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#006 経営戦略を立てる上で SWOT 分析が重要な理由

画像1皆さんの会社では、部門間で意見の対立がおきること、ありませんか?
例えば、商品企画と商品開発。
企画:「今度の商品のコンセプトはこれなので、こんな機能を入れて欲しいんだけど。」
開発:「その機能は開発するの大変だし、そもそも時代遅れですよ。本当にやるの?」
企画:「いやー、そんなこと言われても、このコンセプトは○○部長が決めたんだから、何かしらそれらしい機能を追加しないと…」
開発: 「いやいや、そんないいかげんな。それに、そのスケジュールじゃ無理だって。だったら発売半年延ばしてよ。」

…こんな会話、どこの会社でも日常的に行われているように思います。

こうした対立が起きる原因をたどっていくと、最終的には「筋の通った事業戦略が存在しない」という問題に突き当たることが多いです。そして、そのような筋の通った事業戦略を構築するためには、徹底した「環境分析」を行う事が重要です。
環境分析の基本は SWOT 分析。あたりまえすぎて軽視しがちですが、SWOT は VUCA な時代においても重要なフレームワークです。

以下、SWOT 分析がチーム内の対立解消に有効な理由についてまとめてみたいと思います。チーム内の連携がとれると、人・モノ・金・情報を有効に活用することができるようになり、結果、会社が儲かるようになります。

SWOT 分析とは

SWOT分析は、1920年代からハーバードビジネススクールが中心となって開発されてきた企業の環境分析手法の一つです。

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自社の状況を、
・自社の強み(S: Strength)
・自社の弱み(W: Weakness)
・外部の機会(O: Opportunity)
・外部の脅威(T: Threat)

の4つの視点から分析し、経営戦略の基礎とします。
とっても有名なフレームワークなので、一度は目にした・やってみた事があるのではないかと思います。

SWOT に必要なのは「検証」と「アップデート」

この SWOT 分析、事業の経営計画などを立てる際、その経営計画立案の最初のフェーズで行う事が多いのですが、にもかかわらず、その SWOT 分析の結果がその後の経営計画策定にほとんど活かされていないケースが多いように思います。

このような経営計画に活かされない SWOT 分析に共通するのは、その分析が単なる担当者による穴埋めレベルで終わっていて、その内容に客観性がない、ということです。ひどい例になると、3年前の SWOT 分析の結果がそのままコピペされているような例まであったりします。

本当に経営計画に役に立つような SWOT 分析を行うためには、以下の2点が重要です。
(1) 検証をきちんと行うこと。その SWOT 分析の内容が客観的に正しく、エビデンス(証拠)があることが重要です。例えば、強みに「開発力」とある場合、他社と比較してどれだけ開発に投資をしているか、開発人材に強みがあるか、特許はどうか、などが客観的な数値で抑えられていなければなりません。
(2) アップデートされていること。事業環境というのは時々刻々と変化していきます。その変化に応じて SWOT 分析の内容もタイムリーに更新していかなければいけません。さらには、未来を見据え、今後その SWOT がどのように変化していくのか未来の予測が立てられているかも重要です。

この作業を行うことで、これまで見えていなかった自社の強み・弱み、外部の機会・脅威を洗い出すことができます。これをやらずに立案した事業計画は、独りよがりで、ふわふわしたものになりがちです。

クロス SWOT 分析について

SWOT 分析ができたら、次にクロス SWOT 分析を行います。

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クロス SWOT 分析は、自社の強み・弱み、外部の機会・脅威を上図のように組み合わせることで、自社の戦略に落とし込む分析方法です。
具体的には、以下の観点で、どういう戦略に注力していくべきかを検討します。

・機会 x 強み: 自社の強みを機会にぶつけていくという、成長戦略の王道。

・機会 x 弱み: 自社の強みを活かせないこの領域はあまり注目されることがないのですが、例えば、法規制が緩和されて市場が一気に広がるとか、インバウンド客がすごい勢いで増えているなど、無視できない程のチャンスが目の前に広がっている場合には、敢えて自社の不得意な部分を克服してでもチャレンジするような状況はあったりします。

・脅威 x 強み: 市場が小さくなったり、競争が激しくなったりする逆境の中で、どうやって自社の強みで差別化していくかを考える領域。既存事業の生き残りを考えるような場合には、この土俵で戦うことになります。既存事業における戦略立案はここに当てはまることが多いと思われます。

・脅威 x 弱み: 防御。どんどん厳しくなる環境の中、如何にリスク管理を上手に行い、自社の弱みを克服していくかが戦略の中心になります。

このクロス SWOT 分析を行う事で、事業における自社の戦略をかなり明確にすることができます。
ややもすると、戦略立案時に広い視野を持つことができず、これまでの自社の勝ちパターンに固執してしまうことがあります。そうなると、戦略が「今見えている競合他社にどうやって勝っていくか」、すなわち「脅威 x 強み」の中だけで閉じてしまいがちです。
クロス SWOT 分析のフレームワークを使う事で、視野を広げ、より勝てる可能性の高い事業戦略を立案できるようになります。

企業の戦略全体における SWOT 分析の位置づけ

さて、冒頭にあった企画と開発とのコンフリクトの話。
なぜ SWOT 分析をベースに事業戦略を立案できると、こうしたコンフリクトが解消するのでしょうか?

前回の『「まんぷく」に学ぶ、新市場開拓に必要なリーダーシップ』の記事に書いた戦略の関連図に、フレームワークを加筆して図を書き直してみましよう。

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大切なのは、商品開発やマーケティングなどの個々の機能別戦略は、その事業に関する「環境分析」と、環境分析に基づいて導き出される「経営戦略」の下位に位置する、ということです。

例えば、マーケティング部門が、もっと顧客との関係性を深めるために B2C のブランディングを重視したいと言ってきても、そのビジネスの経営戦略として勝てる領域を B2B だと判断したのであれば、そのような B2C のブランディングに貴重なコストをかけても無駄になってしまいます。

それぞれの部門は、油断していると自分たちのやりたいことを次々に提案してきます。しかし、限られたリソースを最大限に活かすためには、その事業の経営戦略をきちんと立案し、その戦略を実行するために本当に必要な施策に対してリソースを投入していくことが重要です。

正しい経営戦略が、人・モノ・金・情報を最大限に活かす

きちんと環境分析を行い、正しい経営戦略を立案し、その戦略をメンバー全員が腹落ちしている状態にする。
そうすることで、部門から上がってきた施策が本当に必要なものであるか、正しいものであるかを客観的に判断することができ、本当に必要な施策にリソースを集中させることができます。判断に迷うことも減り、意志決定のスピードも上がるでしょう。

特に、人・モノ・金に限界のある中小企業では、こうした環境分析と戦略立案が非常に重要です。

まとめ。

(1) 一本筋の通った事業戦略がないと、マーケや開発、人事、財務など、その下にぶら下がる機能別戦略がバラバラになり、それぞれが勝手なことをやりはじめます。その結果として、人・モノ・金に膨大な無駄が生じます。
(2) 筋の通った事業戦略を立てるためには、徹底的に環境分析を行う事が重要です。そして、環境分析にもっとも役立つツールは SWOT 分析です。VUCA な時代においても SWOT 分析の重要性は変わりません。
(3) SWOT 分析を行う際には、「なんとなく」「自分たちはそう思う」で項目を埋めるのではなく、客観的で、かつ、数値化されたエビデンスを残すようにしなければいけません。必要に応じて、外部の業者に調査を委託することも重要です。また、環境は時間がたつにつれて変化するので、できるだけ頻繁に見直しを行う必要があります。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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