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映画ほど素敵な世界はない

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映画がなかったら、生活はどんなに味気ないものになるだろう。家にいたまま夢の世界を見せてくれる情報技術に乾杯!
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#タルコフスキイ

映画は終わりが肝心(1)

映画は終わりが肝心である。なぜか?  観客はすでに料金を払って映画館の中に入っている。だから、最初が面白くないといって、出て行ってしまうことはない。  それに対して、最後の場面はよく覚えている。その場面がいつまでも印象として残る。だから、映画の評価の大部分は(知らない間に)最後の場面の印象によって作られている。  最後のシーンの最高傑作は、何といってもタルコフスキイの「ストーカー」だと思う。それ以外にも、強烈な印象を与えるものがいくつかある。  以下ではそれらについて述

犠牲のない明日はあるか? タルコフスキイの「サクリファイス」

ソ連の映画監督アンドレイ・タルコフスキイの最後の作品「サクリファイス」には、世界最終戦争のさまが描かれている。 アレクサンデルは、引退したスウエーデンの舞台俳優で大学教授。北の海の静かな孤島に、元女優の妻とともに住んでいる。 彼の誕生日、祝いに集まった友人たちが部屋で談笑していると、グラスが振動をはじめ、かすかな音を立て始める(タルコフスキイの映画「惑星ソラリス」や「ストーカー」にも、似た場面がある)。 突然、耳を弄する轟音を響かせて戦闘機が上空を通過し、その振動で棚のガ

アンドレイ・タルコフスキイ「ストーカー」の謎を解明する

ソ連の映画監督アンドレイ・タルコフスキイの名作「ストーカー」(1979年/モスフィルム)。この映画の核心は、「ゾーン」内にあるという「部屋」だが、タルコフスキーは謎かけをしていて、部屋の秘密は容易に分からない。 以下は、私の推理である。 「ゾーン」と呼ばれる地区が、地上に忽然と出現した。宇宙人が来訪したのか、隕石が落下したのか、詳しいことは何も分からないのだが、村が消滅した。ただちに軍隊が派遣されたが、兵士は一人として帰還しなかった。その後、鉄条網が張りめぐらされてゾーンは