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「女性にやさしい会社」の罠

「やさしい」だけが、本当のやさしさではない。

通っていた女子大で、学内の就活説明会に参加していたときの話だ。説明会に参加する企業の中に、ある有名な大手自動車メーカーがいた。ペーパードライバー歴2年だったわたしは車に興味はなかったものの、せっかくなのでと思ってブースに腰を下ろした。大手企業の説明はスケールがでかく、聞いていて楽しい傾向がある。自動車メーカーと言えば日本を代表する産業、どんな仕事ができるのか期待をしていた。

ところが、説明をはじめてから約5分して大きな違和感があった。この自動車メーカーの説明会には、ある大事なものが完全に抜けている。「仕事内容」だ。説明の半分以上が経過しているのに、いまだに入社したらどんな仕事をするのか、どんな部署があるのか全く説明されていなかった。

結局企業からの15分説明は、一度も仕事内容が触れられずに終了した。わたしが仕事内容の質問をしなければ、組織図すら見られずに説明会が終わってしまっていただろう。

仕事内容は、企業を決めるうえで非常に重要な指標だ。それなのにその大事な要素を無視して、一体何を話していたのか?実は、企業はある1つのテーマについて15分ずっと話していた。そのテーマが「女性にやさしい」だ。

いかにわが社が女性にやさしいか、育休取得率が〇〇%、女性社員の比率が〇〇%、子育てする女性がたくさん働いている、保育施設がある、女性でもちゃんと活躍している……など。会場が女子大であるのを意識したのか、説明は完全に「女性に優しい」一色の内容だった。

たしかに出産・子育てをしたい女性にとって、働きやすさは大切だ。女性だから評価されない、子育てがあるから重要な仕事ができないといった現状はあまりに理不尽だと思う。そんな苦しい環境に比べたら、15分ずっと「女性にやさしい」と話し続ける企業は、長く働くにはちょうどいい環境なのかもしれない。

ただ女性への「やさしさ」だけを押し出して、仕事内容を全く説明しない態度は本当にやさしさなのか?と思ってしまう。むしろ「うちは大手のブランド力があって安定してるし、『女性にやさしい』といえば女子就活生も魅かれるでしょ?」と下に見られているような気もした。

結局あの自動車メーカーは今年大きな事件があり、数週間ニュースで取り上げ続けられた。入社した女性たちも、さぞかし苦労したに違いない。きっと仕事も結婚も、やさしいだけじゃ物足りないのかもなぁ。。。

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