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我輩は猫である 第5回(タレオの恋編-後半-)

我輩は猫である。名前は姓は 眼(ガン)、名はタレオと云う。
ご主人様の隣の家の前髪が白髪だらけの男が、野良猫だった目つきの悪い我輩に対して勝手につけた名前だ。
猫の我輩にとっては名前などどうでも宜しい。
そんなことより関心があるのは
我輩はご主人様に餌と駐車場の奥に掘立小屋を与えられ、飼い猫になったのだが、なぜだかご主人様の家には入れて貰えない。
どうやらご主人様は家の中で我輩以外の猫を二匹飼っているらしく
その内の一匹が目が金色に輝くメス猫でチラッとしか見たことはないのだが
とても素敵な感じで、一度でいいから彼女と何か関われないかと思っているのだ。
これが恋というものなのかどうかは猫の我輩にはわからない。
ただ胸が苦しいのだ・・・。
それで、ご主人様に勇気を出して思い切って
彼女に会わせてくれないかと訊いてみることにした。
ニャー。
”なに?また餌を寄こせって?いい加減になさい。玄関の前で物欲しそうにずっと座ってるから、一度だけ餌をあげたつもりなのに、味をしめて毎日来るからもう仕方なく家を作って、餌まであげてるけど、いい加減になさいよ。 ”
ニャー。
”餌、餌、餌、餌、言わないの!ちゃんとあげるから。”
言葉が通じない・・・。
我輩は彼女に会いたいと言っているのに。
”ほら、ほら。汚さないように。”
ニャー。ニャー。ニャー。
しつこく鳴いてみた。
”なに?家の中に入りたいのかい?お前。”
”駄目だよ、家の中にはお前以外に猫が二匹いるんだから。いい加減にしておくれ。
下手にお前を家の中に入れて交尾なんかされたらたまったもんじゃない。
訳の分かんない合い猫が山ほど生まれてきて、面倒なんかみきれなくなるんだから、まったく。”
アッサリと否定されてしまった。
何だこれは!?人間社会でいう彼女と我輩には格差があるということなのか?格差社会!?
猫は猫だ!猫同士で仲良くして何が悪い!何で人間に支配されないといけないのだ!
ニャー。ニャー。ニャー。ニャー。ニャー。
”うるさい猫ね、餌、餌って言わないの。”
まったく相手にして貰えなかった。
こうして我輩の恋はあっさり終わった・・・。
猫である限り、、、飼い猫である限り、、、人間様には逆らえない。
彼女に一度でいいから会いたかった、、、。
そして、 ご主人様の隣の家の前髪が白髪だらけの男が作ったスローなバラード曲で彼女とチークダンスを踊ってみたかった、、、。
それが我輩の夢だ。 (おわり)

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