見出し画像

「会社が好きか」より「会社で働く自分が好きか」が重要

会社選びを失敗したかもしれない。絶望したのは内定式の後だ。

入社予定の会社には、おとなしくて真面目な社員が多いと思っていた。ベンチャー気質だけど、真面目な社風なら自分にも合うと思ったのだ。実際に面談する社員はみな真面目そうな方ばかりだった。でも内定式後の懇親会で、わたしは誤解していたと気付く。全体的にチャラいのだ。

懇親会はクラブのように大音量の音楽が流れる薄暗い会場で、社員たちがギュウギュウになってお酒を飲んでいた。先輩たちの出し物が終わると、社長は先輩たちにお酒を飲ませた。そのあと役員や部長など偉い人がお酒を飲まされると、会場は大盛り上がり。社長もだいぶ飲まされたのか、締めの挨拶はフラフラしながら私たち内定者にお祝いの言葉を述べた。会場は笑とともに、大きな拍手に包まれた。気持ち悪いぐらいに1つになって。

社長がパーティー好きなのを、この時初めて知った。度々クラブのような場所で集まりが催される事実も。わたしは人見知りで口下手で、不器用だった。だから周りのように楽しそうに出来ないし、上手く会話にも入れない。楽しいふりすらまともに出来ない。わたし、この会社にあわないかも。内定者時代、わたしは完全に絶望していた。

入社してから1年は、ずっと会社が嫌いだった。仕事は営業アシスタントとして雑用のような仕事が多く、周りからバカにされているような気がしていた。会社の人とは極力関わりたくなかったので、休日のイベント参加は本当に最悪の気分だった。体育会系のノリも嫌、会社の弱点も嫌、同期の飲み会も嫌、仕事も嫌……あの時はまさに、大人のイヤイヤ期だった。

ただ3年目以降、イヤイヤ期は突然終わる。あんなに嫌いだった残業や休日の業務外イベントも、「仕方ないか~~」と受け入れられるようになった。休日の集まりや飲み会にもできるだけ参加しだした。仕事でも、他人の仕事を手伝ったり自分から仕事を作り出した。1年目の時には考えられない、会社の立派な社員になっていた。

会社を好きになったわけではなかった。入社時からある欠点は、今もさほど変わらず残っている。苦手な先輩もゆるせない内情も、ゆるい会社の風土も、特に変わってはいなかった。

それでも、会社で働く自分に自信を持ち始めていた。若輩者のわたしでもたくさんの仕事ができるし、かなり自由度が高い。実際は人手不足で任せざるを得ないのが正しいかもしれない。ただ人から任せてもらえる環境はものすごくありがたく、そんな環境で頑張って働く自分が誇らしかった。あんなに大嫌いな職場だったのに、いまでは自分の居場所のように感じている。

「『誰を好きか』より『誰といるときの自分が好きか』が重要」と、いま話題の蒼井優が言ったらしい。会社も同じだ。本当に大嫌いな会社だった。転職を考えた回数は数えられないほどだ。今だって心から好きではない。でも、会社で頑張っている自分は好きだ。部署を超えて多くの人と関わりながら、ちょっと正直すぎる発言もして、周りと支え合いながら仕事をしているわたしが結構好きなのだ。

嫌いだけど、もう少しこの場所で働いてみたい。もうちょっと、もうちょっとだけね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?