世界経済最前線

米中貿易戦争は、今後も収まらない

 8月1日にトランプ大統領が対中追加関税第4弾を発表して、世界的に株価が下落した。
 その後、株式市場は一時的に安定を取り戻したかに見えたのだが、8月14日に再びダウ株価が800ドル安と大暴落した これは、今年最大の下げ幅だ。日経平均株価も、15日には一時400円超の下落を記録した。
 これは、13日に第4弾の実施を9月1日から12月まで延期するとした直後のことだ。マーケットは、「これだけでは米中貿易戦争の状況が改善したとはいえない」と判断していることになる。

 景気後退の前触れだとされる「逆イールド現象」(長短金利の逆転)もアメリカで発生している。
 金融緩和が行われることがほぼ確実だが、それが効果がないということも、ほぼ確実だ。これまでの経験に照らして見れば、そう判断せざるをえない。

 今回の事態の原因が、アメリカによる追加関税第4弾であることは明らかだ。
 世界中のほとんどの投資家や企業経営者が、この中止と貿易戦争の終了を望んでいることだろう。
 もしトランプ大統領がポピュリスト政治家であるならば、第4弾の発動を延期するだけでなく、中止するだろう。それによって株価が急上昇することは目に見えている。
 しかしそれはトランプ大統領が定見のない政治家であることを暴露することになるわけで、大統領選挙に対してどのような影響持つかは明らかではない。必ずプラスになるとは限らない。トランプ大統領としても、それは承知しているだろう。

 それに、米中貿易戦争は、単にトランプ大統領の気まぐれや経済に対する無知から生じているのではなくて、未来世界における派遣を争う真剣勝負だと考えることができる。もしそうだとすれば、アメリカは短期的な経済携不調は覚悟の上で、今後も対中強行姿勢をとり続けることになるだろう。

 これによって、日本はかなり大変な状況になる。日銀が追加緩和をしたところでこの状況に対応できないことは明らかだ。国債の購入を増額しようとしても、もはやマーケットに国債はない。残存期間5~7年の国債については、日銀保有シェアは8~9割にも上る。
 マイナス金利をさらに進めたところで、金融機関の収支が悪化するだけのことだ。
 それに、有利な投資対象がない以上、企業のカネ余り現象は変わらない。だから、いくら金融緩和をしても、貸し出しが増えるわけではない。
 唯一期待できるのは心理的な効果だ。追加緩和をしたという姿勢を見せることで、為替レートが円高傾向が収まることを期待するのである。しかし、実際にそうなるかどうか、分からない。多分ならないだろう。

 「経済の時代」がやってきた。その意味は、経済的な論理によって、様々なことをよく理解できるということである。




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