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【介護3.0時代】介護士の賃金が8万円アップする? #1

介護業界では、1年以上前から「勤続10年以上の介護士に8万円を支給する」といった国の方針が示されてきました。

おー厚労省も太っ腹!と思うかもしれませんが、介護業界に長年いる身としては「うーん・・・結局ね・・・」ということも多いのです。

介護士の賃金を改善することは、これからの高齢化に伴い絶対的に必要なことだと思います。しかし、ただ単純に長く働けば給料がよくなるというメッセージの給与改善は如何なものかと思います。今回は、介護士の賃金を改善する新しい加算について、個人的な意見を書いていきます。

勤続10年ってどうゆうこと?

1年前までは、細かいルールが明示されないまま「勤続10年以上の介護士の賃金を8万円アップする」といった方針だけが介護の世界で流れていました。

当時、介護士の上位資格として試験に合格しないと実務につけないケアマネジャーとして働いている友人は、「10年働けば8万円上がるなら現場に戻る。ケアマネジャーとして働くより給料よくなるし。」と言っていました。単純に10年以上働けばいいと言うルールでは、このようにキャリアアップの仕組みのジレンマが生まれる可能性がありました。

2019年3月の社会保障審議会で、この賃金改善の加算を「特定処遇改善加算」という加算名で示され、「勤続10年」の定義が「同一法人で10年以上働いていなくても、介護福祉士を取得して10年以上経っていなくても構わない。そもそも、10年以上にこだわらなくても構わない。各事業所の裁量で評価の高い介護士には賃金をアップさせることができる。」とされました。(そもそも10年以上にこだわらなくてもいいのかい!!)

長く働けば評価されるという単純な賃金改善は安直すぎると思っていたので、各事業所でしっかりと評価された介護士の賃金が改善されるよう、柔軟になったことはいいことだと思す。

賃金改善の加算は企業に搾取されている

介護保険は社会保険のため、すべての料金が単位として決められ、その単位に地域区分をかけることで料金が決まります。

例えば

 東京で1時間の入浴介助を自宅で実施した場合

  388単位 * 11.4(地域区分)= 4,423円

となります。そして、この基本的な料金に、品質の高いサービスを提供ための仕組みや、キャリアアップの仕組みを導入している場合に、加算が上乗せされ料金が決定します。

特定処遇改善加算もその加算の一つです。


特定処遇改善加算を各事業所の裁量で分配できるようになったのはいいのですが、結局今回の加算も事業所・企業に搾取されるんじゃないのか?ということが気になります。

2012年に処遇改善加算という介護士の賃金改善を目的とした加算ができた時も、様々な方法で企業が搾取している事例を聞きます。例えば、賞与と組み合わせて従業員へ払うことで、賞与を低く抑えて処遇改善加算分を追加し、「結局ボーナスほとんど変わってないやん!」ってこと結構聞きました。実際に、目の当たりにしたこともあります。

今回の加算もそんなことあるんじゃないのかなと思っています。処遇改善加算は、事業所内に支給方法などを掲示し、周知させなくてはいけないルールがあります。介護士の方たちは、今回の特定処遇改善加算の支給方法などをきちんと確認し、企業側にきちんと説明してもらうことが大切だと思います。

企業に搾取されないように!

介護の世界の評価とは?加算に込められた意図と現実のギャップ

処遇改善加算のように企業に搾取されないよう、特定処遇改善加算が支給されたとして、誰が受け取ることができるのか?

介護事業所が、どんな人を優秀と判断して特定処遇改善加算分で入ってくるお金を支給するのか非常に気になるところです。なぜかというと、

介護に限らず、サービス業は人を評価するのが非常に難しいからです。営業職など、数字で現れる場合は、評価の指標や重み付けがはっきりしやすいですが、良いサービスを提供しているのかどうかって、誰がどう決めているのかわかりづらい。特に介護の世界は、中小零細企業が多く、人事制度がしっかり構築できていない企業が多い。そんな現状の中で、誰が何を指標に評価をして賃金をアップさせるのか非常に問題になってくると思います。

私も、老人ホームで施設長をやっていた時には、定期的な人事評価は存在せず、誰をどう評価するのか決まっていませんでした。そして、従業員みんなお金に対してかなりシビア・・・そりゃそうだと思いますが、現場のスタッフ同士で明細見せ合ったりして、「なんで私があの人より低いの?」と何人も言いにきました。今回も、こんなこと起こるんだろうなと思っています。

人事制度について考える余裕がない企業は、HR系のサービスがたくさん出ているので、良いサービスを取り入れてアウトソーシングするのがいいと思います。納得感ある支給の方法を取り入れないと、現場は混乱することになるはずです。

まとめ

勤続10年以上の介護士の賃金を8万円改善する「特定処遇改善加算」は、同じ法人で働かなくても支給され、10年以上の定義はあくまで目安というところ。各事業所が優秀な人材を評価し支給できる仕組みだった。

■ 介護士は加算分を企業に搾取されないよう支給方法などをきちんと確認する

■ 企業は、従業員が納得する評価の仕組みを導入して混乱を防ぐこと

今回の特別処遇改善加算の導入に必要なことだと感じました。でも、介護士の賃金改善に国が力を入れていることは素晴らしいです。弊社で提供している介護保険外サービスも、きちんと納得のいく評価制度のもと、賃金の改善に取り組んでいきます!!

弊社の運営する「くらしのサポーターイチロウ」の評価の制度はまた後日に。

では!


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