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#025 その残業規制に因果関係はありますか?

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前回のエントリ「因果関係」についてまとめました。

会社を経営していく中で日々実行している「施策」と「解決したい課題」の間には、この因果関係があるはずです。

ところが、世の中の施策の中には、この因果関係がはっきりしないものが多くあります。
代表的な例が「働き方改革」に伴う残業規制です。

「残業の上限規制は生産性を下げる」企業の5割、働き方改革関連法「経営に支障出る」 | キャリコネニュース
https://news.careerconnection.jp/?p=59958

多くの企業において、政府から出された残業規制の基準に従うことが目的になり、そのための施策が「社員を無理やり会社の外に出すこと」になってしまっています。
本来、生産性を上げるための「業務の効率化」を施策として行い(因)、その結果として「残業時間が減る」(果)となるべきであるのに、施策もないままに残業時間を無理やり減らすことで、業務の色々なところにひずみが出始めています。

働き方改革が進まない2つのケース

これまでの「長時間だらだら働く」という働き方を「改革」し、より生産性を上げ、残業を減らそうと言う試みが進められています。
「残業は月に20時間まで」「金曜日は残業禁止」といったルールが設けられるようになったところも多いと思います。

しかし、実際には、本来先に手をつけるべき「無駄な業務やルールの削減」「非効率な業務のやり方の見直し」「現場への権限委譲」などの施策が行われず、出口である残業時間だけがKPI・KGIになってしまっているために、「残業時間の計上対象外である管理職の負担の増加」「サービス残業の増加」「業務の自宅への持ち帰り」などが常態化しているところもあるようです。

働き方改革で増加する「持ち帰り残業」の盲点 | ご存じですか?あなたの会社のワークルール | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
https://toyokeizai.net/articles/-/154089

こうした事態をもたらす原因として、大きく以下の2つのケースがあると考えています。

(1) 業務の無駄の原因がどこにあるかはわかってはいるけど、手をつけられない、もしくは手をつけるのが面倒なため、アンタッチャブルな業務としてリーダーが敢えて目をつぶっているケース
(2) 本当にリーダーが無駄な業務やルールなどの存在を認識していないケース

(1) は、優秀なリーダーに多いケースです。敢えて働き方改革の話題を取り上げないことが組織のなかで暗黙の了解のようになっています。正直、こちらに関してはあまり打つ手がありません。
(2) に関しては、ずっと同じ職場で仕事してきた生え抜きのリーダーに多いケースです。こちらは、無駄な業務をきちんと指摘すれば改善の可能性があるという点で、まだ見込みがあるように思います。

生産性を向上させる2つの視点と考え方

では、特に上記(2)のケースに関して、どのような「改革」を行えば生産性向上につなげることが出来るのでしょうか。

私が以前診断にお伺いした企業の方が、以下のようなことをおっしゃっていました。

「楽して儲けるにはどうしたら良いかを日々考えている」

確かに、この言葉が実現できれば生産性が向上し、働き方改革が進むように思います。

この、「楽して儲ける」事を私なりにブレークダウンすると、以下の2つの施策が重要なのではないかと思います。

(1) 経営者の視点からは、楽して儲けられる「戦略」を考えること。
(2) 現場の視点からは、目の前の仕事をどうやったらもっと簡単にできるかを考えること。

(1) は、これまでのビジネスに囚われず、SWOT等のフレームワークを駆使して、自社にとって最も適した戦略を立案し、その戦略に基づいて個別の機能戦略を遂行することです。
これにより、会社全体のリソースをもっとも儲かるところに集中させ、「楽して儲ける」ことに近づけることができます。
詳細はこちらのエントリも参考にしてください。

#006 経営戦略を立てる上で SWOT 分析が重要な理由|多田幸生(中小企業診断士H30合格)|note
 https://note.mu/yukio_tada/n/n9115b0b1becd

また、(2) に関しては、日々同じ仕事のやり方を繰り返すのではなく、少しでも「簡単に」できるようにするためにはどうしたらよいかを考え、改善を続けることが重要だと思います。
以下のエントリでも書いたとおり、「生産性向上」などというととても難しく聞こえますが、「目の前のしごとをより簡単にする」という視点で日々の業務を見直すと、工夫すべき点はたくさん見つかるのではないかと思います。

#023 仕事用のかっこいいメールアドレスを作る - (6) Gmailとの連携で更に便利に|多田幸生(中小企業診断士H30合格)|note
https://note.mu/yukio_tada/n/n42fb5cfec420

施策の質を上げるために重要なのは社外からの学び

こうした施策を、経営の視点や現場の視点で考えていく上で、自分たちのこれまでの経験の中だけからアイデアを出そうとすると、どうしても行き詰まってしまうことが多いように思います。
ここで大切なのは、自社の枠を超え、これまで自分たちが知らなかった社外の知見を得ること、です。

例えば、工場の無駄を無くすために効果があるのは、無駄のない先進的な工場を見学することです。優れた会社さんの中には、社員旅行の一環として先進的な工場を定期的に見学するといった取組みを進めていらっしゃるところがあります。最近では、台湾や中国(深圳など)の工場を視察すると、アジアの工場がどれだけ進んでいるか実感できるようです。

また、ホワイトカラーの生産性を上げるためには、工場の例と同様に、生産性の高い職場での働き方を知ること、特に外資やスタートアップで働いている人の話を聞くことが良いと思います。これまで自分たちが当たり前だと思っていたルールが実は当たり前ではないことを知ると、自分たちの仕事のやり方に危機感を覚え、日々の業務の改善に繋がることが多いようです。

知らないところからはアイデアは出ません。
かつて、日本が高度経済成長を遂げた頃、海外を視察することで当時の日本にはなかった先進的な事例に学んでいたように思います。
ところが、いつの間にか学ぶことをやめてしまい、自分達の経験の中だけで答えを出そうとするようになってしまっているのではないでしょうか。

働き方改革においても、外部に学ぶ、という謙虚さが大事なように思います。

まとめ。

(1) 目的と施策の両方が「残業時間の削減」になってしまっている働き方改革のように、「因」と「果」がごちゃ混ぜになってしまっている施策はなかなかうまくいきません。その施策を行った結果、どのような課題を解決したいのかを予め明確にしておくことが重要です。
(2) 働き方改革の基本は、「楽して儲けるにはどうしたら良いか考える」ことだと思います。そのためには、経営の視点としては儲かる戦略を考えること、現場の視点としては目の前の仕事をどうしたらもっと簡単にできるようになるかを考えること、が大切だと思います。
(3) 施策の質を上げるためは、社外にでて、他社の優れた事例を知ることが一番の近道です。知識の無いところでいくら知恵を絞ったとしても、良いアイデアが生まれることはなかなかありません。中小企業診断士や経営コンサルタントのように、優れた事例をたくさん知っている専門家にアドバイスを受けるのも良いと思います。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)


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