、その20分間でかなり追い込むこと!自分は昔から、一度思い切り疲れるくらい動いておいた方が後々いい動きができる。
さあ頑張ろう!いい準備!

練習おわり!メニューは3つだった。
ウォーミングアップを兼ねたシュートメニュー、その後2対1と3対3を行った。
体の状態はかなり良かった!3対3でもいいプレイでアシストできた!
練習後に、ロースター発表!試合メンバーには無事入れた。フォワードディフェンス一人ずつが今日は休み。

今までは、メンバーに入るためにどうしよう。入ったら、外されないようにどうしようということばかり考えていたが、今は少し考え方が変わってきたかもしれない。

それはコーチたちが決めることであり、自分の範囲外の話だ。
自分はただ、目の前のやるべきことを遂行するのみ。評価や結果はその過程で必ずついてくる。
メンバーから外されることを恐れず、今自分が与えられた環境に感謝すること!そして、満足せずに常に上を目指す。それだけ!
外されたら、それはその時にまた対処を考えたらいい。

練習後、お昼を食べてから2時間ほど昼寝。
シャワーを浴び、スーツを着て出発の準備を進める。ネクタイが一発で綺麗に結べた時は気持ちいいな。

鏡の前でかっこつける。試合前くらいいいよね。
さあ!頑張ろう!Tenacity!行くぞ!

ここで少し試合の日の移動手段を紹介。
遠征の時は、基本リンクからそこそこ近い距離のホテルに宿泊する。選手は、リンクまで自分で歩いていってもいいし、チームバスを使っても良い。
チームバスは、例えば19時からの試合であれば
バス①16:45 
バス②17:15 出発
というように2往復してくれる。早めにリンクに行きたい人はパス①、集合時間ちょうどに合わせていきたい人は②、自分のペースで行きたい人は徒歩というように選手に選択肢が与えられ、移動や時間のストレスが減らされるようになっている。

俺はリンクに少し早めに行き色々準備をしたい人なので、バス①で移動。
では試合行ってきます!!


試合終わり!いや、終わりというよりは俺だけ”強制終了”。
人生初めての試合途中一発退場を食らった。
1.2ピリは1セット目でプレイし、かなりいい動きができていた。試合のスターティングメンバー(5人のみ)にも選ばれ、足もかなり動いていた。決定的な得点チャンスもあった。出場機会も今までの試合で一番多かったと思う。

2点リードで迎えた第3ピリオド。このピリオドもスターティングラインとして出場。
3ピリが始まって15秒くらい過ぎた時、パックが相手陣地に放り込まれた。僕はパックを追ってスピードに乗りながら競り合っていたDFにフェンス際でボディチェック。”がっつり当たった”という表現が近いかも。その後、うずくまる相手。笛が鳴り、試合が止まる。これが、”checking from the behind”(後ろからの悪質なコンタクト)と見なされ、一発退場。
退場を食らった選手は、その試合中、チームのベンチにもいることは許されず、控室に戻ることを余儀なくされる。

ほぼ満員のリンクからの大ブーイングが一斉に僕に向けて浴びせられる。初めての経験だった。


ああーもう!!!
あれは明らかな反則だ。全く自分が相手に危険なチェックをするつもりはなかった。
チームは2-0でリードして迎えた3ピリ。残り20分を守りきれば勝ち。そんな中で、5分間のペナルティをしてしまった。何試合か出場停止をくらうかもしれない。
本当に相手にも、チームにも申し訳ない。
くそ!!!せっかくいいプレイが続いていたのに!!自分のプレイでそのチャンスを逃した!Tenacityと、ラフなプレイは全く違う!
相手を痛めつけるつもりなんて全くなかった!それでも結果的にこうなってしまった。もう!くそ!


…っていうのが、退場してすぐ控え室で書いたやつ。これを書いている時点でだいぶ余裕があるんだけど(笑)

ここからは部屋に戻ってきてから。
試合は無事勝利!これがほんとに良かった!しかも5-0。まずは勝てて本当に安心。
俺のペナルティから流れが変わって逆転されててもおかしくなかった。ツイていた。

そしてコーチやチームメイトの反応は、とてもポジティブだった。誰一人として俺を責めず、むしろ強い気持ちが出てたと言ってくれた。

もちろん、反則ではあるしそれを許容してるわけではない。それでも優しくみんな迎え入れてくれた。ほんとに良かった。チェックした相手も、怪我もなかったそうだ。

試合を振り返るといいプレイがかなりあった。初めてコンスタントに試合にも出れた。
Tenacityはかなり表現できた。
今日の成長は、得点チャンスがあったということ。
リバウンドが目の前にこぼれてきた。シュートしたものの、ゴールの数センチ横へ外れ決めることができなかった…。

悔しい!!と思うかも知れないけど、俺としてはかなり成長。今までそんなチャンスなかったもん。次はこれを決めるだけ!
少しずつだけど、確実に、前に進んでる。
明日出場停止食らわずに、なんとか出れたらいいなぁ。

もし出れたら確実に敵から狙われるだろうけど、屈しない。
俺は本気でプレイしてるんだ。生半可な気持ちの相手とは覚悟が違う。一緒にするな。
どれだけブーイング受けようと、相手がチェックに来ようとも、関係ない。
いつでもかかってこい!
俺は負けない。

おそらくパスした後などもかなりあたりに来るだろうから、怪我に気をつける。熱くスマートにプレイ。

とか言って出場停止来たらへこむなぁ。笑
明日の試合もでれますようにでれますようにでれますように!!!!


17日(土)
夜ぐっすり眠れた!9時起床。昨日と同じスケジュール。朝食の後に少しゆっくりしてプレゲームスケート。
スケート前の全体ビデオミーティングでは、自分の昨日の良かったプレイがいくつか使われていてとても嬉しかった。

そして昨日の反則についてだが、出場停止はなかったようだ!今夜の試合も出れる!良かった!
チームみんなから、昨日のチェックについて色々いじられる。(笑) 
ある意味認めてもらえてるのかもしれない。

体はかなり動きそう!
今日、一番大事なのは、相手の雰囲気に飲まれないこと。ビビらないこと。腰が引けたら負ける。相手はきっと報復するつもりであたりに来るぞ。真っ向から受けてやる。観客もきっと俺が登場した瞬間ブーイングだろう。
だからどうした。関係ない。プレイで違いを見せつける。真摯に取り組む。ラフにはならない。

昼寝を終えて、そろそろ試合へ出発の準備。

少しだけ心境の変化があったのでここにメモ。自分個人のポイントにこだわりすぎず、勝利に貢献することを第一に考えよう。最近までは、とにかくポイントを残さなければこの先プロにはなれないという焦りがかなりあった。いや、それはもちろん今でもある。
ただ、数字に映らない部分でもいくらでもチームの勝利に貢献することは可能だ。そして、そういうことを続ける選手には必ずいいことが起きるし、それを評価してくれる人がこの先にも出てきてくれるはずだ。あまり固執せず、今はチームのためにプレイすることを徹底。ポイントはおまけ。


ホテル出るときに、おそらく相手チームのファンの人たちが数人いて、俺の顔を見るなり、コソコソと話をし始めた。
「昨日反則したあいつ今日出るのかよ。」と言っているのが丸わかり。

試合中完全アウェイだろうなぁ。
いい機会!こんなにいろんな人から注目されたことはないんじゃないか?多分初めての経験。正々堂々と、凛とした態度で相手に打ち勝つ!
正当に、勝つ。
少し怖い気持ちがあるのは事実。それでも、ビビるな。絶対気持ちで負けない。常に挑み続ける。
俺にはそれがやれる。行くぞ!


試合終わり!結果は2-5で負け。
自分はノーポイントだった。全体を通しては悪くなかった。一回2-1の場面で味方にノーマークパスを出すことができた。
今日はまた1セット目として出場。
スターティングラインは試合が始まるときに一人ずつ紹介されるのだが、俺の名前が呼ばれた瞬間観客全員ブーイング。
ただ、意外に全く動じることはなかった。
雰囲気に打ち勝つことができていた。

試合開始直前に、昨日チェックをしてしまった選手と話せる機会があったので、昨日のことを謝ったら平気だよと言ってくれた。

試合内容については、かなり両チーム反則が多く、自分は5-5でしか出番がなかったのでそこまで滞氷時間は多くなかった。

それでも、今までに比べたらかなり出番をもらっていた方だ。
2試合連続で1セット目としてプレイできたことは自信に繋がった。
ただ、やはりここで何かを残したかったな。
2試合を通して決定的チャンスは1.2回。そこを決めないと。

逆にいうと、それほどしか得点機に絡めていないという事実。もっと演出しないと。
試合前は、ポイントこだわらないとか言ってるけど、いざ試合が終わってノーポイントだと「ああもう・・」ってなるのがアスリートの現実。(笑)


試合終了後、そのまま学校への帰路に就く。帰りのバスは、なんだか寝る気になれなかった。22時に出発して、到着が朝4時。

移動中、色々考えていた。
この2試合のことや、これから先のこと。

おそらく、あっという間にこの学生生活は終わってしまうんだろうな。時が過ぎるのは本当に早い。
「気づいたら、もう卒業。」なんてことになりかねない。
今こうして、本気で悩んで、本気でぶつかって、本気で勝負ができる環境にいれることはかけがえのない時間だと思う。10年後に、今この瞬間を振り返ったら自分はどう思うのかな。後悔だけはしたくない。
勉強もホッケーも、毎日笑顔で頑張ろう!

なんてことを考えながら、youtubeの漫才を見て時間をつぶす自分。移動長えよ!!早く着いて!!!!お尻痛い!!!ベッドで寝たい!!!


今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。実は、この遠征中、ミシガン州在住のスポーツライターである谷口輝世子(Twitterはこちら)さんとお会いすることができました。わざわざ遠くからも自分の試合を見に来てくれる方たちがいるのは本当に幸せです。


また月曜から、新しいチャレンジです!がんばります!

三浦優希






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