図書館

ホテルの図書室

  ホテルの片隅に図書室があるところがあります。
 私が最も好きな図書室は、上高地の帝国ホテル。場所柄、山の本が多くなっています。部屋の真ん中に大きな机があり、雰囲気もよいので、いつ行っても誰かがいます。

 箱根では、箱根ハイランドホテル。これは廊下の片隅、エレベータのそばに、あまり人目にもつかずにひっそりと小さな部屋があります(箱根、山のホテルにも、展望室のそばに図書室があったように記憶しているのですが、最近行かないので間違いかもしれません)。

 川奈ホテルの2階にも図書室があります。1階のロビーから見えるところで、長い間、そこに図書室があることを知らなかったのですが、先日、間違えて2階でエレベーターを降りて、発見しました。蔵書が沢山あるわけではないのですが、素晴らしい調度です。窓際に机が並べてあり、ここで外の景色を見ながら仕事ができたら、何と素晴らしいことかと思います。

 沖縄のザ・ブセナテラスの図書室は、かなり大きなスペースになっています。ここにPCを持ち込んで仕事をすることも可能です。

 図書館があるのはリゾート地のホテルである場合が多いのですが、大都市のホテルで図書室があるところもあります。札幌グランドホテルにそうした場所があります。ここだけは、結婚式や会議で多くの人が忙しそうに廊下を行き来している場所とは、まったく異質な空間です。

 ホテルの図書室は、もともとあまり広くはありませんし、それほど読みたい本があるわけでもないのですが、こうした空間があることが、ホテルの雰囲気をまったく変えています。 そこで本を読まなくても、そういう空間があると思うだけで、落ち着いた気持ちになれます。
 さほど費用がかかっている施設ではないと思いますが、そのホテルがとても豪華なところに思えてきます。

 このプロジェクトは「空想図書館」と称していますが、私が作りたいと思っているのも、規模から言えば、ホテルの図書室程度のものです。そして、それと同じような機能を果たしてくれたらと思っています。つまり、気が向いたときにふらっと訪れて、本に囲まれ、安心した気持ちになれるという空間です。

 ここに置いてある本は、読んだところで、実用的な役には立ちません
金が儲かるわけではありませんし、会社で上司の覚えがよくなって昇進できるわけでもありません。
 ただ、気が滅入る時、 不安に駆られる時、あるいは傷ついた時に、ここに逃げ込んで好きな本と対話すれば、安心できます。
 これから作りたい空想図書館も、そんな場所にできたらと思います。
 現実世界での役には立たないかもしれませんが、本の世界に入ることが至上の喜びとなるような場所です。

  小説を読んでいて、感情移入することがあります。まったく、その世界に入ってしまうのです。
 スティーブン・キングの小説が描くのは、ありえない世界なのですが、あまりに詳細に描かれているので、読んでいるうちに、それが現実の世界のようになってしまうのです。これがダン・ブラウンとの違いです。
 これは、現実逃避でしょうか?ある種の現実逃避かもしれません。しかし、簡単にできるし、習慣性もありません。出ようと思えばすぐ出られるます。逆に、時間があれば、いくらでも深いところまで行くことができます。

 その空間が、私がこの地上からいなくなっても残ることを祈っています。そう想像するだけで楽しい気分になります。 

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目次(その1)総論、歴史読み物

目次(その2)小説・随筆・詩集

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