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どうでもいい話(2023年 2月分)


ホラーハウス⑤

先日の誤記に伴い、思い出された不可思議な現象。

まずは、誤記の説明をば。

来客二名・私・元旦那、合わせて4人。
買ったコンビニ弁当も4つのはず。

しっかり思い出し、頭の中で人数 数え、入力したのは…

『 5人 』

──1人多いやん。

こういうのね、一度や二度じゃないんだ。
時はす進み、数年前。

コ○ナ前は毎月、親友らと我が家に集合するのが、楽しみだった。

決まったメンツは、私・親友3人・連れのチビ2人。

来客に備え、午前中に行うのが掃除片付け。

そろそろ来るかな。

丸い座卓の周りに、旅館風な木製の座椅子を設置。

我が家の装備は、座椅子4台・座布団5枚。
数が合わない分は、ベッドを背に座布団を設置。

ほら、背もたれ有った方が、楽じゃん。

──2枚、足りない。

思ってた。

チビ達は じっとしないから、座布団 足りてないけど、買い足すまではしなかった。

「ごめんね、座布団 足りないんだけど」

次々と訪れる親友らに、必ず言うのが この台詞。

「いいよ、いいよ」

と 次々に埋まり行く、座布団…
全員 集まって着席して、気付く。

──あれ?

足りない座布団、1枚やん。

昼飯時・晩飯時に てんやもの を発注。
スマホで電話番号を表示し構える。

レシート裏に書き出した各々の注文を見て、顔を見ながら最終確認。

「──1つ、足りないよ」

「「 え…? 」」

レシート裏には、メインが6つ・サイドが いくつか。

一人一人顔を見て、指さし数える。

「1・2・3・4・5・6…7!」

「「え。」」

大人全員 きょとん としている。
再びしっかと 指差し数える、私。

「1・2・3・4・5・6──7!
ほら、ひとつ足りない。誰か書いてないよ、誰?」
ポンッ

決まって親友の一人が 私の肩に手を置き注意。

「○○ちゃん、6人だよ!合ってるよ!」

「え???」

指摘され、再度しっかり指さし確認。

「1・2・3・4・5・6…
うわッ、マジだ!ごめん6つで合ってる!」

「○○!しっかりしろー!」
「“誰”が居んの!? 怖いんだけど!!」

どよめく一同。
こんな事がね、ほぼ毎回。

我が家だけでは飽き足らず、外出先のファミレスなんかでも起きたりする。

私の周りに、誰か居んの…?
地味に怖いんだけど。

私に人数を数えさせては、ならん。

…まあ、

「足し算も まとも に出来ん、阿呆」

と 言われてしまえば、それまでなんだな(笑)

⑥に続く──

チーム小学生

あんまり詳しく喋らない約束だから伏せまくるけれど、紹介しておきたいのが、チビ二人。

それぞれ別の親友が連れて来る、ひとつ違いの女の子と男の子。

私の 小さな お友達 である。

私が三度目の魔女に一撃喰らいヘルニア発見される前までは、時たま6人揃って出掛けたりしたりも。
「あずま!あずま!」

なんて 呼び捨てにされるくらい、二人とも懐いてくれていてね。

ある時、お子様向けの何かのイベント会場で、二手に分かれて探検する事となった。

「大人チームと小学生チームに分かれよ!」

はしゃぐチビ達だけにするのは、ちょっと怖いな~なんて 思いつつ、傍観していた。

チビ達二人は、私の横に付き腕を引いた。

「あずまは、こっち!」

──ぅえッ!?

なんと 私一人 大人チームから剥がされ、小学生チームに入れられてしまったんだ。

爆笑する親友たち。

「○○ちゃん、精神年齢 小学生だから!」

全身から滲み出す私のチビ達との はしゃぎ様、完全同年代らしいよ。

夢のマイホーム⑥

半期毎に勤務地がどんどん離れ兼務兼務。通勤も一時間くらいになっていた、一番多忙な時代。

もうね、家事なんて全く手につかない。

食品買って帰ってきたら おにぎり食って、べとーん と泥のように寝っ転がるだけ。

そんな頃かな、旦那が自主的に洗濯やら掃除やらを始めたんだ。
どういう心境の変化か知らんけど、あの、汚部屋の住人だった人間が、だよ。

怖いよね。

旦那は出勤前に部屋全部に掃除機掛け、毎日 人間用のトイレの掃除をするんだ。

だから便器は いつも照明反射してピッカピカ。

人間用は もういいから、猫のトイレもやってくれよ…

て 思ってたのは、内緒だ。
朝飯昼飯、炊飯器の米を握っては持って言っているようで、晩飯は冷蔵庫に私が入れて置いた食材で適当に料理して。

お小遣い節約してまで、何に使ってたんだか。

いやさ、結局 米やら食材やら生活必需品を買うのは私なんだよ。

私の分の飯もラップしてくれてればいいのに、無いし。

う、ううん…?

なんだか納得いかなかった。

モヤモヤ募り、たまには料理でもしようと台所に立てば、火を使っている間にも癇癪が起きる。

自分でも何でなのか、さっぱり分からない。

私は台所にすら、立てなくなった。

まあ、旦那は勝手にやってくれてるから、いいか…

と 自分に言い聞かせるも、トイレに入る度

テロッと輝く便器が、嫌味たらしく感じてしまう。

旦那は純粋に掃除に目覚めただけなんだろうけど、まるで、家事を一切やらない私に対しての、あてつけ のように思ってしまう。

…おもしろくない。

本当に面倒臭いですね、私。

理想では、働きつつも主婦業を全うする。そんな自分でありたかった。
だからと言って、職場でも成果が上がる訳でも無くて。

異動の度に既存スタッフや営業と衝突して 慣れた頃には、また異動。

やらせなければ、人は育たない。

元来、ワンマン主義で何でも自分でやってしまいたい私は、言い聞かせながらもフラストレーションが溜まる一方。

諦めモードが 漂い始めた。

数年経過。
どっかで触ったけど、とうとう度々の失態に一身上の都合という名の、解雇。

途方に暮れもしたけれど、やっと底辺に戻れる、という期待値もあった。

人の上に立つような人間ではないんだよ、私はね。

常々 思っていたから、いい機会。

パソコンの勉強を始めて、一からやり直すつもりだ。
重複するが 職業訓練 後、コンスタントに新職に就けた。

新しい勤務地は、再び通勤一時間。

職業訓練校の間も、二時間前に出て鈍行で のんびり座って通っていたから、大差ない。

と、思ってたけど、甘かった。

フルタイム怒涛の就業に、体が付いて行かん。
直ぐに早く出発、なんて出来なくなって。
通勤ラッシュの すし詰め快速 使うようになって。

座れないけど グリーン車両の方が混雑がマシだもんで、毎朝グリーン券買うだなんて贅沢 してましたね、あの頃(遠い目)

嫌なんだもの、満員電車。
でも、出勤ギリギリまでゴロゴロしたいんだもの。

そんなこんなで、自分的に限界を感じ始めていた。

『離婚したい』

「おお~う…」

突然の事に三人とも驚かせてしまったけれど、じっくり私の言い分を聴いてくれた。

汚部屋時代から続く浪費癖から、直らない金銭感覚の欠如、子供堕ろしたり、ハグすらシンドイのに口でイかせんのめっちゃ大変やら何やら…

まあ、ほぼほぼ 私の 所為なんですがね。

「離婚していいよ!うん、離婚しよ!」

てね、みんな言ってくれたんだ。
ありがとう…

そして、愚痴が一度始まると収まらない、私。

「でね、アイツ資格取ったの『凄いな』て思ってたのに転職もしないし社員なるでもないし、取っただけで終わってんのね。
何がしたいんだろう、夢じゃなかったの??
その資格だって3級と2級と私が費用出してんのに。
ていうかさ、バイクの免許も中絶費用も、ここ買った時の初期費用から引越し業者の費用も、冷蔵庫も洗濯機もエアコンだって私が買ったんだよ!」

バーッとね、溜まりに溜まってた愚痴が…尽きない。

いや、どケチんぼ を怒らすと怖いですね(遠い目)

因みに、興味のある方は『ワンダーワールド①~⑥』『線維筋痛症と私⑧』及び『水子の魂』を ご参照下さい(ペコリ)

「離婚しな!離婚しなー!」

なんて賛同してくれる親友達の有難いこと(ホロリ)

「うん…“心の中の宝箱”の中身確認してから、考える…」

そして、この期に及んで決断しきらん、私。
まあね、お金の為に結婚したわけじゃないからね、綺麗事ぬかせば。

私はさ“独り”に、なりたくなかっただけなんだよ。

親友らが帰った後、独り居間で旦那に何て切り出そうかな…なんて、テレビも点けずに座卓に向かい思案した。

「ただいま~。○ちゃん達、帰ったの?」

「うん。ちょっと話良い?」

旦那を座らせ対面に正座して、私は尋ねた。

「いつか言ってた“心の中の宝箱”の中身って、何だったの?」

「何ソレ?」

──ん?んんん?…照れて すっとぼけてる感じじゃ無いな…

「アレだよ、アレ。子供の為に社員になるって言ってたくせに、直前になって『諦めてくれ』て言った時の、宝箱だよ」

「ぅえッ!? 何ソレ、俺そんな事 言った!!?」

はい、終了ー!

「離婚してください!」

渋った割には、スパーンッ!と口から出ましたよ。

だってそうだろ。
俺にだってさ、夢は有ったんだよ。

俺が どんだけ色々諦めてきたと思ってんだよ。

て、なるじゃん。
まあ、好きで世話焼いたの俺だけどさ。

「嫌だよ、離婚しないよ!」

ざけんな。

思ったけど、ここで喧嘩腰になるのは懸命では無い。

こういう時、私には仕事で培われた便利なスキルが備わっている。

──その名も、

“クレーム対応スキル”

何度も出てきてますね、あはは(笑)

「いいですか」

私は声音を鎮めて、ゆっくりと語り出した。
自分の不平不満にはフタをして、結婚生活を続ける上での旦那のデメリットを提示する。

「よく聴いて下さい。このままでは、あなたは私の介護で一生を潰します。生活費も私の医療費も、全部一人で稼がなくてはならなくなるかも、なんですよ…」

「離婚は嫌だ!」

だから、今 説明したろうがよ!!!

「苗字も旧姓に戻さないから。
いい?これは私の『いつか、また一緒になる』っていう、覚悟だよ」

なんてね、名義変更 面倒臭かったのが大きいんですがね。

誕生月にバツかけたくなかった私の意図は、説得の時間で押しに押し。

翌日。

仕事帰りに途中下車。
役所の出張所で離婚届の用紙を頂いた。
旦那と待ち合わせ、姉の家に向かった。

何故って、離婚届の裏には証人二名の署名が必要だからだ。

先だって話をしていた姉に片方を書いてもらい、旦那に「再度よろしく」の お願いをしてくれた。

私の知人に、もう一方も書いてもらい、その足で旦那と揃って地元の役所の夜間窓口に提出に行った。

「時間はどうします?」

え、届出って、提出時刻まで必要なの??

聞けば、夜間は届出を受け付けるだけ。
事務処理をするのは翌営業日という。

「それって、0時より前に出来ます!?」

うん。もうね、日付が誕生月に乗ってしまっていたんだよね…

「流石に日付変えるのは、ちょっと」

「デスヨネー」

えー…日付変えらんないなら、何時だって いいよぅ。

て 思い「じゃあ、ゾロ目にしといて下さい」て、お願いした。

すんごい適当。

こうして、旦那の気が変わらない内にと、バタバタに成立させた離婚。

被るから再度書かんけど、もし結婚や離婚するなら、ちゃんと取り決めは作った方が良いですよ。

何が起こるか、分かりませんから。

結婚しても離婚しても、不測の事態というのは起こるもんなんだ。
と、私は学びましたよ。

人生という名の石橋は、叩いて渡るべき。

とね。

…今ですか?
元旦那と復縁なんて有り得ませんね。

苗字、旧姓に戻したい。地方裁判所で戻せるらしいし。

⑦に続く──

夢のマイホーム⑦

離婚後 毎晩毎晩、豹変した元旦那の罵倒に、私の精神もボロボロ。

帰るところも無いもんで、依然としてルームシェアを続けていたんだが。

──もう、ヤダ。

思いながらも、我が家が共有名義である以上「出ていけ」とも言い出しにくい。

元旦那から預かっていた通帳は返却した。
翌月からは以前と同様、定額を渡してくれるという。

そのくらいは当たり前だろ。

だって、住宅ローンも水道光熱費も その他諸々、全部 私の口座からの引き落としなんだもの。

ひと月経過、あの、恐怖の夜が発生。
元旦那の下から、どうにかして逃げ出したかった。

あ~ああ、家 売っちゃいたいな…
思いはするも、共有名義であるが以上、勝手する訳にも行かず。

私から「家売る」て言い出したら、また何 言われるか されるか、わかんないし…

元旦那は すっかり 恐怖の対象。

共有名義が仇になるなら、無理せず一人でローン組めた、中古物件にしておけば良かったなぁ…

後ろ向きにもなりますよ。

帰宅したらば お刺身ワカメ食って寝っ転がって、スマホ開いて、職場近くのペット可物件 検索して。

こんな事なら“円満離婚”なんて甘いこと言わず、面倒でも裁判起こして慰謝料ぶんどってから離婚すべきだったな。

て思ってた。マジで。

…早く独りになりたい。

だなんて、考え始めていた、師走時。

いくつか候補に持っていた他の不動産物件でも、こちらで案内出来るという。

ほおお✨最近のシステムは凄いな!

不動産屋さんが開くパソコン画面が気になっちゃって仕方ない。

内見予約しようと電話する度「え!? もう埋まっちゃいました!?」と、わずかな僅差で取られていく気になっていた物件達…

「時期的に新年度に向けて競走が激しいんです(汗)」

結局、気になっていた物件は全部取られてしまった。

…ヤベェな。

提示した条件から不動産屋さんに探してもらう。
かなり長いこと探してくれていた。

「ご予算は少しオーバーしちゃうんですけど…」

職場まで電車で一本。
家賃が、ちょっと…
築激浅でオートロック角部屋、ペット可。
部屋は狭いけど風呂トイレ別。

家賃はアレだが、条件はかなり良い。
間取り図を出してもらう。

あら、部屋の周囲に点線が…

これ知ってる、天井が低くなってるんだ。

狭くて天井低いと圧迫感有りそうだけど…

ま、寝るだけの家で充分だし。ここでいっか。
まだ住人が退去前だったので内見もせず、申し込みだけ済ませ帰宅した。

築浅だから、そう あかん状態でもあるまい。

予算的には2万くらいオーバーしちゃったけど、グリーン券代が無くなれば問題無い。

入居まで約ひと月、その間に売れちゃってくんないかな。

駅近だし築年数も若いし、売れるだろ。

私の見積もりでは、その程度だったんだが…誤算だ。

提携中古屋さんのチラシを座卓に置いておいた。

元旦那を腫れ物のように扱いながら、情報共有。

「家売る申し込みしてきた」

どこの不動産屋かと尋ねれば…

「駅前のとこ」

oh…

どこにでも在る、全国的のチェーン不動産屋さん。

ええ~(汗)
せっかくブランドの中古屋さんがあるのに、何故に大衆的な所に行ったんだ。

マーケティングには ちとうるさい、元販売員の血が騒ぐ。

「凄く良い人が担当でね『絶対ひと月で売ります!』って言ってくれたんだよ」

ううん…まあ、立地も良いし、今 引越しシーズンのようだし、どこでも大差無いかな。
私に先を見通す力が有れば…

いや、分かっていたのに、その時 説き伏せるだけの体力が無かったのが完全に悪い。

不動産の売買には、専任と一般の契約上の違いが有る。

とりあえず元旦那に従って、専任契約を結んだ。

あ~、マジで大丈夫かな…

契約形態を調べ熟読し、不安は募る一方。

お財布的に私の猶予は3ヶ月。

入居費に敷礼合わせて4ヶ月分、加えて家賃が1ヶ月分。

もちろん、貯金なんか無いから生活費はリボに回して、キャッシング枠も使っている。

2ヶ月住居費が被るのが限度。

本当に私、先が視えてませんね。

翌給料日。

元旦那から生活費の入った封筒を頂戴した。

中を覗けば…

チラシの裏裏に一つ一つ概算の金額を書いていって、電卓で合計金額出して。

「6万円で本当に半分ですか?足りてますか?」

「足りてない…」

「よろしい」

追加資金を頂戴した。
私も私で次月から重複家賃が発生するので、必死である。

「でもさ、何で貯金無いの?」

テメェに言われたかねぇよ。
こちとら年間で言えば、市県民税二人分・自動車税・団信保健二人分、車検の年には車検料。
月間で言えば、私の生命保険・私の薬代 数万円、ガソリン代等の諸々の諸経費も、きちんと支払ってきてるんだ。

確かにね、浮いた部分でグリーン車両使ったり、新しい職場の呑み会が多くて、贅沢してたけど…

貯金出来ずに使っちゃってたのは、私だな。

だけどさぁ、今までの元旦那の仕打ちを考えれば、可愛いもんじゃない。
て、自分を棚上げ。

「我が家のエンゲル係数、一般家庭の倍以上なんだよ。お分かり?」

渋々納得させた。

だってアイツ食うんだもん。
私なんか仕出し弁当とワカメで生きてるのに。
電気ガス水道には同名義で二栓 持てるか確認、開栓予約した。

引越し業者を手配する余力なんかないまま、迎えた新居の入居日。

会社帰りに管理会社に立ち寄り 鍵を受け取り、初めて入った新居の綺麗なこと。

ウェルカム芳香剤が✨

鞄に着替えだけ詰め込んで、消耗品は現地調達する。

⑧に続く──

夢のマイホーム⑧

どうにも多方面が絡んでいると語りにくいので、先に家の売買についてのみ述べる。

当時の乙女ティカルな私の手帳を開けば、可愛らしくデコられた月間の日付欄には、家が売れるまで休みは一切無い。

無理するぐらい色とりどりなだけに、闇が深く感じてしまうのは気のせいだろうか…
写真撮りは後日、家のテキスト売却情報のみ、先立ってネットに公開された。

価格は元旦那と相談の上、住宅ローンの残額より、少し上乗せ。
折半しても私の支払いも可能なラインに設定した。

私の休みは土日、元旦那はシフト制。
お客様の生活リズムに合わせ、内見は各々 協力体制をとることにした。
不動産屋と やりとり するのは元旦那の役目。
いちいち元旦那を間に挟まにゃならんのは、かなり面倒。

ていうか コイツ、きちんと私の意図を不動産屋に伝えられているのかな…?

不安だが、自分で「責任もって売る」て言った以上、私が しゃしゃり出るべきでは無い。
ヤツにも勉強の機会だろうて。

ネット公開後の反響はよろしく、直ぐにちょいちょい内見予約が入った。

早速同週、土曜に一人で内見の立ち会い。
その時初めて、不動産屋の担当と顔を合わせた。

来客前に少し話をしてみたところ、成程 確かに好青年…

と、思ったんだが。

赤の他人の評価を書きたくは無いんだが、書かせてもらう。

「どうぞ、ごゆっくり ご覧下さい」

内見に来た母子に軽く挨拶して、私は今の座卓前に座り、気づかれない程度の横目で観察しつつ待機。

──近すぎ。

担当とお客様の距離が気になって仕方ない。会話も弾んでない。

パーソナルスペースに踏み込むな、一歩後退しろ!
設備の説明出来んのなら、世間話で構わん、何か喋れ!
追従するなら、無言でいるな!

もうね、元販売の血が騒ぎ過ぎちゃって仕方ない。

「あ、ありがとうございました~」

なんて、くるっと一周 見ただけで退散する、お客様。

ほら~…

居心地のいい空間でなければならないはずの家を売るのに、お前が圧かけてどうすんだよ(泣)!

次の内見までの間に、担当を呼び止めた。

「あのぅ。私が内見行ったなら、もう少し『自由に見回りたい』と 思うんですけど、どうですかね」

弊社の接客マニュアルが存在するだろうから、大きなお世話なんだけど。

担当は即座に理解したのか「はい!分かりました!」て 返事した。

嫌な予感がした。

次の内見からは遠目で見つつ、フォローを入れる事にした。

私だって ひと月で家売れてくれないと、困るんだ。

「これ何かしら」「これなんの為に有るのかしら」

担当が質問に「分かりません!」と元気よく答えれば、すかさず立ち上がり お客様と設備の間に片手を差し入れる。

「これはですね…」

昔モデルルームの所長さんから聞いた詳細から、自分が使ってみての感想まで織り交ぜて、接客スキル大解放。

あえてハキハキ喋り、後方の担当にも聞こえるよう心掛けた。

設備の事を知るなら、今。今だよ。

念じつつ。

気付けば残りの内見全部、自分で接客しちゃってたな(遠い目)

「凄いですね!」

純粋に褒められたのか嫌味か分からんが、持ち上げられて嫌な気はしない。

大衆的な不動産屋だけに、個々なブランドの売りポイントには疎いのは仕方の無いこと。

けど毎回 私が居る訳でない、貴方にやってもらわにゃ困るんだ。

最後に一つだけ。

「もう少し お勉強なさると、もっと良くなりますよ」

きっと口うるさい困った客だと思われたでしょうね(遠い目)

迎えた屋内の写真撮り。
当日は私は仕事で同席出来ない。

前日、持ち屋に帰り片付け掃除に明け暮れて、一晩。

──まあ、こんなもんか。

もっと掃除したかったが、細物は粗方棚に押し込んだし、今の私に出来る限度だ。

電車を待つうち、
あ、ゴミ持って降りるの忘れた。

て、思い出した。

一応 有料ゴミ袋に束ねてあったし、明らかゴミだから避けてくれるだろ。

写真撮りなんか慣れてるだろうし、ネットに上がるなら不要な物が写り込んでないかチェックも入るだろうし。

後ろ髪引かれるも甘く見て、ホームに入ってきた電車に乗った。
数日後。

早速スマホ開いて、持ち屋の売買情報を確認。

おお~、ちゃんと画像が載ってる!

テキストのみの詳細より、画像が付いていた方が、絶対レスポンス上がる筈。

10枚位かな、結構 撮ってくれたんだな~、なんて一枚一枚 じっくりチェックしていく。

シロのやつ、写り込んじゃってるけど(笑)

最初は笑って見てたけど、最後の写真で凍りついた。

──ゴミ袋、写ってんだけど。

しかも全く避けようともされてなく、部屋の片隅で存在感 放つゴミ袋の全身。

有り得ないよね。

これウチが汚部屋だと思われる以前に、ズボラな住人だと思われて設備のメンテナンス等 怠る人間だと思われるじゃん。
写真 撮り直してくれ!

思いはせど、仕事も有るし元旦那と顔を合わせる機会も無くて。

いたずらに時間が過ぎ行く間、内見予約は一切入らない。

──これは早々に、なんとかせねば!!!

焦りが浮かんだ頃、売却開始から概ね、ひと月が経過した。

売れねぇじゃん(泣)!!!

やっぱゴミ袋、問題だよな…

言わねば言わねば、と思っていた矢先の、元旦那との状況擦り合わせ日。

「あのね、担当さんがね『値下げしましょう!』て、言ってきたんだけど…」

ざけんな。

「嫌。値下げはしない」

「残りのローンはカバー出来るから、値下げしても良いんじゃないかって」

テメェ、私の話聞いてなかったな(怒)

とはいえ、私には根気強く どっしり構える財布の中身は無い。

「目星付けてる人は公開情報ちょくちょく確認してて、値下げされるのを待ってるんだって」

まあ、それは一理有るわな。
私もそうだし。

「『値下げすれば、絶対ひと月で売れますから!』だって!」

何か前にも聞いたような台詞だが。
頭をフル回転させ、諸々 差っ引かれ手元に残る金額と生活費・負債を計算する。

──ううん、マイナス値ではあるが 1ヶ月以内なら、何とかなるくらいかな。

私の人生って、いつだってマイナススタートだし。
それでも何とかしてきたし。

という、意味不明な自信が湧いてきた。

スパーンッ!と膝打ち
「ようし、分かった!そちらさんの言う値100プラス10落とそう!」

プラスを付けたのは理由が有る。

「その代わり、写真を今すぐ引き下げて撮り直して貰う!ついでに担当も変えてもらう!」

「ええ~(汗)担当さん変えるのは、ちょっと…」

あんなヘボバイヤーに何の執着が有るってんだ、だ阿呆が。

思ったけど、自分で交渉しない以上、ワガママは通らない。

結局、写真だけ早急に手配してもらうよう指示して、付け加えた。

「良いか、これは俺の覚悟だからな!これ以上は びた一文まけねぇ!」

勢いって、怖いですね(遠い目)

電車に揺られ、ふと思う。

マメにチェックなさってる方々は とっくにゴミ袋の写真に気付いているのでは。

だとしたら既に客離れは発生しているので、値下がったことにすら気付かない ご新規さんしか見込めないのでは。

ううむ…

考えど 家を売るのは初めての事で、何事でも やってみなければ分からない始末。

毎週毎週、私物を片付け提げて移動中で、疲れちゃった。
内見に来たファミリーの おばあちゃんと、座卓で粗茶をすすりながら まったり雑談交わして、ひと休憩。

ダンボールに私物を詰めて単身パックに集荷依頼して、ようやくニャンコらも電車移動して…

迎えた二月。

──売れねぇじゃん(泣)

今 売れねば、新生活シーズン逃し、苦戦を強いられるは必定。
そして行われた、元旦那との擦り合わせ。

「『更に値下ましょう!』だって!そしたら『ひと月で売ります!』って言ってくれてね!」

ざけんな。

「あのさ、私 言ったよね?『びた一文まけない』って。『ひと月』どころか何ヶ月過ぎてんだ!全然売ろうとする努力が見えないよね!」

流石にキレた。

値下げするのが売り方なら、最初の売却設定額自体、500上乗せたわ!

テメェ聞いてたんだろ、そういう売り方!
どうせ「はい!はい!そうですね!」て調子良く聞き流して、忘れてたんだろ!

ほうれんそう!社会人なら、ほうれんそう!

なんて気付くも、後の祭り。

「もうさ、不動産屋変えようよ」

三月いっぱいで売れてもらわにゃ困るんだ。

「嫌だ、変えない!そんなの情が無いじゃない!担当さんの熱意にかける!」

こんの、わからず屋ーッッッ(号泣)!!!!!

うっかり私がヒートアップしちゃったばかりに、話し合いにならない。

──疲れちゃった。

私の意図は一応伝えたし、今日は帰ろ…

そして桜咲き桜ちり。

──終わった…

持ち家は依然として売れぬまま。

いたずらに時は過ぎ、とうとう4月に乗ってしまった。

元旦那は使っていたようだけど、私は もう運転しないし出来ないし、都内は駐車場高いし、維持費だけが掛かる愛車も手放した。

ちったぁ 雨に打たれて、頭冷やしやがれ。

「お願いだから、不動産屋さん変えようよ。私、生活出来ないよ」

私は へりくだり、懇願した。
元旦那も、私が大事に大事に愛でてた愛車を手放したのが効いたのか、傾いて来ている。

私は すかさず、座卓に提携中古不動産屋さんのチラシを乗せた。

「ここ。私、ここ に依頼したい」

「…分かった」
やったー✨!

「ただし、今の不動産屋さんにも引き続きお願いする」
え~…

契約形態として簡単に、不動産屋一軒の専任契約は、販促や働きかけの面では狭いものの、中間マージンが掛からない。

一方、不動産屋 複数軒の一般契約は、多方面への販促・活動が可能になるが、中間マージンが発生する。
どちらが良いかとは言いきれないが、私的に、これ以上コストが掛かるのは嫌だ。

と 思いはしたものの、ようやく一歩前進したのだから、とりあえず一般契約結んで、後に専任に変更したって良い。

とりあえず 元旦那が提携中古屋さんに連絡する、と 決まり、お開きにした。
元旦那への気疲れが酷い。

一週間程して、元旦那からメールが入った。

『提携中古屋さんから「更に値下げしましょう」て言われたんだけど、どうしよう?』

どうしようも、こうしようも有るか。断れよ。

『俺はね、値下げしても良いと思うんだけど』

あぁ~…もおぉ…(疲)

何でこうも私の意図が伝わらんのかな、コヤツには。

早速、提携中古屋の担当さんにアポとってもらい、元旦那不在の週末に初顔合わせする。

説明し易いよう、チラシ裏に諸経費の一覧を書き、訪れた当日。

持ち屋の玄関を開けた瞬間の事。

──くっさ!!?

先週来た時は感じなかった、得体の知れない悪臭が屋内に立ち込めていた。

何この臭い!?臭ーッ!!!

生ゴミとも、猫のトイレとも、下駄箱臭とも違う、嗅いだ時の無い すえた臭い。

慌てて家の窓という窓を全開放して回った。

日中だというのに、どの部屋もカーテンが締め切られ暗く、床には うっすらとホコリが積もって白くなっている。

換気くらいしろよ!

思いながら最後に開いた、寝室の扉。

oh…

敷っぱの万年床に、乱れた掛け布団に枕、更に濃ゆい悪臭…

明らか、臭いの発生源。

お察しされだろう、“加齢臭”だ。

なんか知らない間に私、彼奴の臭いまで、受け付けられない体質になっちゃってたんだよね。

家中フ○ブって回って、担当さんの来訪前に、大急ぎで掃除機かけましたよ(遠い目)

「初めまして!」

おお⤴ パリッとなさってて、かなり好印象。

にこやかに来店された担当さんから名刺を受け取り、居間の座卓へ案内する。

「早速ですが、ご主人様から聞いてるとは思いますが」

来た、早速本題。

「値下げは出来ません。こちらをご覧下さい」

私は用意してた一覧表を提示した。

「私の月給+元旦那からの8、これが月の支払い、姉から20+トータルの借入れ…」

一つ一つ指さし説明。
担当さんは じっくり傾聴され、一覧表に目を落とし手に持った。

「なぁんで、値下げしちゃったんですか。こういう事情なら、僕が最初の希望額で売ったのに」

なんて心強い お言葉でしょう(感涙)
先に契約していた不動産屋の販促状況を精査する。

「この写真ではダメです、物が写り過ぎ。動物は嫌煙される方もいらっしゃるので、撮り直しましょう」

そうか、私はシロ可愛いと思っちゃったけど、買い手には色んな方がいらっしゃるからな。

猫飼っていた、という事実までは伏せないが、撮り直し。
家具なんかも移動して、何も無い屋内を撮影するという。

へええ、そこまでやるんだ。

「入居前に撮った何も無い屋内の写真が有るんですけど、それは使えないですか?」

「それは、ちょっと。屋内の経年感が伝わらないので」

ですよね。

家具移動の撮影は後日、元旦那に汗を流してもらう事にした。
屋内の設備チェックも行う。

風呂場の浴室乾燥機の温風が出るかや、シンクのディスポーザーの運転・換気扇の豆球が点灯するかまで。

ほおお、こんなに細かい所まで見て行くんだ。

修理依頼なども中に立つらしい。
不具合の箇所は無く、震災で割れた壁紙が少しのみ。

買い手側にも安心感 大な筈。

「それから、猫ちゃんの臭いですかね…ちょっと生活臭が強い…」

あ。

「それ、猫じゃ無いんです!アレの加齢臭なんです!」

「あ、ああ~…」

私から元旦那に伝えるのは、ようやく落ち着いてきたのに また 何かおかしな事になったら…と、怖過ぎる。

「ちょっとね、私から言うのは、ちょっと…」

ぶっちゃけ、この画質なら入居時に私が撮影した写真でも良かったのでは、と 思いはしたが。

まあ、スマホで見るとは限らんし。パソコン画面で拡大表示するかもだし。

内見予定から お客様のレスポンス状況も逐一、私にもメールが来る。

私からお願いした訳じゃなく、自発的にリークしてくれるんだ。
加齢臭の話の時「ちょっとね、アレ頭が、ちょっとね」て、愚痴っておいて良かった。

内見で立ち会いすれば、事細かな設備の説明から 冗談を交えた巧みな接客トーク。

販売員の鏡だな!

仕事が出来る人間というのは居るんだ✨
惚れ惚れするほどの完璧さ。

今までは一体、何だったんだろう…(遠い目)

それから ひと月。

継続していた先の不動産屋からの内見は一切無く、中古屋さんのみ。

業務上の相談事も「連絡つかないから」と、元旦那ではなく、いつの間にやら私が直接やりとり していて。

…アイツ、やる気 失くしたな(呆れ)

「責任」の気概は、どうしたよ。
結局、私が全部やってんじゃん。

「お忙しい方で なかなか ご都合着かなかったんですが、今日は連れてきました!」

ほくほくと担当さんに紹介されたのは、とある一家の お父様。

奥様と生活する用に、1~2年前から このマンション上で 間口の こじんまりした部屋を探していて、家がベストだと言う。

やっぱり、顧客付いてたじゃん!

前々から家の販売状況はチェックなさっていたようで。

ひょっとして、間で値下げ交渉が入ったのも「元値で売った」と自信持たれてたのも、この方がいらしたからでは。

思ったけど、不要な詮索はしまい。

じっくり内見され奥様に持ち帰った、お父様。

提携中古屋さんと契約してから僅かに、ひと月。
買い手が付いた。

実際は考える時間や諸手続きで、内見から1ヶ月半くらい掛かるんだけど…

最初から私が面倒臭がらずに全部やってれば、当初の目論見通り3ヶ月で決着していたのでは。

分かりませんけど。

“若い頃の苦労は買ってでも しろ”
なんて巷では言うけれど、少なくとも一つ言わせてもらえば
借金抱えてまで、要らぬ苦労は買わんでいい。

自分の為ではなく、他人の為なら尚の事。
彼奴の成長は無く、自分でやっちゃってるし。

まあ、勉強になりましたよ。
馬鹿高い授業料ですよ(遠い目)

半年強、家が売れて円満解決──って 終わるんなら、こんなに長く怨念 語らないよねー。

⑨に続く──

軒昂じいちゃん②

「いつも眠そうな眼してるよね。眠いの(笑)?」

これは表題の おじいちゃんではなく、販売員時代の店長会の席で お世話になってた店舗開発の方の お言葉。

私、別に眠たくないんだけど。

思いはせど 他人に指摘されるって事は、普段から余程 考えが顔に出ちゃってるんだろうな。

「普段眠そうな眼が、興味の有る話になると“カッ”と見開くんだよ。そこが良い!」

これが、表題の おじいちゃんの お言葉。

覚えておいでかな『就活』の話で触った登録先の派遣会社の上司、歌舞いたスーツの御仁である。

この御仁、面倒見が良いと言いまするか…

近況報告を兼ねた呑み会が月一度。
他の部下も居るのかな~なんて思って参加した初回から、退社するまで ずうっと、サシ。

気を遣いまくりますよね。

いっつも都会で呑んでんだから、たまには他社出向の方との接点も、欲しかったな。

私は別に何とも思ってない方だったので、奥様 差し置いてまでサシで呑む必要有ったかな…(遠い目)

近況報告というのも、ただの体。
基本的に御仁の話を聴き、終わる。

──正直、私には どうでもいい。

フルタイム勤務明けで疲れちゃってるし、早く お開きになんないかな…

なんて思って同席すること、3~4時間。

その間、御仁のグラスが空くかとか、料理の配膳だとか、気を遣いまくりな訳で。
そんな中 唯一楽しみで有った話題が、他会社の業務内容。

当時から私は自分を「SEという名のサービスエンジニア」だと自称していたから、現役活動されるプログラマーの先輩方の話には興味が尽きん。

私の興味の範囲が“そこ”だと知ってか、あまり他所に言っちゃいかんような内容まで ご教授下すって。
うん。言えないけど、あの辺の話は面白かったな。言えないけど。

「もっと好きなの頼みなよ」

メニュー表を私に寄せてくれる御仁。

ううん、私は もっとこう…たこわさ だとか もずく だとか、小鉢物が好きなんだけど…

御仁も摘むかも と考えれば、一人で抱える系の小鉢は頼めない。

どうしても取り分け系、大皿注文が増える。

直ぐにテーブルはいっぱいになって、御仁は そんなに食べないし、私も御仁のグラスと皿に注視しているから、そんなにバクバク食えんくて。

いつも食べきらん程、料理が残る。

勿体ない…

と、思って残った料理を見据えた、初回の事。

御仁が店員を呼びつけた。

「残った料理、持ち帰り用に包めるかな?」

おおお、ジェントルメン✨

違うか(笑)

でもさ、食品ロスに関して あまり騒がれていなかった十年近く昔の事、私は御仁の行動に感動したのだよ。

当時から大抵の居酒屋には、持ち帰り用の 使い捨てプラ容器が常備されていて。
大喜びで二袋、持ち帰った。

時には衛生面やら消費期限の観点か、包めない居酒屋も存在する。

「今、食べちゃいます!」

一度そういう お店に当たっちゃった時、御仁に お時間頂いて、急いでペロッと全部たいらげた。

だって、残すだなんて勿体無いし、お店に失礼じゃない。

あ。コレ、中華料理屋では やりませんよ、一応(汗)

いつも特に店とか決めずに、適当な駅に集合だったもんだから、次からは入店前に

「料理残ったら、持ち帰れる?」

て、確認されるようになっちゃった。

──コレはコレで恥ずかしい。

いや、持ち帰れなかったら食べちゃうんで、そこは気を遣わんで欲しかったな(遠い目)

「持ち帰る用に追加しなよ」

「えッ、良いんですか(喜)」

お会計は御仁だもんで、気になってたけど頼めなかったやつとか1~2皿、大喜びで追加オーダー。

だって私、食べ物恵んでくれる方が世の中で一番“善い人”だと思ってるもんで。

あー…「お菓子あげる」と言われたら、ホイホイ着いて行っちゃう阿呆な子供…でしたね(遠い目)
大体いつも、テキ屋の焼きそば容れ位のプラ容器に 4~5皿、持たせてもらってた。

翌日の楽しみにして冷蔵庫にしまっておくんだ。
…旦那の晩飯にされちゃう時が多かったけど。

なんやかんやで離婚して、独り暮らしを始めた辺り。

苗字直さなかったから、いつ会社に言い出そうかな~なんて思ってた。

帰宅しな、ニャンコらに襲われるから、ベランダで包みを開いて、独り呑み直しながら、もそもそ食す。

──これは、早急に なんとかせねば!

とは思いつつ、御仁の話の合間に、何て ねじ込めば良いか分からん。

「ごちそうさまでした~♪」

顔で笑って、心で泣いて。
ひたすら残飯処理に箸を進め。
御仁の話が始まる前に、先に告げるべきだよな。

「今日は お耳に入れたい、お話が有ります」

テーブルに座りしな注文そこそこ、私は切り出した。

「実は離婚して、今 独り暮らしなんです」

「あっ、そうなんだぁ!」

んん…?
なんか今、まばゆいほどに嬉しそうな顔をされたけど、気の所為かな…

「電子レンジは有るんでしょ?」

「はい、姉からの頂き物が…」

結局ね、独り暮らしだからって心配されちゃってね。
持ち帰る用の皿は減らなかった。

いやさ「冷蔵庫無い」なんて、言い出せなかったさ、流石に。

そういう話を出来る仲とも、私は思ってなかったんですよ。

ごちそうさまでした(礼)

都会の家電無し生活

シリーズ化するかもしれんのでタイトル付けてみた。

「冷蔵庫無い」で思い出した、注意喚起系 小話を少々。

都会の5畳半に暮らし数年。

『コインランドリー恋歌』で触れたが、初期値は 姉から貰った電子レンジ・必要に迫られ買ったダ○ソンの掃除機・空気清浄機 の、3種のみ。

冷蔵庫・洗濯機、生活に必要な白物家電は無く、テレビすら無い生活。

まあテレビは、画面極小で電波入りにくいけど スマホでワンセグ観れたし、ゲームも当時は3○Sが主流で、無くても良いかな。

洗濯機も コインランドリー在るし。

冷蔵庫は 置く場所 無いし。
冷蔵庫よりも冷凍庫が欲しかったな。
だってアイス、食べたいじゃん。

それまで年中365日 毎日アイス食ってた、アイス馬鹿なんよ。

「カレーとミカンとアイスが有れば生きていける✨」

てのが 若い頃の自論だったぐらい、アイス好きなんよ。

近所のコンビニで買っても、夏場なんか家に辿り着く頃には、やわらか~く なっちゃっててね。
棒に刺さったアイスとか、不用意に引っ張ると、ズボッ!て棒だけ抜けちゃってさ。

袋からムリムリ押し出して食べるの、地味に切ない…棒アイスなのに(涙)

おっと、脱線してるな。

会社帰りに時々 寄ったのが成○石井。
ちょっぴり価格帯は お高めに感じたけれど、食品が美味そうに見えるんだよね。

おおお✨大好物が!

喜びレジカゴに入れたのは、真空パックされた 鳥の炭焼き。

あれね~、美味いんだよねぇ。

晩酌には基本ド○キで買った赤ワインの一升ペットボトル、ラッパ呑み。

摘みは都度、食べたいもんをチョイスして帰ってた。

「ただいまぁ~!」

「ふにゃあん!」

出迎えたシロが、提げたレジ袋に向かって飛び掛ってきた。

「コラッ!ダメッ、コレ私のだから、ダメ~ッ!」

大慌てでシンク下の納戸に、レジ袋ごと押し込んだ。

そのまま、ニャンコらにエサやって、ちびちび呑んだりしてるうちに、すっかり鳥の炭焼きの存在は忘れてしまった。

梅雨が過ぎ、うだるような真夏の事。
生ぬる~い赤ワインをチビチビ呑んでた、深夜。

──あ!鳥の炭焼き買ってたっけ!

なんか口寂しいな、と思った瞬間、思い出したんだ。

ホクホクと納戸から出し、灰皿と赤ワイン片手にベランダに出た。

タバコに火を点け ボケ〜ッと吹かし、赤ワイン呑んで、レジ袋から鳥の炭焼きを取り出した。
一応、パッケージの賞味期限を見れば、若干過ぎていたけど許容範囲。

ピリッと封を破って、ムリムリッと押し出して、口いっぱいに頬張った。

もぐもぐも……ん゙ん゙ッ!!?

未だかつて経験した事のない、尋常じゃない苦味が脳天まで突き抜けた。

大慌てで部屋を渡り、シンクにペッと吐き出した。

ええッ!? もうダメになってた!?

私の経験上、ちょっとくらい賞味期限過ぎてても平気なもんで。
目を白黒させて持ったままだった、残りの鳥の炭焼きを凝視した。

──oh。

透明フィルムの中の炭焼きは、炭の黒に紛れて 緑に赤に色付いて。

あれ?スパイス焼きだったかな?

思う程のカラフル加減。
明るい部屋明かりに照らされて、暗いベランダでは見えてなかった赤文字三文字。

“ 要 冷 蔵 ”

マジかッッ!!!

そう。私、真空パックの見た目から勝手に常温保存可能な商品だと思い込んでたんだけど、チルド商品だったんだよね(遠い目)

水を流して、ジャバジャバ口を ゆすぎ、ゴロゴロ うがい。

──うえぇ…ちょっと飲んじゃったよおぉ…(泣)

ただでさえ冷蔵庫に入れてなかった上に、賞味期限は勿論、冷蔵保存の設定な訳で。

食中毒、嫌あぁッ!

でも一度 胃袋に入った、腐った食材に対する効果的な処置も浮かばんくて。

とりま、赤ワイン ガブガブ呑むくらいしか出来んかった。

恐怖に震え迎えた翌朝──

ケロッとしてた。
お腹痛くも何ともない。気持ち悪くもない。

赤ワインの度数で消毒された、と言うよりかは…

多分コレ、私は鋼の胃袋を持っているから、大事には至らなかったんだ。
分からんけど。

皆様も ご注意を。食品の保存方法は きちんと確認してから、しまってくださいね。

独り問答

これも昔からなんだけど、考えている事が表情に出るだけでは飽き足らず、口からも出ちゃう。

要は独り言、多し。

よくあるのは「え、ほにゃららって何!? …あ、アレか」ていう。

多分コレね、小さい時からテレビに向かって喋っていたせいなんだけど。

「ここが こうで こう…ううん??」
「…あれ?どうやんだ?」

私が手元で解けない事柄を、母親が覗き込んだ。

母親「こう(a)したら、良いんじゃない?」
私「あ、こう(b)する良いのか」

…あれ?

ほぼ同時に別回答する母子。

「ちょっと、母ちゃんも真剣に考えたのに」

「あ。ごめん、独り言。気にしないで」

よくあるパターンw

幼少ひとコマ

多分コレ 物心ついた3~4歳の、最も古い記憶。

小さい頃ってさ、テレビと現実の区別がつかないじゃない。

当時、年波に特撮の戦隊ヒーローに どハマりしていて。

サンタさんがくれたヒーローセットのヘルメットとベルトをパジャマの上から締め、キメポーズしている写真が残っている。
同じ頃ハマっていたのが、セロテープ。

ペッと ちぎって、ペタッと貼るだけ、何でも直っちゃう優れもの。

新聞紙から空き箱には飽き足らず、何でも目に入った物は全部、セロテープでベタベタくっつけちゃうから「セロテープ姫」って呼ばれてた。

“適量”と言う言葉を知らず、そりゃあもう 重ね貼り。

すぐ一巻使っちゃうから、常に10~20個セロテープがストックされてた。

いや、昔だから個包装とか無くて、やたらと入った大容量の事務用しか売ってなかったのかな。

「母ちゃん、セロテープなくなった!」

大きなセロテープカッター台に 母親から出してもらった一巻を、自分でセットして貼付再開。
またねぇ、テープカッター台が古~くて、すんげぇ重た~くてねぇ。

コンクリートブロック一片程の重量感。

両手で「よいしょっ」て抱えて、あちこち持ち運んで 必ず、私の右隣に据え置かれていた。

当時は まだ団地住まいで、五人家族には手狭の2DK位だったかな。

家電も家具も、昭和なデザイン。
戦隊ヒーロー番組が始まると、背丈以上の高さに置かれた14インチのブラウン管テレビを、見上げて世界に入り込む。

当時のヒーローもののセオリーは、毎話一回、必ず敵に追い詰められる。

もうさ、彼らが負けちゃったら悪の組織が世界を征服しちゃうから、気が気じゃない訳で。

助けに行かなくちゃ!

ヒーロー達と、私も一緒になって戦う妄想ばっかりしていたよね。

でもね、このテレビの先のヒーロー達の元へ、どう駆け付けたら良いのか方法が分からずに、いっつも悩んで「むうぅー!」て なってたんだ。

この分厚そうなガラスが邪魔で入れない!

ブラウン管の先は、彼らに繋がってると信じてた。
毎度のヒーローが追い詰められたシーンで やきもき していた、ある時。

──ハッ!

気付けば、私の かたわらには据え置かれた、重た~いセロテープカッター台。

そうだ!
このテープカッター台でガラスを割って、中に入ったらガラスの破片を拾い集めて、セロテープで くっつけて直せば良いんだ!

かなり具体的に思い付いた。

テレビ壊しちゃうけど直せば(多分)怒られないし、ヒーロー達も救えちゃう、名案 良策!

──て、考えてたんだよね、小さい頃。

いや~…ブラウン管が子供の力で割れるとは思わないけど、もし鈍器で割れちゃってたら、大惨事だよね。

実行しなくて良かったよ、マジで。

夢のマイホーム⑨

持ち家の買い手が決まり、契約を済ませ、引渡しまで後ひと月半。

…おい。いい加減、引越し先 探せよ。

元旦那は慣れないこと ばかりしてた所為なのか、すっかり消し炭。

家の荷物を まとめるでもなく、自分が住む物件を探すでもなく。

無駄に過ぎ行く時間に焦りが募る、私。

このままではいかん!

引渡し日まで残り三週間。
私は週末、持ち屋で元旦那と対峙した。

「家、探してる?」

「ううん、全然」

探せよ。

思いは飲み込み、元旦那には腫れ物対応。
だって、またあたおかになったら嫌だし。

「引渡し日には住む家無くなっちゃうんだよ。気になる物件とか無いの?」

「あー…ここが ちょっと気になってる」

元旦那が座卓上に置いたのはポスティングされていた、U○のチラシ。

おお、あるじゃない!

礼金無し・仲介手数料無し、更新料無し。
初期費用は20も有れば住み出し可能な筈。

「良いじゃん。引越し費用は残して有るよね?」

「それが…無くて」

オイ!!
家売るって決めてから何ヶ月経ってると思ってんだ!
私にあれしか入れてないんだから、余裕有っただろ!
有りまくってたろ!馬鹿ー!

思いは飲み込み、営業スマイルでチラシを指差す。

「仕方ない、費用は私が何とかするから、ここに電話して。今、私の目の前で電話して。い・ま!こ・こ・で!」

渋々とスマホでチラシの電話番号に掛ける、元旦那。

入居まで時間掛かるかもだし、部屋空いてないかもだし、引越し業者手配するのだって時間が要る。

今「連絡して」と 帰ったら、きっと多分コイツは動かない。

後三週間しか無いんだ。
今日、何としてでも決めさせる!
でないと私が安眠出来ない!

通話しながら、私に相談してくる、元旦那。

「部屋空いてるって、どうしよ?」
「今日、内見出来るって言うんだけど、どうしよ?」

自分で決めろい!スットコドッコイ!

思いは飲み込み、代わりに返答。

「見に行こ」

「うん、分かった」

今日中に何としてでも申込みか契約まで済ませなければ。
元旦那が決めなかったり、途中で投げ出したりしては、本末転倒。

お節介が過ぎるとは思うが、内見には私も同行する事にした。

バスを乗り継ぎ、辿り着いた良くある団地…

え。何ココ、敷地が尋常じゃゃなく広いんだけど。何十棟 在るの???

慣れない団地に迷いつつ、U○の出向窓口にやって来た。

「お二人お住いでお探しですか~?」

「違います。住むのはコレ一人です。私はただの付き添いです」

なんか妙なカップルが来たな、的な顔をされたが、案内事項なんかを元旦那と一緒になって聴いた。

ちょうど1DKと2DKが一部屋ずつ残っていると言う。

「ええ~、狭くて良いんだけど…どうしよ?」

だから、いちいち私に聞くな。

「折角だから、両方見せてもらえば?」

これには理由が有る。
比べる対象が有った方が、いずれかに決め易い。

カチッと、私の接客スイッチ、ON。

最初に1DKの お部屋を見せてもらった。

ほおお、U○ってこうなってんだ✨

知らない世界にワクワクしたのは、内緒だ。

私の知る団地の内装とは違い、バイカラーの壁紙がオシャンティだ。
よくよく見ると、若干団地らしい設備も見受けられたが、まあ住めば都だろ。

「うわぁ、綺麗ですね!」

一室目は敢えて私は口を出さず、後ろから眺めた。

階低く、日当たりが若干難有り、薄暗く感じる。

等等、比べる対象を探る。
次に別棟の2DKに徒歩移動。

最上階に位置し階段しかないのがキツいが、まぁ住むのは私じゃないし。

「うわぁ、広~い!」

内装も先に見た都会的配色の1DKとは変えてあり、落ち着いた色味のバイカラー。

ほおぉ、ターゲットに合わせて内装変えてんだ。考えてるぅ~!

なんて、別の関心してしまう。
元旦那を差し置いて、家の中をウロウロウロウロ。

「洗面台の鏡がオシャレ!」

「畳だ!畳だー!」

これだけ間口が広ければ最悪 処分出来ずとも、持ち屋に残っている家具全部 押し込められるな。

なんて打算も有り。

ここに決めさせよう、と決心した。

「ベランダ、出てみてもいいですか~?」

案内員さんに許可をもらい、開け放つ掃き出し窓。

「日当たり、めっちゃ良い~!」

最上階で思った以上に隣接した建物が遠く、日差しが入ってくる。

私は日当たり重視派なんだけど、元旦那は夜型だから遮光カーテン引いちゃうだろうし、関係無いんだけど。

「ほらココ、めっちゃ風通し良いよ!」

元旦那をベランダに呼び出し、一緒に屋外を覗く。

「潮のいい匂いがする~!」

潮風か~…自転車 錆びるんだよな。なんて、別の感慨を持ってしまうんだが。

「良いね、ココ!換気し易いいじゃない!」

直前の部屋とは打って代わり 褒めちぎりまくる、私。

元旦那も私のテンションに釣られている。

「良いね、ココ!」

あと ひと押し!

「こんな良い部屋なかなか無いよ!早く申し込まないと取られちゃうよ?」

「じゃあ、ココにします!」

はい、決定ー。お買い上げ、ありがとうございます。
違うか。

こうして 半ば無理矢理 決めさせて、事務所に戻り、その場で契約書に押印するまで見届けた。
久々のガチ接客に猛烈な疲労感を覚える。

「じゃ、私 帰るから」

電車で引越し業者と粗大ゴミなんかの検索して…
この後の行動予定を頭の中で構築している時、元旦那から申し出が有った。

「○○ん家、見てみたい」

ざけんな。

誰がテメェになんぞ、憩いの我が家紹介するか!阿呆!

思いはするも下手に断ると、また面倒な事になりかねない。

「…シロが喜ぶだろうし、良いけど。家めっちゃ遠いし狭いし、冷蔵庫無いから食べ物無いから、お構い出来ませんけど」

うえぇん!あんな小狭い密室にコイツと二人になりたくないよ(泣)!

顔はむくれて、心は泣いて。

渋々と、元旦那と電車を乗り継ぐ。
直接、我が家へ向かうと道を覚えられてしまうかもしれん。
新住所だって教えてないのに、それだけは避けたい。

スーパー巡り、わざと回り道して逆方向から我が家にアプローチした。

「ふにゃあん!」

シロの おで迎えにも、元旦那の反応は薄い。
我が家に対しての感想も無い。

何しに来たんだよ。

適当に宅呑みしつつ、接客スイッチの切れた私の会話も弾まない。

こういう時は、事務的に。

「引越し業者、今 電話して」

検索した業者を伝え、即 電話させた。

──まあ、全部 目の前でやってもらえた方が、私には安心であるな。

粗大ゴミを検索、あの地域は一度に最大10個迄しか出せない模様。

ここで、その日は終わった──と思うんだけど。

今現在、恐怖している事が有る。

当時の手帳のあの日の欄に、元旦那の名と…“泊”の文字。

え゙ッ!? アイツ泊まってんの!?
何か妙な事しとらんだろうな!?
まさか、自分で記憶をデリートしたのか!?

記憶失せ、気持ち悪くて仕方ない(泣)

⑩に続く──

ナイトメア(悪夢)

これは小説の話ではなくガチの夢。ノンレム睡眠時に視る、悪夢の話。

ここ数ヶ月は落ち着いているんだが、一昨年くらいから、時々 我が家が舞台の怖い夢を視た。

今の我が家で私がメインで過ごす居間7.5畳。ここにパイプベッドを置いたり、作業机置いたり、ニャンコらとゴロゴロ。
リアルで恋愛する余力など無く、二次元や空想だけで良いや、と 開き直っていた時期。

突然、我が家の中に来訪者が現れる。

登場するのは決まって、いい別れ方をしていない、音信不通にした元パートナーやら元旦那やら。

私からしたら“黒”の人間ばかりだ。

とにかく 二度と関わり合いたくない人間。
そんな奴らが、時には単独、時には連携して、私を羽交い締めにして乱暴してくるんだ。

最後に視たのは寝転ぶ私を、元旦那が単独でベッドサイドから見下ろしてきていた、夢。

勿論、今の我が家の所在地は知りもしない。

何で家にいんの!?

現実と夢の境が分からないほど、辺りは見慣れた居間なんだ。
二辺を壁に囲まれたベッドに寝転ぶ私には逃げ場も無く、抵抗あえなく被さるようにベッドに押さえつけられて…

「うわあああぁッ!!!」

叫んで飛び起きた。

「はぁッはぁッはぁッ…」

高鳴る鼓動に服の上から心臓掴み、辺りを見回す。
安全確認にベッド下を覗いてみたりして。

──誰も居ない。

安心出来るまで全部屋ウロウロして、トイレや風呂場も無人を確認。
ホッと一息吐いてタバコくわえてベランダに出る。

ああもう…我が家に“出る”のは勘弁してくれ…

Gに遭遇しちゃったみたいな起床感。リアルな夢なんだよ。

…まあ、欲求不満なんじゃね?と 言われてしまえば、それまでなんだな(笑)

遊び屋⑤ ※苦手な方ご注意※

どうにも女性が絡んでいる話は語りにくいと言うのが御座いまして…

時折 抱いた恋愛感情くらいは吐露するかもだけど、許可取りしてない現状、墓まで持っていこうかな、と思っております。

なので とりま、当面 男性絡みの話。

時系列的に語ってる辺りの複数恋愛模様。
『夢のマイホーム⑨』及び『コインランドリー恋歌』と時を同じくして、お付き合いを開始したパートナーが居た。

複数恋愛は理解されにくく ややこしくなるので、その方の事は とりあえず置いておいて。

もうどうにでもなれー!

都会に居住を移し数ヶ月。
自転車操業では あったんだが、一度 緩んだ
財布の紐が締まらない。

夜も眠れないから、お酒の力を借りることも多く…と 言うか、ただの呑兵衛なんだけど。

連日連夜 仕事終わりに、近所で独り呑みがてら晩飯にするのが、私のルーティン。

…オッサンw

だってさぁ、都会には色んな飯屋や呑み屋が在って、楽しいんだもの。

お酒、大好きー♪

流石に三十路を過ぎ呑んでばかりで体重は増加傾向を辿っていたが、最低時よりプラス10kgやから…今と同じ位の体型かな。

お腹が ぽよっとして来た…

何よりも、それまで着ていた洋服のサイズが合わんくなってて、ピチパツなスタイル。

それでも まだ、一応 小綺麗にしていた。

独り呑んでいると、こんな私でも声を掛けてくる、もの好きというものは居るもので。

要は、ナンパだ。
自慢じゃないが、自慢だ。

大抵、居酒屋内で喋って呑んで終わりなんだが、お二方程、お店を変えた方が存在する。

─1人目─

肉食いてぇ…

あの日は猛烈に肉を食したかった。
初めて潜った、すえた焼鳥屋の暖簾。
カウンター席に陣取り、焼き物を ちょいちょい注文。

みぞれ酒って何だろうwkwk

店員さんに尋ねれば、細かく砕いた氷で割った日本酒だと言う。

俺っちも、それ♪!

とは言わなかったが、早速オーダー。
それとは別にダブルドリンクで生ひとつ。
なんだっけな、何かが一つ お品切だったんだよな。
食べた時無くて凄く気になるメニューだったんだが、ど忘れしてしまったな。

一通り食って呑んで舌つづみ。

…お店も混んできたし 今の注文全部消化したら、おいとま しようかな。

と 思い、磨りガラスの日本酒の小瓶を傾けていた頃合だった。

隣のカウンター席に、一人のビジネスマンが座られた。
ロマンスグレーの髪にパリッとスーツ。出来るオヤジ感オーラが放たれている。

──イケおじ!

年下には ほぼ興味を抱かないが、年上にはストライクゾーンが広い、私。
ちょっとね、気になるよね。

焼き鳥串に かぶりつき、左隣の気配を探る。

一見の私が物珍しいのか、チラチラ見られている感じ。
そのうち、おじさま はメニューを開き、追加注文に店員さんを呼んだ。

「ごめんなさい、品切れなんです」

「そうなんだ。残念だなぁ…」

私も食べてみたかったやつと同じ物、注文されてる。

あ。この話、私がナンパされたんじゃなくて、逆ナンじゃん。

店員さんがはけ、再び呑み始める おじさまに

「じゃあ、私は この辺で…」

お会計に立とうとした時だった。

「良かったら、行きつけの落ち着いたお店が有るから、そこで呑み直さない?」

誘われたー!

「喜んで!」

おじさまは店員さんを呼び付けた。

「お会計お願い。そっちの席も一緒に」

何と、私の呑み食いした分も支払おうとされる。

「いえいえ!私 結構食ってますから!申し訳ないですから!」

流石に申し出を断ろうとするも、おじさまは引かない。

「良いから、良いから。今日の出逢いの記念に、奢らせて」

そ、そう来るか!

「…じゃあ、お言葉に甘えて…」

ぶっちゃけ、そこそこ呑んでいたのも有り、断り文句が浮かばない。

「ごちそうさまでーす♪」

おじさまと二人、焼き鳥の暖簾を後にした。
てくてく おじさまに着いて歩く事、数分。

「ここ」

oh…

駅から離れ 裏通りに面した、呑み屋外。

おじさまが立ち止まったのは光る看板の据え置かれた、一軒のスナックの前。

スナックかぁ…

カラオケ歌ってとか言われたらどう断ったもんかな…

昔 専務に無理強いされ歌ったトラウマが蘇る。
あの時は確か、ピ○ク・レディーを歌わされたっけな(遠い目)

なんて、若干の恐怖心を抱きながら、おじさまの後に続いてスナックに入った。

「○○さん、おかえりなさい。あら、お連れさん?」

スナックのママさんに軽く挨拶。
確かに時間帯だと言うのに店内に他の来客は無く、スタッフの お嬢さんとママさんのみ。

これは、一杯くらいで おいとまコースだな。

「お好きな所へ、どうぞ」

私が逃げ易い入口付近のカウンターに着くと、おじさまも真隣の丸椅子に腰掛ける。

梅干し割を注文、マドラーで潰す間も気が気じゃない。
カウンターの背後には小さなステージ台に、カラオケ設備…

「何か歌います?」

うわッ(引)!

「私、音痴なんで!いや、マジで音痴なんですよ!恥ずかしいとかじゃなくて…うぅ~…あ!私、ママさんの歌声が聴きたいな♪!」

よし!我ながら上手く言い逃れた!

いえ、正直に答えただけなんですが。
ママさんとスタッフのお嬢さんが交互に歌うのに聞き惚れつつ、気付けば三杯目…

そして、気付いた。

──手、握られてんだけど!

タバコを吸うのも酒を呑むのも左手が空いてれば出来ちゃうもんで、いつから握られてたか分かんない。

ママさんの目も忍ばず、カウンター上で堂々と。

…やりおるな!

妙な感心してしまったよ。

この おじさま、大人しそうな顔して遊び人なのかな。

「囲碁って、知ってる?」

うぇ!? 何故 突然、囲碁な話に!?

見れば、タバコに火を点けようと手に持ったスナックのライターには、囲碁クラブの名前。

「この方、囲碁お強いのよ~」

「そんな、まだまだですよ(照)」

謙遜なさっているのは分かるが、何を話しているのやら ちんぷんかんぷん。

わ、私…五目並べのルールすら覚えてないんだけど…

私以外が盛り上がる中、すくい手に取られた右手の腹を、おじさまの親指が くいくいくいくい摩ってくる。

あー…誘われてるなぁ…

流石の私にも分かるよ、そのくらい。

うぅ~ん…悪かないんだけど、うぅ~ん…

ぶっちゃけ、焼き鳥だけでコレだったら どこへなり お供したんだが。

スナックに、カラオケに、囲碁…なぁ…

趣味が合わんことだけは、確かだ。

「──あ!私、明日も早いからもう寝なきゃ!おいくらですか!?」

我ながら、白々しいとは思いはしたんだが。

「あ、良いよ良いよ!僕が出すから…」

「わ!ありがとうございます~♪」

おじさまが財布に手を掛け 私の手を離した瞬間に、私は両手でカバンを抱えた。

そして、逃げるようにスナックを後にした。

──せめて チェスか将棋だったら、アリだったんだがなぁ…

残念。

ごちそうさまれした(泥酔)✨

─2人目─

都会では聞かない ひぐらしの声が懐かしい、晩夏。

祭りだ!祭りだーッ♪✨!

たとえ独りだろうと、祭りの気配有らばビール缶片手に覗きに行く、生粋もどきの江戸っ子気質。

あの日はビル街の中央広場で縁日が開催されていた。

仕事上がりの夕暮れ時、フラッと立ち寄り、ビールに焼串。
結構盛況してるんだなぁ。

スーツ姿のビジネスマン多く ごった返した中、いか焼き無いかな~…なんて、呑み食いしながらウロウロウロウロ。

あ~…無いかぁ…

いか焼きの話したっけ?してないな…
あ、この下りは小説に落としたんだった。失礼(汗)

いか焼き と 冷やしキュウリ、好きなんだもん。
焼きそば食って、ビール呑んで、焼き鳥食って、またビール呑み。

最後に、かき氷とビールで締めにしよ。

なんて、花壇の片隅に陣取って、氷を しゃくっている時だった。

「…独りかな?」
「…待ち合わせかな?」
「…声かけてみろよ~」

なんて、背後のビジネスマンがボソボソと騒いでいる。

気にはなるが、気にしない体でビールを呑む。

突然、正面に立ちはだかったのは、騒いでいたビジネスマンの一人。

「お独りですか?」

──んん?

自分を指しているとは思いもせず、辺りをキョロキョロ見回した。

「あなたですよ(笑)」

「…んんん(私)?」

目を瞬かせ自分を指差し、確認する。
ゴクンッ(呑み干す音)

「独りですが…」

「そうなんだ!僕今、同僚と来てるんですけど、良かったら御一緒しませんか?」

ナ、ナンパされたー!!!

指し示す先を振り返れば、手を振る2~3程のビジネスマン。

先刻の会話の感じに、街頭では無い事を考えれば、キャッチャーの可能性は極めて低い。
という訳で、場所を移してビジネスマン達と呑み始めた訳なんだな。

あぁ、こんな事なら…かき氷のシロップ、ブルーハワイにするんじゃなかった。

なんてね、お口が青くなっちゃってないか とか、青のり付いてないか とか、気になってしまうよね。
暗いから見えんだろうけど。

年若く見えるけど、全員 私と同い年だと言う。
しかも、システム系で働いているらしく、興味の有る話ばかりで面白い。
ビール奢って貰ったりしつつ、楽しくお喋りして、その場で解散──かと思われた。

「これから、呑みに行かない?」

気付けば連れの方々は おらず、最初に声を掛けてきたビジネスマンと二人きり。

そこそこ呑んじゃってるし、明日も仕事だからな~…

思いはせど。
定時で上がったから、時間はまだ早く普通なら呑み始める位の時間帯。

今のとこビールしか呑んどらんし、後1~2杯くらい、付き合っても平気か。

駅前の呑み屋街へと同行する事にした。

「何系が良い?」

「いか焼き在るとこ!」

だって、食べたかったんだもん。いか焼きスイッチ、入っちゃってたんだもん。
在るかは不明だが、海鮮系の居酒屋に入った。

メニューを開けば…おおお✨在るじゃな~い!

ようやく出逢えた、ぽっくりと甘辛ダレを まとった、いか焼き。

ウマー♪

あの居酒屋では、いか焼きの記憶しか残ってない。
なんやかんやラストオーダーまで居着いちゃったけど、終電気にしなくていい というのは、気兼ねしなくて良い。

さて、帰ったらニャンコらにご飯あげて…

なんて考えていた頃合。

「あ、どうしよ。終電無くなっちゃってた(汗)」

ええッ!? ちゃんと調べとけよ!!

家に来る?…言うのは、まだ早いな。
ニャンコは一晩くらい放っておいても平気だけど…

流石に日中も餌やっとらんし。朝出勤前に あげに帰れば、まあ平気か。

という経緯で、適当なラブホテルへ追従した訳なんだな。

このビジネスマンとの話は、また次回。

──今 思い返すと、作戦だったのでは。と、思わなくもない。

⑥に続く──

夢のマイホーム⑩

ようやく元旦那の転居先や引越し業者を手配出来、私はスマホを睨んでいた。

うむむ、これだけは…これだけはマジで手を付けたくなかったんだけど…

背に腹はかえられん!

ポチッと押下したは、加入中の貯蓄型 生命保険 貸付サービス。
勿論 受取人は、元旦那から姉に変更済み。

あ~あぁ、押しちゃった…

どうしても即日まとまった金額を用意するのに、他に方法が浮かばなかった。

老後の貯金代わりだったのに…

元旦那の引越し費用と業者代、合わせて30。

「他の事には使うなよ!家の売却差額の お前の取り分から直ぐに、必ず返せよ!」

口を酸っぱく再三 言い、振込んだ。

引渡し日まで残り2週間。

お!一応 荷物は まとめ始めたな!

いや、当たり前。

家の方方に紛れ残っていた私物を箱詰めしつつ、大物の処分について擦り合わせ。

この収納机、お気に入りだったんだけどな…

我が家は天井のハリが邪魔…というか、置くスペース無し。

要らんと言われれば仕方ない。

ううん、10個じゃ納まらんな…

家電は ほぼ持って行くと言うが、処分する家具類は多い。

リサイクルショップに買取り確認してみたが、ほとんどがプチプラ組立て家具故、逆に処分費プラス出張費が掛かるとのこと。
とりあえず保留して、大きいものから順に10個 メモに控え、平日に粗大ゴミ依頼する。
不要な私物をゴミ袋にポイポイ放っていた時だった。

ビリビリッ

背後で紙を破る音が聞こえ、振り向いた。

「…ちょっと!何やってんの!」

「え?」

元旦那が手にしていたのは、持ち家のオーナーズファイル。

申込みや契約時の苦労が詰まった控え書類、その中身を抜き出し ちぎってた音だった。

「それは持って行くから!ちゃんと箱に入ってたろ!」

「え?要らないでしょ?」

要るの!私が家持ってたって記念だから、要るの!

結局 売る羽目になったけど、気に入ってたんだよ、あの家。

ていうか、床暖。

うん。床暖が一番良かった、床暖が。
ずっと居間で生活してたしね。私の相棒、床暖。

「原付は5万で買い取って」

私の新居まで運転するのは、大変だ。
持って行きようも無く、元旦那が基本 足に使っていた私のカブは売り付けた。

名変なんかは役所に行かねばな。

引渡し日が、ちょうど平日で助かった。

箱詰めした私物も そこそこ在り、集荷依頼の電話をして、その日は お開きにした。

翌週、元旦那の引越しや引渡し日の同週。
最終チェックに訪れた持ち家の居間の入口で、呆然と立ち尽くした。

──デジャブ!?

部屋の様相は騒然と、精々 私が箱詰めした山が消えているくらいで、先週 帰った時と何ら変わっていなかった。

そう、片付いてなかったんだ。
アイツ、何もしてなかった。

「──何してんの(怒)」

「箱詰めしてる時、廃品回収車が通ったから、走って追いかけて探したけど見つからなかったんだ。それで終わっちゃった(汗)」

ど阿呆ーッッ!!!

起き抜けの元旦那に、お説教。

もう時間無いんだよ!? 明後日には引越し業者 来ちゃうんだよ!!
明明後日には引渡しなんだよ!?
言いたいことは山程有るが、時間が惜しい。

説教も そこそこに、分別したゴミ袋を数袋ずつ持ち、ゴミ置き場に捨てに行く。

何往復したかな(遠い目)

生活ゴミは日々 捨ててるから気付かないけど、生きてる時間が長ければ長いほど、残留している不用品というのは増えているもんで。

断捨離、大事。

コンビニで事前に依頼した料金分の粗大ゴミ処理券を買い、マジックで回収番号を書いて家具に貼っていく。

「引越し屋さんに ついでにゴミ捨て場に下ろしてもらって」

もうね、たとえ二人居れど粗大ゴミを抱え降りる気力も体力も残ってなくって。

丸投げ。

その位は、やってくれよ。

⑪に続く──

夢のマイホーム⑪

時系列は数字前後するが、家屋を売却するに当たり、とある儀式が存在する。

──押印の儀。

勝手に命名させてもらった。

買主と売主との売買契約 及び、残りの住宅ローンの精算だ。

儀式の日、スーツを着込み印鑑を持ち、訪れたは街の銀行の支店。

一角の個室で、元旦那と買主と不動産屋さんと合流した。

私の目前 綺麗な会議机の上、不動産さんが書類を一枚一枚 読み上げながら置いていく。

「記入や押印は最後に まとめてしますので」

…え、まだあんの??

一枚二枚じゃないんだよ、書類が積まれて山が出来る。

「──では、こちらに日付・ご住所・ご署名と印鑑を」

あ、記入はボールペンを持ちっぱで、説明を聴きながらしてたかな。

印鑑を構え、朱肉にトン、書類にポン。

トンポン、トンポン、トンポン…

売主・買主、両者の押印が必要で、割印する契約書なんかも回しながら。

掌に印鑑が刺さる…

軽く1cmは あろうかという書類類に押印した気がする(遠い目)

皆、黙々と印鑑を押すだけの、謎の時間。

「何かの儀式みたい(笑)」

そして 沈黙に耐えられず阿呆なこと言う、私。

銀行員の方がビロードをうった角盆に 書類と通帳を乗せ去っていく。

「残りのローン分は一度 口座に振り込まれて 即、引き落とされるので、ネットでリアルタイムで確認出来ますよ」

「何ソレ、面白そう!」

早速 スマホでネット銀行を開き、更新しつつ注視した。

ガツッと、べらぼうな預金額が表示される。

「うおッ!見た時無い金額なんだけど!」

そして即行、数百円に戻る預金残高。

──諸行無常(達観)

ちょっぴり切ない。

印字され戻った通帳は、一瞬だけ お金持ち気分。
手付け金として、厚みのある銀行の封筒が回ってきた。

中に入るは、万券の束。

おおお✨帯されてる お札、初めて見た!

「金額の確認を お願いします」

ぶっちゃけ、ピン券を百枚 手で数えるのは至難の業。

「帯されてるって事は、百枚なんですよね?」

現役販売員時代なら数えたろうけど…も。

押印の儀で手に来ちゃってたから お札を弾く動作も出来ず、ペラペラっと適当に捲り終了した。

もうね、信じるしかない。

「仲介手数料なんですが」

そうだった、専任契約じゃないからマージン発生するんだった。

一体、いかほど取られるもんなんだろう?

「今回特別に、無し、にさせて頂きます」
「えッ!!?」

何でかと問えば、担当の方が私の事情を考慮して、本来掛かるべき手数料をサービスしてくれるよう、本社に掛け合って下すったらしく…

良いの!!?

半信半疑で、にこやかに笑う担当の方と隣の上司の方を交互に見回した。

──ネ申✨!!!

恐るべきネ申対応。
足を向けて寝らんないよ。

領収書と書類の控えを頂戴した。
隙間時間に買主さんに聞いてみる。

「リビングに付いてるエアコン、見ました?」

「あ、あの大きいやつ?」

冬は床暖有るから点けないし、風通し良いから基本扇風機だったし、真夏の ほんの少しの期間しか使っていない、自動掃除・人温センサー付きの良いエアコン。

「あれ、貰ってもらえませんか?」

賃貸物件にはエアコン付きだったりするもんで、もれなく無用の長物であった。

三段脚立が在れば自分でどうにか外したかもだけど…

生憎と踏み台になるのはパイプ椅子しか無く。
処分するにも業者を手配すれば、処分費+工賃が発生する訳で。

「良いんですか?」

「値下げ出来なかった分、サービスです!」

適当な言い分付けたけど…スンマセン、押し付けちゃった(汗)

クリーニングすれば全然 使える物なので、ご勘弁をば。

押印の儀を終え、解散した。

「お茶してく?」

数時間に渡りタバコ吸ってなかったもんだから、ヤニ切れ起こしてソワソワしちゃう。
手近な喫煙可の喫茶店に元旦那と入った。

一息吐いて、カバンに入っている売上差額の分配をしようかな、なんて思ったんだけど…

意外と満席でね、喫茶店で高額を机上に出す勇気なんか出ず。
結局 全額預かり、後日 改め分配する事になってしまった。

札束持って電車移動、怖すぎる。

⑫に続く──

─おまけ─帯封

帯封がされた100枚束な お札の数え方を、担当の方が教えてくれた。

たとえ帯封がされていようと、間から抜かれている可能性もゼロではないんですって。

用意するもの、別の お札一枚。

札束の帯封に お札を差込んでみて、入らなければ100枚、入ってしまえば以下。

簡単でしょ✨

母親は、アレ⑮

何の流れだったかは忘れてしまったんだが、先日の会話、備忘用。

「私、ずっと『○○川の橋の下で拾われた』て、信じてたんだよ」

「そんなこと言ったっけ?」

おいー!

すっとぼけてるんだか、本当に忘れてんだか、首を捻られた。

そのうち思い出したのか、笑い出した、母親。

「あれはね、アンタがいけない」

お決まりの母親の台詞から始まる、思い出話──

私が二つか三つか、会話も おぼつかない いたいけな幼少期のこと。

一家でだんらん、食卓を囲んでいた。

何でか知らんが私はいつも上機嫌で、ニコニコ笑って楽しそうにしてるんだって。

(そりゃあ、飯だからだろ)

意味も分からず楽しそうにしている私を見ていると、母親は ふつふつ と意地悪心を刺激されるようで。

私に対し、母親は言うんだ。

「──え? 君、どこの子???」

パッと静止する、私。

「嫌だ、勝手に入ってきちゃダメじゃない。お家に帰んなさい」

一気に青ざめ泣き出す、私。

(酷ッ!!?)

──それを皮切りに『他所の子ごっこ』が始まるんだと。

これがまた、聞いてるだけでも迫真の演技でね。

…え? 私、悪さしたから おとがめ受けてた、とかじゃ無かったんだ???

うん、純粋にイジメられてただけだった。

「それ、アレだよ。今のご時世、捕まっちゃうヤツだよ。トラウマになるよ」

「だって、面白かったんだもん(笑)」

全く反省してねぇな、このヤロウ…

「私、ずっと信じてたんだからね!」

「いや、アンタが楽しそうにしてるのが いけない」

いやぁ、酷い。
流石に酷いと思うんだけど、どうなんだろ?
一般家庭では普通のこと?

ただの だんらんの一幕でした。

⑯に続く──

夢のマイホーム⑫

ようやく訪れた、引渡し当日。
売上金を持ち、早朝 我が家を出発した。

正直、家の片付き具合が心配過ぎて、不動産中古屋の担当さんや買主さんとの集合前に一度、様子を見ておこうと思う。

恐る恐る家の中に入れば、まぁ当然、エアコン以外の物は無く、ホッとした。

良かった~✨

一応 収納戸を全部開き、納戸やクローゼットの中も確認して、お忘れ物が無いか確認。

小さなキッチンカウンターの上に、エアコンの説明書とリモコンを置いておいた。

後はマンションに登録してあった猫の除籍をしなければ。

買主さんがペットを飼うかは知らないが、面倒事になったら申し訳ないし。
管理室の警備員さんに事情を説明したら、登録した時に提出した用紙をファイルから探し出した。

「記念に、持っていきます?」

「良いんですか!?」

猫の写真が添付してあったんだけど、チビな頃の写真だから皆カワユくて。

ほくほく貰って、管理室を後にした。

「あ、○○居た」

共用通路で元旦那に出くわした。

「ちょっと、コレどうしよう???」

小声だが焦った様子で引っ張られたは、ゴミ捨て場。

扉を開くと…

一角に これでもかと置かれた、粗大ゴミ。
転居時に家から出た家具である。

あー…

貼り紙がされていた。

ウッカリした事に、粗大ゴミ処理券に収集日を書き忘れてたんだよね。
申し訳ないんだけど、移動や撤去のしようがない。

2~3日後には回収されるし…

「こればっかりは仕方ない。気になるなら、自分でフロントに伝えて」

丸投げた。

一階エントランスのソファーで、担当さんと合流。
私が持っていた最後の家の鍵を渡し、確認書類に署名して、引渡しは終了となった。
立ち会いも午前中の内に終わったので、今日こそ転居に まつわる役所関係 諸々を済ませてしまわねば。

平日仕事だと、なかなかタイミングが作れないものである。

元旦那と一緒に地元の役所を訪れた。

現行は知らんが、私は県移動の引越しをしたので、まず、登録住民票の転出届を出さねばならない。
後、新居近くの役所で転入届を出さねばならん訳で…

ぶっちゃけ、面倒い。

自分の分の用紙を書きつつ、元旦那の用紙の書き方を教えたり。

せっかく役所に来たので、気になっていた戸籍謄本の写しを出してもらった。

おおお✨『 ✕ 』付いてる!!!

今の若者は何故、離婚経験者を「バツイチ」
と呼ぶか知らんだろう。

あれはね、ガチで『 ✕ 』が、付くんだよ。

一昔前までは縦書きの手書きであった、戸籍情報。

戸籍から離婚等の除籍を経験すると、自分の名前欄にでっかく『✕』が引かれ訂正されるんだ。
それが、所以。

手書き故、書いた人達の筆跡も様々で面白かったんだけど…

数年前に父親関係で入手した戸籍謄本の写しは、横書き活字の印字になり、名前の下に軽く「除籍」の文字が記載されているだけで『✕』印は無くなってしまっていた。

正直、味気ない。

「バツイチ」という言葉は、そのうち無くなるかもしれないな。
今現在「バツイチ」と言うのかも、知らんけど。
転居関係の用紙が受理された後、原付の名義変更に窓口を移動。

125cc以下の原動機付自転車は、陸運支局では無く、地方自治に登録されている。
よって、役所での手続きになる訳なんだが…

地味にこれ、失敗だったんだ。

「原付の譲渡で名義変更したいんですが」

登録抹消と新規登録の用紙を頂いた。

あ、あれ…???

真っ先に現住所の記載欄で、疑問符が盛大に飛んだ。

「すみませーん!私、ついさっき転出届出しちゃったんですけど、住所欄は どう書けば良いですか(汗)?」

「ええッ!? 転出届、出しちゃったんですか!?」

窓口の担当の方も、盛大に焦っておられた。

「ちょっと調べますんで!」

しばらくボケ~ッと椅子に座り、呼び出し待ち。

「やっぱダメだ。間に合うかと思ったけど、転出済みになっちゃってる(汗)」

聞けば、転出届を出し転入届を新居側で提出していない現状、私の住民登録はフワッとした状態な訳で。

「転入届を提出してから、再度、原付の登録変更をしてもらわないと…」

「それって、また こっちの窓口でやらなきゃですか!?」

「原付の登録はココだから、そういう事に」

そんな殺生な(号泣)!

ただでさえ平日時間が取れないのに、何度も役所の窓口、しかも遠方の この役所とも往復せねばいかん訳。

「厳しいです~(泣)」

「ちょっと待って下さい。ねじ込めるかな…」

再び椅子に座るも気が気でない。

あ~あ~、やっちまったなぁ…

窓口内では担当の方がパソコン叩いたり、方々に電話したり。

…デジャヴ。

「おまたせしました!何とか出来そうです!」

何と、転出届の登録前の時間に書類を受理した事にして下さると言う。

ネ申✨!

捨てる神あれば拾う神あり。
こうして転出届を出した同日中に、無事に原付の名義変更が出来たんだな。

一昔前は「お役所仕事」なんて言葉が有って、確かに時折
面倒に ぶち当たり「これだから お役所は」と、思いもしなくもないんだけど。
私が出逢った お役所の方々は、お忙しいのに時間を割いてくれる良い人ばかりでしたよ✨
ただね、毎回こうとは限らんから。

転出届を出すのと同じ日に、他にも役所手続き有るんだったら、転出届は一番最後に回した方が良い。

…いやコレ、私が知らなかっただけで、常識なのかな。

言い方悪いんだが、たかだか紙ペラ一枚の世界だけど、色々絡んでて難しいよね、お役所関係。

⑬に続く──

先駆者ならざる者④

思春期には形成されていた、私の恋愛脳。

必ず男子女子性別問わず、同時期に両者に恋したもんだ。

“思春期の同性への恋心は、友情の履き違え”
なんて耳にした時も有るんだが。

思い返しても友情にしては度が過ぎた感情だから、私は「あれは“恋”」だったと、信じてやまない。

─小学校高学年─

小三くらいの頃、一番仲良くしていた女の子の友達。

どういう経緯で仲良くなったか覚えてないんだけど、気付けば家を往来して遊んでいた。

自己主張もほぼ無く、声も小さーくて耳をすませて ようやく聞こえるくらいの、大人しい女の子。

小学生目線だけど、絵が猛烈に上手でね、クラスでも家でも、お絵描きして遊んでた。

私が描く人間の絵は、必ず二頭身になるもんだから、笑ってたっけな。

テレビゲームも よくやる子でね、その子に ド○クエV 借りるまでは、一日一時間のゲーム時間を守ってたもんだ。

思い返すと…かなり影響されてんな、私。
今の私を形成する要素満載。
私自身は男の子の友達多かったけど、その女の子とは当時、一番長い時間を過ごしていたと思う。

小学校五年生から六年生に上がる、というタイミングで、その子は引っ越してしまった。

そう遠くはなくて、電車を乗り継げば遊びに行ける距離ではあったんだけど。

現在みたく、メールやSNSの無い時代。
連絡する手段は、電話か手紙。
電話だと何喋ってるか よく分からんし、必然と始まったのが ヘッタクソなデッカイ字で書く、手紙のやりとり。

文通だ。

毎月だったかな。月一で休日には遊びに行くのに、手紙も書く。

貰った手紙は一部も手元に残ってないんだが、毎月毎月、楽しみでならなかった。
少し脱線するが、小学校六年生の私が困ったのが、体育や図工の授業でペアになる人間が居なかった事。

五年生から同一クラスで六年生に進級。
六年生にもなれば、周りは皆いつものペアが出来ちゃってるもんで。

大概は先生とか、適当な男子友達のペアに付き、三人グループにさせてもらってたかな。
初めのうちは、そういう学校での近況報告なんかを、手紙に認めていた。

でもね、段々と文通も往来する時も減って行く。

私は定期的に手紙を書いてたんだけど、返事が来なくなっちゃった。

何で返事が無いのか、分からない。

学校で何かあったのかな、楽しくないのかな。

邪推ばかりしちゃうんだ。
文面は覚えちゃおらんのだが、必然的に心配している体の思いの丈を書きなぐった、重ったるい内容の手紙が増える訳で…

多分ね「ウザぃ」と、思われてたんじゃないかなぁ。

薄ら気づき始めていた頃、学校からミッションが課せられた。

卒業アルバムの表紙を描くもの。代表数名、職員用の表紙も描く。
当時、漫画研究クラブに属してみたり、図工で描いた絵が賞捕ってみたり、私が絵を描く事は学校でも知られていたから、もれなく私も自分用と職員用と2枚描く事になり。

「お前の絵は躍動感が無い!○○の絵を見てみろ、この運動の一瞬を捉えた素晴らしい絵!」

あの子とは良く比べられてたっけなぁ。
私の師であり、供に漫画家を志すライバルでもあったんだ。
当然、抱く想いは複雑さを極める訳で…

あの子は、六年生は在学していなかったけど、五年間の想い出が詰まる小学校。

卒業アルバムだけ発行してもらう手筈になっていた。

そして、やはり絵が上手だから、あの子も2枚描く事になったんだが。

「遊びに行くついでに、渡して説明して来て」

ええッ(汗)!?

なんとね、空の表紙用原稿用紙を、渡して来るように担任から仰せつかってしまった。

──気まずい。

思ったところで、疎遠になりつつある状況など知りもしない担任に説明するのも面倒で。

まぁ、あの子に会いに行く言い訳にはなるかな。
手紙の文面はマジで覚えとらんのだが、ここと一緒で、自分を棚上げした偉そうな事ばかり書き殴っていたような(遠い目)

超絶ヘッタクソな文字でね。

預かった原稿用紙を持ち、むむぅ…と微妙な心境で訪れた、あの子の家。

尻尾を振る小型犬に お出迎えされ、階上の部屋に上がった。

「久しぶり…」

やっぱり あの子も微妙な顔をしていた。
まあ、大人しい子なんで、いつもと同じ表情っちゃ表情なんだが。

卒業アルバムの表紙の絵には 『小学校の想い出』と、お題がされていた。

見開き原稿用紙に引かれた水色の枠線(断ち切り線)と背表紙と表紙に印字される表題、折り込まれる余白 説明など伝えた。

実家に帰り、テーブルで自分の原稿用紙と にらめっこ。

──何も思い出せない。

全く思い出さなくもないんだが、出て来る思い出は どちらかと言えば失敗だったり喧嘩だったり、マイナスなものばかり。

一輪車やローラースケートで遊びに行った記憶も有るんだが…

描けない(泣)!

躍動感が、ねぇ。

そのうち、良く海まで遊びに行ったな、なんて思って、私は海の絵を描く事にした。

だが、テトラポットに桟橋・防波堤かつ砂浜…写生に行く時間も無くて。

どうしても海を描きたかったから、その頃ハマっていたラ○センっぽい、海中と水面と空の絵を描いた。

背表紙にはイルカを跳ねさせたりしてね。
画力なんか小学生だからヘボヘボなんだけど、当時の自分は「良く描けた♪」と、思ってた。

同じ絵を2枚描いて、わくわくしながら提出。

そして…担任に怒られました。

「小学校の想い出だって言ったろ!何で海中なんだ、学校で南国の海に潜っちゃいないだろ!」

oh…

私は咄嗟に言い訳を放った。

「よく海岸に遊びに行ったんです。防波堤から水平線を眺めて『この海の先には、どんな世界が広がってるかな』なんて、空想してたんです。
だから海中は空想だけど、私の想い出です!」

嘘、でも無いんだが。
よくもまぁ、スラスラと言えたもんだと思う(遠い目)

担任を論破し、描き直しはしなかった。

話を戻そう。
後日、依頼した表紙絵を受け取りに赴いた。

「出来たよー♪」

あの子の部屋で、ほくほくと引き出しから出された、卒業アルバムの原稿用紙。

──oh。

岩の上に座る一頭のライオンが描かれていた。

画材も絵の具ですらなく、カラーのマジックペン。

…どうしよう。

思うよ(遠い目)

遠足なんかで行ったりもしたけど、地元の動物公園には当時、ライオンは居なかったんだ。

背景的にもサバンナだし。

一気に説明しちゃったから、肝心の お題が伝わらなかったのかな。

あー…コレ僕が怒られるんだろうな…

また描き直しどうのと言われるだろうと覚悟して、担任に あの子の絵を提出。
結果──

うんともすんとも何も言われなかった。
受け取られて、終わり。

…何で?

モヤッとしたものを抱えたのは、言うまでもない。

余談だが、後日 卒業アルバムを受け取った時の担任から聞いた話。

どうも担任は私の描いた海の表紙の卒業アルバムを貰いたかったもよう。

「ラ○センみたい♪」

だとベタ褒めした校長先生に取られてしまったから、あの子のライオンの表紙を貰ったんだって。

…何で???

他にも何人も描いていた子は居たのに。それも、ちゃんと小学校の想い出っぽい絵をさ。

小学校の想い出どうしたよ。私、何の為に怒られたんよ。

モヤモヤッとしたのは、言うまでもない。
完成した卒業アルバムは郵送してくれるらしく、私の任務は終了した。

もう逢えないのかな…

なんて思ってた、春休みだったかな。
あの子から「公民館の演劇観に行こう」と、お誘いが有った。

やったー♪行く行くー♪✨!

嬉しくて 嬉しくて ルンルンで、あの子の地元の公民館まで追従したよね。

キャッキャと盛り上がる あの子と女子達を、ボケ~ッと遠巻きから眺めてた。

なんか、今時女子…

服装とかね、年頃キッズのファッション誌みたいで。
そういう目で見てたら、あの子も一昔前のダサい格好じゃなくて、お洒落な服装していて。
自分の服装を改めて見て思う。

──僕、ダッサいな。

あの子は楽しそうに大きな声で喋って笑って、友達出来て良かった、と 安心もしたんだけど…

遠くへ行ってしまったんだな(ホロリ)

感慨深かった。

もう、あの子に僕は必要無いんだ。

勝手に思い、最後の手紙で思いの丈をぶちまけた。
あの子には二度と逢わない、心に誓って。

返事も無いしね。

─小学校高学年・表─

女子連とは ただのクラスメイト程度の付き合いしか無かった、小学六年生。

一緒に遊んだり馬鹿するのは、男子達。
クラスの男子全員と友達だったんじゃないかな。

もれなく仲良くしていた男子の中から、好きな子も居た訳で。

背が高くって勉強出来てスポーツも出来る、眼鏡。

「この、メガネザル!」

言いたくなるよね。
実際 言ってたし。

「この、カバトンキュー!」

てね、言い返されてた。

カバにブタにキューだよ、キューって何だよ、酷くね(笑)?

ある時 近所のスーパーで、母親が500円のTシャツを買って来た。
白地に青の一色刷り。
リアルなライオンのプリント。

カッコイイ✨!

母親が選んだ物にしては珍しく気に入って、早速 学校に着て行った。

「おはよー♪…あれッ!?」
「うおッ!?」

何とね、全く同じTシャツをメガネザルが着ていたんだよ。

「うっわ、最悪ー…」
「それはこっちの台詞だよ…」

なんて言い合ったけど、予期せぬペアルックは嬉しかった。

洗濯された洋服は、タンスの引き出しに収納される。
必然的に、新しく着て洗濯されたライオンのTシャツは、衣類の上に置かれる訳で。
特に何も考えずに、手に触れたTシャツを着て学校へ行った。

「おはよー♪…また!?」
「うッ!?」

なんとね、ペアルックが再発した。

文句は言うけど嬉しいよね。
それも、一度や二度では済まなかった。
1ヶ月間3日おきに必ずペアルック。

多分メガネザルの家庭と、洗濯頻度が同じだったんでしょうね。

「やーい、やーい!」

なんて、周りの男子から茶化されるのも、怒りながらも嬉しいもんで。

あんまり多発するもんだから、洗濯物畳みの お手伝い中に考えた。

嫌だったら、着ないよな…

3日おきだと気付いてからは、あえてサイクルを崩さないように、洗濯物を仕舞う順番を正してみたり、自分で洗濯してみたり。

ひと夏 丸っとライオンTシャツ ヘビロテ、メガネザルとペアルック出来てルンルンだったんだな。

そんなこんなで秋口。

徐々にサイクルが合わなくなってきた。
ライオンTシャツで登校して、メガネザルが違う洋服着てると残念に思ってしまう。

あーあ。やっぱり嫌だったんだな、ペアルック…

ある時、メガネザルに言われた。

「そのTシャツ、まだ着てんの?寒いじゃん」

──ハッ!!!

秋の衣替えの近くTシャツ一枚では肌寒い、ていうか、寒い。

私は半袖、メガネザルは長袖の洋服を着ていた。

年中 半ズボンの奴に言われたかないよ。

と 思ったのは、内緒だ。

だけどまぁ、ペアルックが嫌だから着なくなったんじゃないんだと分かって、ホッとしたよ。

メガネザルとは家の往来はしなかったけど、公園なんかで他の男子連中と一緒に良く遊んだ。

「今日 学校終わったら、一緒に遊ぼうぜ!」

わーい♪!

私は当時、素直じゃない短気な あまのじゃく だったもんで、決まって誘ってくれるのはメガネザルの方だった。

公園の遊具で遊んだり、私物の縄跳びやボールを持って行ったり。

とにかく走り回って ぶつけ合って 馬鹿やって、楽しかったな。
公園の円形に配置された木馬的な遊具で遊んでいた時の事。

椅子取りゲームみたいなルールだったかな。
順番にお題を提示して、やった事なら木馬に座る、的な感じ。

もちろん、小学生なんで浮かぶ お題も お馬鹿なもので。

「今日起きてから、おしっこ と う○こ、同時にやった奴!」

「ハイ!」

バッと返事して、木馬に座った、私。

………あれ?

周りを見渡すと、座っているのは私だけで、他の連中は体育座りで待機したまま。
そして、呆れたようにメガネザルに言われたんだ。

「おしっこ と う○こ、同時に出来るかよ」

──ハッ!!!

これはね、衝撃的な言葉だったんだ。私にとっては。
最近は座ったまま用を足す男子も増えてるっぽいけど、普通男子はさ、立ったまま おしっこ出来るじゃない。

私はさ、座って おしっこ しないと、トイレが大変な事になっちゃうんだよ。

当たり前の事なんだが…なんて言うかな、衝撃的だったんだよ。

私はさ、やっぱり彼らとは違う生き物なんだ、て。

納得いかない。

その後、私のボールで遊んでいる間も、釈然としたものを抱えたまま。
みんなで楽しく遊んでいるはずなのに、仲間外れにされた気分だったんだ。

ボールが私に待って来て、受け取った時。

──面白くない。

私はボールをパスせずに、後方へ投げ捨てた。

癇癪が起きてしまったんだ。

誤記
釈然とした ✕ → 釈然としない ○

「○○!? おーい!! ボール、ボール!」

ボールなんか要らない。

私は無言で きびすを返し、皆が呼びかけるのも無視して、家に向かって歩き出した。
そのまま、帰っちゃったんだ。

何でだろね、たまに自分でも よく分かんない行動をしてしまう子だったんだよね。
自制心の低い短気だったからかな。

家に帰って独りモヤモヤッとしていた、数時間後。

♫ピンポーン

インターホンが鳴った。
当時は居留守なんか使わない子だったんで、直接 玄関を開いた。

──えッ!?

玄関先に居たのは、メガネザル(と、仲良し男子数名)。

家の往来してなかったんだよ。
表札目印に方方 探したんじゃないかな。

「これ、ボール。それと…ゴメン」

ええッ!? 僕、謝られるような事されてないけど!!

むしろ謝らねばいかんのは自分の方…だったんだが、素直じゃないから言葉にならなくて。

「それだけ、じゃ!」

せっかく家まで来たんだから、上がって行く?って…
言えなかった、当時の私orz

無言でボールを受け取って、玄関閉めて呆然とした。

…嬉しい。

ひえぇッ自分の事なのに、甘酸っぱぁい(震)

またねぇ、メガネザルの照れた はにかんだ顔が可愛くてねぇ。

好き、に なっちゃうよね。

頭の中だけ お花畑 状態。

という想いであったんだが。
まぁ、翌日からも 以前と変わらず、遊んで馬鹿して。
学級にメガネザルと成績を二分していた秀才の男子とも仲良しで。

秋口くらいだったかな、メガネザルから遊びに誘われなくなっちゃった。

これにはね、理由が有って。

メガネザルと秀才君の二人は、難関の中高一貫 私立の お受験が迫っていたんだ。

ラストスパートに遊ぶ時間も惜しんで勉強してた。

あーあ、同じ中学行きたいなぁ…

なんて思っても、私立なんて行ける財勢でも無ければ、何より…頭が無い(号泣)!

見事、メガネザルも秀才君も合格して、私とは別の中学に進学して行った。
こればっかりは仕方ないよね。進路だもの。

小学校を卒業した、春休み。

私は、便せんと封筒を用意した。
ヘッタクソな文字で書いたは、ラブレター。

内容は毎度の如く覚えちゃおらんのだが、でっかい文字の想いの丈で、一枚二枚 便せん埋めたんだな。

そして、最後に数行残った余白…

恥ずかしいぃいい~(悶絶)!

最後の最後で恥ずかしくなっちゃって、あまのじゃくな自分が ひょっこりと、顔を出した。
書きなぐった一節。

LOVE じゃなくて、LIKE なの!

ええ、僅かに知っていた英単語で「恋愛ではなく、友達として好きなんだ」的なニュアンスを乗せちゃったんだよね(遠い目)

しばらく待ってみたけど、当然、返事なんか無く。

中学違うから、わざわざ遊ぶ程でも無く、終了したんだな。

⑤に続く──

─おまけ─成人式

当時は二十歳だった成人の日。

会場の公民館には、地域から招待された同い年の人達が雁首揃える。

私の世代は かなりな人数でね。

──わーお。

人人人人、人の頭。

ゆえあって 振袖ではなく、上下スーツで赴いた、金髪の私。
めっちゃ浮いてた。

違う、それは置いといて。
若干だけど、メガネザルに逢えるかも…なんて期待で辺りをキョロキョロ。

「○○!? 久しぶり!!」

突然、見知らぬイケメンに声を掛けられた。

──どちら様ですか??

こんなイケメンなのに、覚えが無い。
マジで誰だか分かんなかった。

「ほら、小学校一緒だった…」

名前を聞いて、漸く分かった。
秀才君、だったんだよね。

言われてみれば面影残ってるんだが、例えるなら羽○結弦氏。
確かに昔も面立の整ったキツネ顔だったな。

ほおぉ、こんなイケメンに育つんだ~…

なんて、別の関心しちゃったけど。
秀才君がいるということは、メガネザルも居る筈。

「メガネザルも一緒だったりする?」

「うん、一緒一緒。あっちに居る」

指差された方を見れば少し離れた所に、女の子に囲まれ頭一つ高い、大人になったメガネザル。

「──変わってねぇ(爆笑)!」

思わず言っちゃったよ。
秀才君がイケメンに育ち過ぎてたんだよ。

…喋ったのかですって?
恥ずかしくって話し掛けられませんでした(泣)

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