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2023 松本山雅FC 選手短評【FW・監督編】

選手短評も今回でラスト!




見方の説明

選手名
出場試合数(うち先発出場数)出場時間 得点 アシスト
警告 退場

データは基本的にFootball LABから引用しています



FW

ルーカスヒアン

2試合出場(先発なし) 31分 0得点 0アシスト
警告0 退場0

ブラジルからやってきたドリブラーは秘密兵器のまま終わってしまった。左右両利き、ドリブルの切れ味が鋭く、ミドルシュートもうまい、裏への抜け出しから得点量産したシーズンもある…。23歳という若さも相まってロマンの塊のような選手だった。
衝撃的だったのはプレシーズンマッチの神戸戦。しゃかりきに頑張るのだけどポジショニングという概念がないくらいに自由奔放に動き回り、周囲の選手がひたすらにカバーに追われるという凄い状態だった。得意のドリブルに関しても日本の芝に慣れていないのか足につかない場面が多く、プレー映像を見て危惧していたとおりにトラップが大きいところもJリーグの守備だと少し気がかりだった。
次に彼を見たのは5月になったのだけど、多少自由奔放さは自重されていたが、やはり守備時の判断に怪しさが残るところは否めず。今季中にどこまで仕上げてこれるか勝負で終盤戦に見れたらいいなと思っていたけれど、残念ながら出番は回ってこなかった。
霜田監督のもと目指しているスタイルはプレッシングが軸になってくるので、SHに求められる優先度が守備になってしまっているのが痛いところ。丹念契約ではないと思っているので、来季も辛抱強く育てながら、どこかで猛威を振るって戦術兵器になってくれることを期待したい。


鈴木国友

24試合出場(先発12試合) 1,034分 2得点 1アシスト
警告0 退場0

今季もまた主役の陰に隠れるシーズンとなってしまった…。
そもそも不穏な空気を感じたのはプレシーズンマッチでトップ下として起用されていた時。セカンドストライカーのようなトップ下ならまだしも、ライン間でボールを引き出してナンボのリンクマンのような役割はミスマッチ感が強かったのを覚えている。
シーズンが始まっても主戦場はトップ下で、時には左SHという状況は変わらず。小松蓮がエースとして君臨していたということが最も大きかっただろうが、どこの位置しても自由に動き回る菊井悠介のフォロー役となってしまうのはなぜなのだろうか。足元の技術もあって器用な選手なので、こなせてしまうのだが果たしてそれで良いのかは疑問。本人が納得しているかも分からない。奇しくも彼が輝いたホーム八戸戦はCFで起用された試合だった。
守備ラインを下げて戦い始めてからロングカウンターの急先鋒として起用が増えることを予想していたが、それも叶わず。最後まで彼の起用については最適解が見つからなかった印象だ。
移籍してきて3年が終わったが満足いく結果が得られているとは言い難い。今オフが契約の切れ目じゃないかなと思うし、28歳という年齢を考えても環境を変える決断をするかもしれない。


野澤零温

15試合出場(先発7試合) 625分 2得点 0アシスト
警告0 退場0

FC東京からやってきたスピード系ストライカー。移籍してきた時にプレー映像を漁った感じだと、典型的なラインブレイカーという印象で、1トップに小松蓮が君臨している松本でどう使うのだろうと思っていた。実際に起用されたのは右SH。FC東京でもWGで起用されて上手くいかずに松本へやってきた気がするという経緯は記憶違いということで一旦忘れることにした。
彼が加入してからは野澤零温システムとでも言うべく、SHの役割は変わった。これまでのSHはハーフレーンを主戦場としていたのだが、野澤零温がSHを務めるときだけは大外レーンに立つことをデフォルトとして、代わりに右SHが内側に入ってサポートする形に変化している。難しいのは右SHが大外に張るのは野澤零温の時だけで、村越凱光が入ると従来のSHっぽく振る舞う。チームとして裏への抜け出しによる深さを取ることができず戦い方の幅が狭かったので、野澤零温のスピードを最大限生かせるような形にして改善を試みていたのだと思う。
ただ、実情としてはそれほど機能していたとは言い難い。裏抜けを得意としている選手なのだが、チームの設計上足元でボールを貰うことが多くなっていたからだ。プレーを見ていてはっきりしたのは、スピードはあるがドリブルが得意ではないということ。足元でパスを受けても自分から縦に仕掛けることはあまりなく、味方とのワンツーで抜け出したいのだろうなと感じられた。ますます右の大外で張らせるのは正しいのか?という疑問が強まっていく中、終盤には先発の座も失ってしまい、しまいには右WBとして起用されたりしていた。絶対にFC東京がイメージしている使われ方じゃないよなこれと心配になるくらいだったので、来季はいないのではないかと思う。とはいえFC東京に戻っても立場が難しそうなので、FWに裏抜けを求めるチームに身をおいたほうが良い経験を積めそうな気もする。


小松蓮

36試合出場(先発35試合) 3,136分 19得点 4アシスト
警告4 退場0

名実ともに絶対的なエース。ここまで絶対的な存在って船山以来なんじゃないかと勝手に思ったりしていた。
ポテンシャルは凄いけどひと皮むけない感じだった昨季までとは打って変わって、彼にボールを集めておけば点取ってくれるやろという選手に成長した。空中戦にも強いのだけど、それに依存せずに得点パターンが豊富なのも彼の強み。ストライカーらしくボックス内での泥臭いゴールも取れるし、アバウトなクロスボールを叩き込むこともあり、はたまた中距離からのミドルシュートも狙える。シュートレンジが広い上に、枠内シュート率が50%弱あるんですってよ奥さん。シュート打たることすら許されない、ほんとうの意味で「怖さ」のあるFWへ覚醒したシーズンだった。
それだけ得点を量産していれば相手からのマークが厳しくなるのは当然で、しかもシーズン進むに連れて全体のラインが下がっていったので、奪ったらまず小松蓮が身体を張ってキープしないとカウンターに移行できない状態となったことも大変そうだった。めちゃくちゃに削られてる試合は数しれず。それでもシーズンを走り切れたのは、日々の食事に気を遣ったり、ケアを欠かさなかったり、メンタルトレーナーと契約して常に高みを目指し続けたり、研鑽と努力の賜物だろう。
あまりにも絶対的な存在となってしまったので、どれだけ疲れ果てていても交代してもらえず、シーズン終盤になると目に見えてキレが失われていった。細かな負傷や疲れが蓄積していたのは間違いなく、最終戦では空中戦で競ることすら敬遠しがちになっていてギリギリのコンディションだったのかもしれない。ちょっと背負わせすぎてしまった。
J3得点王という箔が付いたことで、オファーが殺到しているのではないかと予想。自分を深く理解して信頼してくれる霜田監督のもとであれば、来季もポジションは確約されているだろうしアカデミー出身ということでクラブへの思い入れも強いはず。それと上位カテゴリーでプレーしたい野心との間で揺れ動くオフになるのだろう。仮に移籍していったとしても裏切ったなんて微塵も思わないし、むしろこれだけ点を決めてくれたのに昇格争いからこぼれ落ちてしまって申し訳なさすらある。残ってくれたら超喜ぶけど、覚悟はできているよ。ひとまずシーズンお疲れ様でした!


榎本樹

22試合出場(先発9試合) 802分 1得点 1アシスト
警告1 退場0

キャリアハイのプレータイムを得たが満足がいくシーズンとはならなかった。開幕スタメンに抜擢され、新境地ともいえる左SHでプレー。ハーフレーンに立って位置で相手と勝負するような役割もスムーズにこなせており、足元の技術も備えていることから選手としての幅を見せるける格好になった。元々運動量も多く、決してサボらない献身性もある選手なので、サイドにおいても守備で穴を開けることもなくそつなくこなせていたと思う。
ただ定位置を確保するまでには至らなかったのは、チームとしてSHに榎本樹をおいていることのメリットを享受できなかったから。空中戦の強さとペナルティエリア内でシュートスポットを嗅ぎ分けるストライカーらしい嗅覚が最大の強みだが、守備のタスクも多く、ゴール前から離れてしまうSHというポジションでは活かしきれず。1トップに点を取らせる仕組みなので一定仕方ない部分はありつつ、右サイドの崩しがそれほど機能せず左SHがフィニッシャーになる場面が少なかったのも榎本樹にとってはマイナスに働いてしまった。
試合終盤に出てきたとしても、明確にパワープレーをするようなチームスタイルでもなかったので、なぜか榎本樹がクロスを上げている構図になったり強みが活かせているとは言い難い状況だった。終盤には献身性を買われてIHでプレーすることもあったりと、やや便利屋っぽい使われ方も。
最終節のアディショナルタイムに訪れた決定機を沈められていれば、来季の序列に変化があったかもしれないが…。ぜひとも、今季掲げていたような仕組みで1トップを任せたら何ゴール量産するのか見てみたい選手なのだけども。


新井直登

出場なし

ベンチ入りすることすらもできず。正直ほぼプレーを見れていないのでなんとも言えないのだけど、大学時代のプレーを見ている限りだとトップ下として計算されていそうな選手。ただ、主力組の壁は相当に高い。1年目ということでプロの水準に慣れる準備期間だったと割り切って、来季こそデビューを果たしてほしい。


田中想来

4試合出場(先発なし) 43分 0得点 0アシスト
警告0 退場0

想像以上に出番が少なかったシーズンだった。昨季は名波監督のもとでユース所属選手としては十分な出場機会を得ており、そのアドバンテージを持ってプロ1年目からレギュラー争いまでは厳しくてもベンチには入るかなと予想していたからだ。実際開幕戦のメンバーに選ばれており、富山戦までは一定の出場機会をもらえていた。
5月7日天皇杯予選決勝が彼の今シーズンを狂わせてしまったのかもしれない。前年は延長戦でゴールを決めて一躍ヒーローとなった田中想来だったが、この試合では5人目のキッカーとして臨んだPKを外してしまい、絶対に負けられないライバルに長野県代表の座を譲ることになってしまった。映像でしか見られていないが試合後は相当ショックを受けている様子だったし、それ以降メンバーにすら絡めていないという事実があるので、もしかすると少し引きずってしまったのかなと心配している。
クラブやサポーターからの期待がものすごく大きいことは本人が一番わかっていると思うけれど、あまり重圧を与えすぎても仕方ないので、若手らしくアグレッシブにギラギラしたプレーをまた見せてほしい。


渡邉千真

20試合出場(先発6試合) 627分 2得点 2アシスト
警告1 退場0

加入のタイミングからして、おそらく霜田監督が自ら選んでオファーを出した選手なのではないかと思っている。そう感じさせてくれたのはシーズン終盤になってコンディションが上がってきて、小松蓮が出場停止となったアウェイ福島戦でのパフォーマンスを見たときだった。動きすぎず、ただタイミング良く下りてきてSHやトップ下と絡みながら攻撃のリズムを作り、最後はペナルティエリア内で仕事をする。「ああ、このクオリティがシーズンと押して維持できていたら小松蓮とプレータイムを分け合っていたかもしれない」と思うくらいの出来だった。
どうしてもコンディションが整わなかったのかベンチ外になっている時期もあったし、途中出場で出てきても既にピッチ内はカオスな状態だったり、疲れ切った小松蓮や菊井悠介のカバーに追われて本来の攻撃的なタスクができなかったり舞台に恵まれなかったところもあったとは思う。なかなか思うような活躍ができないままシーズンを終えてしまい、年俸面や年齢面を考慮してのことだろう。契約満了がリリースされてしまった。
さすがに全盛期ほどのスピードやキレはなくなってきているが、たしかな技術とシュートテクニックは健在。まだまだ現役でやれると思うし、J3のどこかでフィニッシャーとして専念させたら二桁ゴール取るんじゃないかと震えていたりする。ありがとうございました!


霜田正浩

シーズン前のサポーターミーティングで松本山雅というクラブが紡いてできた歴史や文化をリスペクトした上で新しいサッカーを築き上げたいというような趣旨の話をしてくれていたのをよく覚えている。クラブを取り巻くステークホルダーから届く声に真摯に耳を傾けてくれていたのだと思うが、結果的には周囲の声に振り回されすぎてしまった感は否めない。開幕当初こそキャンプから積み上げてきた形を維持できていたが、信州ダービーで連敗したあたりで風当たりが強くなるとプレッシングラインを下げて慎重な戦い方にシフト。途中3連勝も記録したが、もともと目指していた形からは程遠く、ピッチ上で選手間の意思統一ができず相手に主導権を握られる試合が増えてしまった。夏の移籍市場で安永玲央を獲得してからは再び針を当初目指していたスタイルに寄せて、良いバランスを見つけたように思われたが、相手に対策されてしまうとそれを上回るだけのクオリティを出すことができず終盤は失速して終わってしまった。
元々思い描いていた成長曲線からすると成長角度が緩くなりすぎているはず。それはひとえにシーズン中に寄り道をしすぎて積み上げが不足していたから。プレッシングを軸にしていたはずのチームが段々とアグレッシブさを失っていったのは、スタイルの構築と昇格という内容と結果の二兎を追いかけていたから。様々な理由があって今季は昇格よりも積み上げを優先します!とは言いにくかったのだろうけど、最終戦セレモニーだったり選手のコメントから漏れ出てくる感じだと、おそらく内部では1年ではスタイルの完成は難しいという共通理解が合ったのだろうなということ。もう少し外部のステークホルダーと目線があっていれば、こんなにも批判の嵐にさらされずに済んだかもしれない。期待値調整をミスってしまった感。
霜田監督のスタイルとマッチしたスカッドではなかったという言い訳要素はある。終盤のカオスな起用だったりを見ても霜田監督の基準を満たせる選手がそもそも少なすぎるし、選手の使われ方を見ていて「全然納得いってないんだな」というのはひしひしと伝わってきた。この部分はフロントの腕の見せどころ。ただ、1年目の積み上げが思っていたよりも薄く終わってしまったのではないかと想像しているので、来季どうまで完成度を上げられるかは未知数。出色のパフォーマンスを見せたセンターラインが解体される可能性もある。不確定要素が多すぎる中ではあるが、クラブはスタイルの継続を決断したわけなので、来季こそは見るものを魅了するサッカーを完成させて信州を盛り上げてほしい。


選手総括はこちらで終わり!!!

長くなってしまったけどお付き合いいただきありがとうございました!!

また来シーズンもよろしくお願いします。

俺達は常に挑戦者
という心持ちを忘れずに



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