リブラに通貨発行益はあるか?

1.リブラに通貨発行益はあるか?
 管理通貨制度の下では、中央銀行の紙幣は、返済が不要な負債である。ところが、資産の側では国債という利回りの高い(通常の経済であれば)資産に運用できる。
 これは、国家権力になって与えられた特権であり、「シニョリッジ 」(通貨発行益)と言われる。

 銀行の負債である預金についても、その1部は、定期預金という形で即座には払い戻す必要がない特権が認められている。このため、収益率の高い資産(貸し付けや国債などの長期的な資産)を持つことが可能だ。
 これも、法律によって銀行に与えられた特権だ。

 ところでリブラは、現実通貨への払い戻し要求があった場合、即座に応じなければならない。このため、利回りの高い資産を持つことができない。  つまり、リブラに通貨発行益は発生しない。

2.マネーロンダリング
 リブラに対して、マネーロンダリングなどに利用されるのが問題だという指摘がある。
(1)仮想通貨は、匿名性に関して両極端の2つのタイプがある。ビットコインは匿名型で、本人確認なしに秘密鍵を取得することができる。
 メガバンクが発行を計画している仮想通貨は管理型で、秘密鍵の付与にあたり厳密な本人確認をする。
 
 リブラがどちらになるか、いまのところはっきりしないが、メガバンク仮想通貨型にすれば、マネーロンダリングは防げる。ただし、匿名性は失われる。
 ビットコイン型にすれば、匿名性を獲得できるが、マネーロンダリングは防げない。
 
(2)匿名性と不正行為防止は、相反する目的であり、両方を実現することは原理的にできない。
 なお、中央銀行券は匿名通貨だから、マネーロンダリングは防げない。
 中央銀行がマネーロンダリングを理由にリブラを批判するのは、論理的におかしい。


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