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映画ほど素敵な世界はない

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映画がなかったら、生活はどんなに味気ないものになるだろう。家にいたまま夢の世界を見せてくれる情報技術に乾杯!
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2018年8月の記事一覧

「オデッサの階段」はいまでもあるか?

 「戦艦ポチョムキン」(1925年)は、ソ連の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインによる、映画史上、空前絶後の作品 。   空前であるのは当然だが、ある意味で絶後でもあると、私は考えている。  私は、大学生のとき(1962年か63年頃)に、東大駒場祭で見た。「ポチョムキン上映促進会」というのがあって、その団体の主催で上映したのだ(日本初公開は1967年とされているが、これは、一般公開の時点だ)。非常に強い衝撃を受けた。  それ以降、何度も見た。いまはなき日劇アート・シアター

あなたは、8月の鯨を持っているか?

 「8月の鯨」(The Whales of August)は、1987年のアメリカ映画。  アメリカ東海岸メイン州の海岸にある別荘に、年老いた姉妹が住んでいる。  2人とも夫をなくしている。2人は、フィラデルフィアの裕福な家(多分、銀行家)の生まれ。  彼女たちが話しているのは、上流階級の英語だ。大工のジョシュアが話している英語との対比で、はっきりわかる。  姉のリビー・ストロングは、白内障で目が見えなくなった。妹のサラ・ウェッバーは、看護婦の資格をもっている。  別荘を

「若草物語」対「若草物語」

 ルイーザ・メイ・オルコットの『若草物語』(Little Women)は、何度も映画化されている。ストーリーは決まっているので、あとは俳優の演技だけの勝負になる。  ここでは、最もよく知られている2つの作品、1933年(下の写真)と1949年(上の写真)を比較することにしよう。  最初に、3女のベス(エリザベス)(49年では4女)。音楽の才能がある恥ずかしがり屋。  33年ではジーン・パーカー(上の写真で右から2人目)、49年ではマーガレット・オブライエン(タイトルバックの

「スターリングラードの戦い」の噴水は、いまどこにある?

 スターリングラード(現在はヴォルゴグラード)は、ボルガ川に面した工業都市。  1942年6月、ドイツ南方軍集団は、猛烈な砲爆撃とともに、西側から市街地に突入した。  これに対してソ連第62軍は頑強に抵抗。市街地南部で、史上かつてない大激戦が展開された。  この戦闘を描いた映画はいくつもある。比較的新しいものでは、「スターリングラード」(原題: Enemy at the Gates:2001年)。  ユンカース急降下爆撃機の攻撃を潜り抜けた渡河船団で上陸したソ連兵士は、

映画は終わりが肝心(その4) ポランスキイの「マクベス」

 シェイクスピアの悲劇で最高傑作は、『マクベス』だと私は思っている(ついでに言うと、喜劇では『12夜』)。  スコットランド王ダンカンの忠臣マクベスは、ダンカン王を殺害して、スコットランド王になった。しかし、殺害をそそのかした彼の妻は、精神錯乱に陥る。  そして、ダンカンの長子マルコムが、イングランドの助力をえて、マクベスを破る。    映画化されたマクベスは、沢山ある。それらのうちで最高傑作は、何といっても、天才ロマン・ポランスキイ監督の「マクベス」(1971年)だ。オー

指輪物語(その4)なぜフロドは故郷に受け入れられないのか?

 指輪大戦争が行われたペレンノールというのは、ゴンドールの東の端、ミナスティリスの前に広がる平原だ。  ゴンドールというのは、ローハンの南に広がる人間の王国。ミドルアースの中心にある国だ。アラゴルンは、この王になる定めの人物なのである。  王宮があるのがミナス・ティリスという巨大な城。  これは、明らかにブリューゲルの「バベルの塔」を念頭に置いたものだ。映画のセットはなかなかよくできている。  ナズグルの首領との対決で瀕死の重傷を負ったエオウィンは、ミナスティリスにある

指輪物語(3) ぺレンノール野の会戦

 映画The Lord of the  Ringsの第3部「王の帰還」は、チャンバラ劇になっている。本当は第3部はチャンバラ劇ではないのだが、動きを見せなければならない映画としては、止むをえないことだろう。  チャンバラ劇以外の第3部については後で述べることにして、まずは難しいことは言わずに、映像を楽しむことにしよう。  チャンバラ劇とは、指輪大戦争。そのクライマックスは、ペレンノール野の会戦だ。  ここで、エオウインとナズグルの首領が対決する。  私は、原作のこの場面