非正規労働者の選択肢

派遣社員で働いているけど、いつまで雇われるか心配、いつかは正社員で働きたいと思っている人は多いだろう。そんな人にとって、2015年に施行された3年ルール(同一派遣先で3年以上働いてはいけない)、その前の2013年に施行された5年ルール(同じ雇用主の元で5年を超えて非正規のまま働き続けたら、労働者に無期雇用の意思があればこれを受け入れなければならない)ができたときは、悲喜こもごもしたのではないだろうか。かくいう、私もその一人だ。

派遣社員として働く理由

私はフリーライターと名乗っているものの、実は派遣社員として、某大手企業の広報室で、社内誌、社史、WEB記事などなどを書く仕事をしている。その合間に、その他一般の雑誌やWEB、たまには書籍ライターをしているといった具合。

この生活はかれこれ10年!派遣社員として10年も働いているのか!と自分でもびっくりする。上の承認がもらえないと仕事が進まなかったり、人のスケジュールの管理をさせられたり、偉そうに指図されたりするのが嫌で、OLやめたのに、そういうことを日常的に行う大手企業の派遣社員で働いているとはある意味奇跡。

最初に登録したときは、業界のことが知れる、最先端技術に触れることができる、何より、社史や環境報告書などのお堅い冊子制作にも携われるなど、ライターとしての経験を積みたいがために入ったのだ。数年も経験すれば、この業界のライターとして独立もできるし、頑張るぞ!と残業覚悟で入ったのだが、蓋をあけてみれば、大手企業がゆえに、

強制一斉休暇(←派遣社員は有給休暇を強制的に使わせられる)、プレミアムペイデー(←ボーナスないのに帰宅させられる)、春闘(←ストライキおこしても時給あがらないのにストライキさせられる)、ノー残業デー(←結局次の日残業になる無駄な日)、休みが取りやすい(←と思っているのは私だけのよう)

などなど、やたらめったらと休みが多く、かつ取りやすく、別の雑誌の取材などに平日ど真ん中に早退遅刻をしても文句も言われず、なんだか居心地良すぎて、根が生えてしまい、10年が経過した。

3年ルール適用日

そして、冒頭に書いた法改正により、2018年問題が勃発したのは記憶に新しいところ。だが、この2018年問題、結局、どれくらいの人が正規労働者になれたのだろうか?アベノミクスは安定雇用を見据えて、施行したものの、最初は失業、雇止めなどの文字が紙面をにぎわし、どうなるどうなる?と右往左往した人も多いのでは?しかし、蓋をあけてみると「空前の売り手市場」「有効求人倍率○○増加」など、さも、安定雇用につながった!という結果に無理やりなっているようだが、私の周りからはそんな声は聞かれない。

私もその2018年問題に巻き込まれるのか?と思いきや、部署転換があったため、2018年はそのまま派遣社員として据え置きとなった。部署転換といっても、部署の名前が変わって、ちょっと人が動いただけで、派遣社員たちの仕事内容は変わっていない。こんなんで、3年ルールを切り抜けることができるなら、契約書に適当に部署名を書いておけばいいじゃないかと思っていた。

3か月ごとに契約更新している私は、そんな3年ルールも忘れ、のほほんと仕事をしていた2019年2月末。いきなり、派遣の営業担当がきて

「あの~、実は3月末で3年ルールが適用になりまして、企業側はゆきんこさんをそのまま契約継続したいということで、無期雇用の説明に参りました」

いやいやいや、待て待て。確か、3年たった派遣社員は

1.雇用主に直接正社員として雇ってもらう

2.1が無理なら派遣元が無期雇用として雇う

という流れのはず。1をすっとばしたのはなぜだ?

「それはですね、こちらの企業さんは正社員雇用が難しくて、今までも派遣社員の方が正社員になったのは、ごくわずか、それも男性の特殊スキルがある人のみなんです。」

そーいうことか。一般事務、総務、経理など、縁の下の力持ち的仕事は変わりがいるってか!しかし、無期雇用は私が希望したらなるんじゃ?

「このままこちらの企業で働き続けるには、派遣会社の無期雇用になるしか道はありません。もし無期雇用にならないということであれば、雇止めということになります」

や、雇止め!わが身に降りかかった!!!

無期雇用の実態

もし、雇止めになったとしても、フリーでやっていく自信もそこそこついてきたし、それはそれでよかったのだが、10年も働いたのに、どうも納得がいかないし、もし戦ったとしたらどんな仕打ちにあうか気にもなったので、若い営業男子に食い下がることにした。

「まあ、選択肢は、この企業で働くなら、無期雇用の用紙にサインしろってことですよね。じゃ、ひとまず、その無期雇用の概要を聞きます」

と最初はしおらしくいってみた。が、すぐにイライラしてくることになる。

まずは、こちらなんですけどと契約書を見せられた。今の時給と見た目は同じような感じだが、よ~~~~~く見ると

基本給+職能給+交通費と別れてて、すっごいここがポイントですよみたいな感じで

交通費1万円まで付与と書いてあった。

いやいやいや、そもそも交通費は2万円かかってますし、額面が一緒でも、そうやって分けられたとしたら、

基本給が低くなる=残業代の割増料金が減る&有給休暇取得時の時給も下がる

ってことで、派遣先が負担しなくちゃいけないところを、実質派遣社員に負担させるというめちゃくちゃ姑息な手じゃないか!!!!と気づいた。

しかも、無期雇用のメリットが

雇い主から契約を切られたとしても、2か月間は給与の6割至急します。(ただし、弊社側から派遣先を紹介されて面接にいった場合)

は?????ということは、私の希望になるべくマッチしつつも、給与支給対象になったら、払いたくない派遣会社は、ちょっと妥協して、派遣先を紹介し、私が、ここいやです~と断ったら、「あなたは私たちが紹介してあげた会社を受け入れなかったのだから、給与は支給しません」

ということなのだ。

無期雇用のメリットがまったく見つからない。時給は下がるけど、今のまま働き続けられるよってことだけ。

ということで、あまりにも衝撃的な無期雇用の説明に愕然としながら

「この説明で、あなたなら納得して無期雇用になりますか?簡単に言えば、ちょっと時給は下がるけど、このまま雇い主が雇ってくれる限り働けますよってことで、何もいいことないですよね?ひとまず、今日は保留ということで」

といって、立ち去ろうとしたら、若い営業男子があわてふためき

「え?あの、契約更新の通達しなくちゃいけないんですけど、どうしたら?」

どーしたらじゃねーぞ!こら~~~~~!そもそも、こんな無茶苦茶な条件で、「はい無期雇用になります!」というと思ったのか!あほんだら~!なにが、このまま働けますよ~だ。なぜ、お前が上から目線なんだ!私らが働いてるから、君たちは給料もらえるんじゃないか!しかも、君たちは私らが働けば働くほど、営業成績がよいとみなされ、ボーナスはあがるわけだ。が、10年もひたすら働いている私は、なんと、この10年であがった時給は15円、たった15円ですぞ!景気が回復しているというのは、どこのどいつだ~~~~!立ち去れ~小僧~

と言いたいのをぐっとこらえて

「ちょっと考えさせてください」と面談を終了した。

交渉スタート

とは言いつつも、やめるつもりはなかったので、ひとまず、息を整え、いつも私の遅刻早退を温かい目で見つめ、有給使い果たしてもさらに休みまくる私を許し、なかば放牧状態にしてくれている課長にこのことを言ってみた。

「あの~、なんか、無期雇用にならないと、3月一杯で私、雇止めらしいです。お世話になりました」

「え?どういうこと、こちら側は延長申し込んだけど・・・」

「というか、やっぱり正社員にするのは難しいんですよね?」

「う~ん、それはね、難しいんだよ。ごめんね。でも、無期雇用は無理なの?」

と言われ、先ほどの顛末をかくかくしかじか、ぶ~ぶ~、文句たれつつ言ったら

「そうか、時給も今より、上げられないんだよ。ほんとに力がなくて申し訳ない。でも、ゆきんこさんに急に辞められたら、すっごく困るんだよ。どーしようか?」

ま、そーでしょうね?この会社は正社員になるには男子の有スキル者じゃないと無理だもんね。

ということで、派遣会社にも時給交渉、せめて、低くならないようにならないかと何度もお願いしているのに

「雇用主さまに時給交渉をしてみたんですが、やはり難しいですという答えで・・・雇用主さまがあげてくれないと、こちら側としては難しいというのが現実です」

というか、10年も働いたんだから、ちっとは自分ところから払うということはできないもんなんだろうか?

という、まったく進展のない交渉をしてすでに3月。本当はもし、無期雇用にならないのであれば、2月中には雇用主に派遣会社は、契約更新打ち切りを言わないといけないのだが、いまだに言っていない。

さて、この顛末、どーなるかな?時給があがらないのであれば、無期雇用にサインしないということは伝えたから、あとは派遣会社待ち。もし、時給上げれないということであれば、契約満了を会社に伝えてくださいね~と言っておいた。あの営業担当さん、どういう結果を持ってくるだろうか。

ま、今月で契約満了と決まれば、出たばっかりの有給使ってさっさとやめようと思う。ルーティンの仕事がないから、引き継ぎもいらないし、次にライターを雇えばいいだけだし。

3月に入ってから、契約満了を伝えたら派遣先のペナルティーになるはずだし、さて、どうなる無期雇用の戦い!と思いつつも、派遣会社は私一人だけ時給あげるわけないし、もう雇止め確定!といそいそと机の片づけを始めている。

課長は「やめないよね?やめないよね?」とぶつぶつ言っているが、こればっかりはあんたたちが金を出さないからいけないのだ。

さて、誰がおれるか、無期雇用の戦いは続く

#非正規労働者 #派遣社員 #ライター

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