アベノミクスの6年間に世界は大きく変わった

  2012年の暮れに第2次安倍晋三内閣が発足。2013年4月には、異次元金融緩和政策が開始された。これによって日本経済が復活するとの期待があった。企業利益は増加し、株価は上昇した。
 日本のGDPは、名目では2012年の495兆円から2017年の547兆円へと10.4%増加した。実質では、495兆円から532兆円へと7.4%の増加だった。
 ただし、ドルベースで見ると、円安が進行したため、6.2兆ドルから4.9兆ドルへと21.5%も減少した。

 この間に、世界では何が起こったか?中国のドルベースGDPは、8.6兆ドルから12.0兆ドルへと40.2%も増加した。日本との対比では、1.38倍から2.47倍になった。
 アリババやハーウエイなどの新しい企業が成長した。アリババの時価総額は4383億ドルで、トヨタ自動車の1755億ドルの2.5倍になった(2019年7月)。

 私は、2012年に『日本式モノづくりの敗戦』という本を書いた(東洋経済新報社)。
 この頃、世の中で議論されていたのは、中国が「ルイスの転換点」を超えたということだ。賃金が上昇したので、これまでの低賃金生産の優位性が失われ、中国は大きな転換点を迎えたという考えだ。
 私は、上記の書籍の中で、注目すべき新興企業として、アリババやファーウエイを取り上げた。これらの企業は、まだ世の中には広く知られていなかった。

 いま、米中貿易戦争でアメリカは、必死になってファーウエイを取り潰そうとしている。いまのうちに潰さなければ、未来世界の覇権を握られてしまうという焦燥感からだ。
 この7年間の変化の大きさに驚く。

 成長したのは中国だけではない。アメリカの名目GDPは、16.2兆ドルから20.4兆ドルへと20.0%増加した。日本との比率は、2.60倍から3.98倍になった。
 GAFAと呼ばれる企業群が時価総額リストのトップを占めるようになった。

  アベノミクスの6年間、日本が何の意味もない異次元緩和をやっているうちに、世界は大きく変わってしまったのだ。


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