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バント成功とその後のイニングの展開

『バントを1球で決めると流れが良くなるとかよく聞くけど、ホントにそうなんかな🤔
何球目で決めたかでその後の得点変わるのかな。そういったデータないかな。』

こんな呟きを発見したので軽く検証してみようと思う。

・検証対象
 2016~2017年度のNPB全投球・打席結果(※個人集計の為集計ミスを含む可能性あり)
・検証方法
 条件に該当する打席からイニング終了までに何得点が記録されたかを集計し、期待値を算出する。あるいはその成功・失敗、得点が入った・入らなかった、から確率・割合を計算する。

また、今回の検証で得た数値の落とし穴を最後に追記する。注意されたし。

⓪ そもそも統計的に見るバントという戦術は?

 バントの有効性の議論の際に基本的に使われるのが得点期待値。これは、「●死××塁の場面でその打席からイニング終了までに何得点が期待できるか」を示す期待値で、この場合、
1)無死一塁からバントを成功させ一死二塁にした:0.6664 - 0.7944 =  -0.1280
2)無死一二塁からバントで二死二三塁にした:1.2994 - 1.3771 = -0.0777
のように計算し、プラスならチームの得点増に貢献したと解釈できる。
 つまり、得点期待値という観点から言えばバントが「良し」とされることはまずない。

 次に得点確率。こちらも期待値と似たような形で使える。注目していただきたいのは、無死一二塁→一死二三塁の場合。得点確率が上がっている。他にも「三塁に走者を進める」ということでアウトカウントが増えても「得点が入る確率はそんなに下がらない」ということも確認することができ、三塁に走者を進める効果というものを窺うことができる。

 これらに加え、
「イニングは?」
「攻撃は表か裏か?」
「投手の質は?」
「打者の質は?」
などにより議論を深めることができる。(例:先攻チームの得点差別勝率)

 それでは本題。まずは読者諸君を多少焦らすために少々条件がズレているあたりから検証をしていく。(真っ先にこの条件付けで計算してしまったからとも言う)

① 打席に立ってからすぐにバントをした方がよいのか?

 投球数別で集計すると0.1点程度、得点確率では10%程度の差が見られる。しかし、まあ、初球にバントしようが2球目にバントしようが3球目にバントしようが4球目にバントしようが8割がたは0点か1点しか入らず、2点以上の確率分布を見てもデータ数の少なさによる数値の上下程度に見えるので、もう少しデータが増えれば一定の値に収束するのではないかと推測する。

② ストライクカウントが若いうちにバントをした方が
良いのか?

 検証①では、「そもそもバントするには相応しくないボール球がカウントが若いうちに投げられた場合」なんてものを無視しているため、今度はストライクカウント別に集計してみた。
 得点期待値・バント成功率の両観点から、やはり「2ストライク目からバントはやめといたら?」という感じ。カウントが若い方が打者にも余裕があるのでしょうか、成功率が良いのも窺える。

試しにカウント別に成功率を計算したところ、ボールカウントが増えるごとに成功率が上がるのが窺える(※3-0からのバント試行数は2)。それは守備側に「四球を与えるくらいならバントさせて1アウト貰おう」という意図が働くのではないかと推測する。しかし、バントしやすいコースへの投球ならスイングしても打ちやすいのではないだろうかと愚考する。

③ バントは1回で決めた方が良いのか?

 では最後に、本noteを書くに至ったツイートの本意だろう分析を行う。「打席内で何球バントを試みて、バントが成功したか」はその後の得点に影響を与えるのだろうか。

 まずは、バントの構えをしたがボール球だったためバットを引いた、といったケースも含めて集計を行った。これは検証①同様に「有意な差はないだろう」と考える。守備側の「バントしてきそうだから1球外すわね」という様子見には、「結局カウントを悪くして被打率・被バント成功率を高めるくらいなら最初からバントさせたら?」という結論とさせていただく。

 次に、投球がボール判定ではなかった場合(※犠打成功もしくは2ストライク目までの見逃し・空振り・ファウル判定)のみに絞った集計を行った。試行回数別には0.1~0.2点程度の期待値の上下が窺える。この差については、何故そうなるのか筆者には思い当たるフシが無いため、実際にプレーをしている方々に考えていただき、何かこの差を実感した経験などあれば、是非是非コメントやツイッターへのリプライをお願いしたい。

結論。

 本noteの検証結果においては、

「バントを1球で決めると流れが良くなる」なんてことはない

という結論にしたいと思う。いつ決めても、どう決めても、バントはバントである。打席に立った際に、バントを指示されてしまった打者諸君には、

「何回失敗しても、その打席内でバントを決めさえすればええんやで」

「でも2ストライクにはしない方がええで☆」

とまとめて、送る言葉とする(上手い)。
ご読了ありがとうございました。

落とし穴。

 検証②でも話題としたが、バントに失敗は付き物である。本noteではバント成功時の得点期待値を計算している。実際には成功率はチーム単位だと年間で70~90%程度であり、さらにピッチャー前に転がしてゲッツーなどのリスクを考えればさらに期待値は下がることにご注意いただきたい。

筆者
有希っこ(https://twitter.com/YUKI_tigers0626)
阪神ファン。地元が北海道の為、日ハムも気になる。

主な分析参考元(50音順)
1.02 - Essence of Baseball:http://1point02.jp/op/index.aspx
FanGraphs Sabermetrics Library:http://www.fangraphs.com/library/
プロ野球 - スポーツナビ:https://baseball.yahoo.co.jp/npb/