図書館ー2

宇宙を相手にする仕事と、人間を相手にする仕事

 人間の仕事には、宇宙を相手にするものと、人間を相手にするものがあります。
 電波望遠鏡でブラックホールを撮影したり、小惑星から岩石を採取したりするのは、前者の仕事です。私は子供の頃からこうした仕事に憧れていました。
 しかし、こうした仕事に就くには、経済的な条件が必要です。収入を得られなくても問題がないような強固な経済的バックグランドが必要です。
 私の場合、そのような条件は望むべくもなかったので、こうした職業に就くことは、最初から論外でした。

 人間を相手にする仕事にも、いくつかの種類があります。
 まず特定の人々よって評価される仕事と、姿が見えない不特定多数の人々によって評価される仕事があります。
 役所をはじめとする組織のなかでの仕事は、者の典型的なものです。小規模自営の小売業などは、後者の典型です。
 この中間に様々なものがあります。

 もの書きの仕事は、そうした中間的職業の一つです。
 編集者という目に見える特定の人々によっても評価されるし、読者という目に見えない多数の人によっても評価されます。
 インターネットの利用拡大に伴って、目に見えない多くの人々によって評価される度合いが強くなりました。
 これには、良い面も悪い面もあります。 ただし、宇宙を相手にするような仕事からはどんどん離れていくことは否定できないでしょう。
 こうなると、宇宙を相手にするような仕事をしたいという望みが強まって来るのを押さえられません。

 これまで、人類の歴史で、沢山の書物が書かれてきました。
 その時々の人間を対象にして書かれたものも沢山あったと思われますが、その大部分は失われました。残ったのは、人間を相手にしたものではあるのですが、宇宙を意識して書かれたものです。ゲーテ、トルストイ、ドストエフスキイなどの作品は、そうしたものです(この人たちの場合には、「宇宙を相手にする」というよりは、「神を相手にする」というほうが適当かもしれません)。

 『罪と罰』では、最初の何十ページにもわたって、実に退屈な文章が続きます。読者を捉えようなどという意図など、少しも見られません。こうした文章を書くことができた時代の作家たちを、羨ましく思います。






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