大学生の教養 奨学金地獄

※この文章は岩岡佳治氏著の『「奨学金」地獄』に基づいて記述しています。

突然ですがみなさんは奨学金についてどのようなイメージをお持ちですか?私は「家庭の金銭的負担を軽減してくれるありがたい制度」「進路選択の幅を広げるサポートシステム」のような印象を持っていました。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)のホームページには、経済的理由で修学が困難な優れた学生に学資の貸与を行い、また、経済・社会情勢等を踏まえ、学生等が安心して学べるよう、「貸与」または「給付」する制度です。とあります。しかし高校で説明が十分にされないことや、親世代と現在では奨学金システムが大きく異なっているため、奨学金の返済に関するトラブルが後を絶えないと言います。そこで、奨学金についての基礎知識を今一度確認しようと思います。

奨学金には「給付型」「貸与型」の二種類があります。奨学金を打ち出している団体は数多くありますが、その中でも代表的なのが日本学生支援機構です。給付型では最大毎月75,800円の支援に加え、場合によっては授業料の減免も受けられます。貸与型は第一種(無利子)と第二種(有利子)があります。第一種では最大毎月64,000円、4年間で約300万円を借りることができます。この場合最長18年返済となり、卒業後毎月14,222円ずつ返していくことになります。第二種では毎月の振り込み額を3、5、8、12万の中から選べます。仮に月12万を借りたとすると4年で576万、最長20年返済で月24,000円ですが、年3%の利息が加わるので更に返済額が上がります。

問題視されているのは第二種です。そもそも国が大学進学を支援するというのに利子をつけるのはおかしな話です。諸外国の奨学金のほとんどが給付型であり、日本は世界的にも学費が高めな国であるにも関わらず支援が手薄いのが現状です。第一種の奨学金を申請しても審査に通らず、止むを得ず第二種を申請する家庭も多いそうです。ここ数年で給付型奨学金を増やす取り組みが広がり以前と比べて受け入れが拡大したとはいえ、まだまだ十分とは言えません。

岩岡佳治氏の『「奨学金」地獄』を読み、奨学金を返済するために風俗で働く人がいること、病気になって返済ができない状況になっても機構から冷徹な督促状が届くこと、返済の延滞、減免制度の手続きは煩雑で機構は手助けしてくれないことなど様々な衝撃的事実を知りました。中でも印象的だった記述に「入口は奨学金、出口は金融」という言葉があります。昔の日本育英会時代は「教員になったら奨学金免除」を始め、比較的良心的な制度でした。しかし、2004年に日本学生支援機構が運営母体となってからは奨学金の有利子化、回収の強化など、本来の目的である進学支援とは裏腹に金融事業化が激しく進みました。そのため、現在のシステムと社会の奨学金に対するイメージの乖離が起こってしまったのです。高校の教師が育英会時代のイメージのまま奨学金を勧めてしまい、生徒は深く考えずに借りて後に返済に苦しむケースが容易に想像できます。

高卒では就職が難しくなり大学進学が半ば義務化してきた中、全ての学生が大学に行く選択肢を得られるように奨学金制度の見直しが今後も必要です。就職難航、事故、留年などで奨学金を返済できなくなる可能性は誰にでもあります。そこで冷たく突き放す現在の日本学生支援機構の姿勢は見直されるべきであり、相談窓口の拡大、親世代に向けて正しい奨学金制度の知識の拡散、取り立てを激しくしないことが求められると思います。また、これから奨学金を受け取る私たちも正しい知識を得ること、貸与型を利用する場合は返済の義務を負っていることを理解して借りることが大切です。この『「奨学金」地獄』という本は非常に分かりやすかったので大学1年生を始め関心のある方は是非読んでみてください。

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