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満員電車は年間120万円の価値がある

嫌われ者の満員電車が、唯一輝ける場所を知っているだろうか。

満員電車は、誰からも嫌われる朝の厄介者だ。一説によると、身内が亡くなる以上のストレスが通勤ラッシュにはあるといわれている。毎日のっていても、なかなかあの重圧には耐えられない。知らない他人同士の生暖かい体で押しつぶされる。身動き1つ取れず、ちょっと動ける場所ならラッキー♪とすら思うくらいだ。フレックス制でも2階建て電車でもなんでもいいから、一刻も早く通勤ラッシュをなくしてほしいと願う人は多いだろう。

そんな満員電車が誰かに必要とされるなんて、想像できないかもしれない。ただある朝、わたしは気づいてしまった。この耐え難い重圧を存分に生かせる場所が1つ、とっても身近にあるじゃないか!その場所とは、わたしだ。いま記事を書いているわたし自身だ。肩や首、腕、背中、腰……身体のあらゆる部位であの強烈な力を求めていた。

もちろん、わたしが変態的なフェチを持っているわけではない。毎日パソコン業務をする人や夜遅くまで仕事する人、疲れている人も同じ気持ちを味わえる。ここまで言えばお気づきかもしれない。そう、マッサージだ。あの乗客が重なって生み出す強いパワーを、どうにかしてマッサージに活かせないだろうかといつも考えているのだ。

お店でマッサージをしてもらえば、30分5,000円程度はかかる。でもそれを払ってでも味わいたいのが、マッサージ師の力強いほぐしだ。マッサージ師が手や指で力を入れ、ぐぐっ~と凝った体をほぐしていく瞬間は至福の時だ。あの食い込む心地よさは、決してマッサージの機械では生み出せない。そのため30分5,000円が高いな~~と思っても、あの気持ちよさを求めてついついマッサージに通ってしまうのだ。

もし満員電車の圧力をマッサージに活かせるのなら、わたしはもうマッサージに行かなくてもよくなる。あれだけ強さを凝った身体にあてられればどんなにいいか。地獄の通勤ラッシュが、30分で5,000円の価値にかわるのだから。そして平日に毎朝マッサージが味わえるとなれば、1か月で5,000円×20=10万円の価値、1年で120万円、5年で600万になる!そう考えれば、通勤ラッシュには夢のような潜在価値にあふれているのだ。

ただ問題なのは、通勤ラッシュの強さをどう生かすかだ。まず考案したのは、凝りが気になる場所へツボ押しのような突起を服の中に仕込んでおく方法だ。

その状態で満員電車に乗れば、重圧が自然とマッサージになる。ただ危険なのは、力加減が一切できない点だ。もし当たり所が悪く、あまりにも強い重圧がその突起にかかってしまっても、「力を弱めてください」なんて言葉は誰も聞いてくれない。気持ちよさを通り越して痛みになり、最悪の場合には流血騒ぎになる。不測の事態を考えると、この方法は危険だ。

次に、電車の手すりに気になる部分を押し当てに行く方法を考えた。例えば肩こりが気になるなら、肩を手すりの角に当てる。たったそれだけだ。

特別な道具は不要で、当たる場所は自分で調整できる。しかも重圧がつらいときは回避もしやすい。ただ満員電車では手すりのある端は倍率が高く、なかなかたどり着けない。しかもしっくりくる場所を探すためにモゾモゾしていたら周りに迷惑をかけるし、痴漢扱いされる可能性もある。背の高さによってはなかなかちょうどいい角が見つからず、ただの不審者で終わってしまうかもしれない。この方法も危険だ。

結局、わたしは満員電車のパワーを生かしたマッサージ方法を生み出せていない。満員電車のマッサージ構想は、まだまだ夢の中にある。

明日もまた満員電車に乗り込む。毎日が戦いだ。でもいつか電車内でマッサージの癒しが味わえるよう、明日もどうすれば力を活かせるのか考えながらどうにか乗車したい。

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