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『低温物理実験技法』

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物性物理学の実験研究の現場で必要な低温実験技術をまとめたものです。ここで低温とは、液体ヘリウムや液体窒素を用いて到達する(日常で使う低温より)非常に低い温度で、物理学の研究活動で… もっと読む
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記事一覧

『低温物理実験技法』:はじめに

この一連のノートは、物性物理学の実験研究の現場で必要な低温実験技術をまとめたものです。こ…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§0.寒剤の種類

 寒剤としては、低温で液化する(すなわち、沸点が低温にある)ものが使用できる[2]。ここで…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§1.真空ポンプ

 真空ポンプは、極低温冷却装置(クライオスタット)の真空断熱層の真空引きやサンプル層の排…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§2.ヘリウムのリークチェック法

§2―1. ヘリウムリークディテクター  ヘリウムディテクターは、真空中のヘリウム分圧の変…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§3.  冷凍機の種類

 温度を冷やす冷凍機(クライオスタット)には、液体N2と液体Heを用いるものがある。液体N2は…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§4.極低温

 1Kより低温は、前述のような液体ヘリウム(4He)を用いるだけでは達成が難しい[1,2,3,6]。非…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§5.超伝導マグネットの技術

§5―1. イントロダクション  超伝導マグネットは、通常の電磁石で必要になるkWからMWレベルの大電力を使わずに強い磁場を発生させられる[1]。大抵の場合、超伝導マグネットに必要な寒剤の費用は、常伝導システムを動かす電力の費用よりも随分安い。  超伝導マグネットにはいろんなタイプがあるが、典型的なのはソレノイド型かスプリットペア型(2つのコイルが横に並んでいるタイプ)である。ソレノイド型はスプリットペア型よりも、シンプルで安価に作ることができる。また、磁場の均一度を高くで

『低温物理実験技法』§6.寒剤のトランスファー

 液体窒素と液体ヘリウムは性質が大きく異なるため、保存やトランスファーの方法が異なる[1]…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§7.クライオスタットの配線

 測定される物理量は電気信号として取り出すことが多いので、クライオスタット内に導線(ワイ…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§8.液化機の原理

 液化機を自作したり研究室で保有することは少ないが、その原理を知ることは、無冷媒型の冷凍…

yukishiomi
5年前

『低温物理実験技法』§9.接着剤

§9-1. はんだ  回路配線用のヤニ入りはんだは、加熱によりヤニが炭化し金属にこびりつ…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§10.温度計測

 温度を測定する際に重要なことは、測定される試料と温度計との間の温度差を最小にすることで…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§11.無冷媒型の冷凍機

 断熱技術と冷凍機性能の向上に伴い、冷凍機の応用範囲が拡大している。無冷媒型の装置は操作…

yukishiomi
5年前
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『低温物理実験技法』§12. SQUID

 SQUID(superconducting quantum interferometric device、 超伝導量子干渉計)は、ジョセフソン接合を利用した測定素子であり、高感度な磁化測定に用いられる。5 aT(5 x 10^-18 T)もの小さい磁場を計測可能と言われている。近年、SERFと呼ばれる手法が寒剤なしにSQUIDを超える感度を有するという報告があったが、零磁場付近でしか利用できないなどの問題がある。SQUIDは世界最高感度の磁場センサーとして現在広く普及してい