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尊大なカマキリと臆病な人間

わたしは道端のゴミが怖い。なぜならよく見ると“ゴミ”じゃないときがあるから。セミや鳥の死骸だったり、グロテスクな虫だったりする。だから道端に”何か”が落ちているのを見ると、ドキッとしてしまう。

今日、マンションの階段に”何か”がいた。茶色っぽくて細長いカマキリだった。手のひらから少しはみ出るくらいの大きさで、完全に油断していたわたしはビクッとしてしまった。

カマキリは階段の中央に居座って一切動こうとしない。非常に邪魔だったけど、触りたくはない。だからカマキリの近くに、軽く音を立てるように足を踏み出してみた。それでもピクリともせず、こちらをにらみつける。うちわでも持っていれば思い切り風を吹かせたかったけど、手元に何もなかった。仕方なく壁に沿うようにカマキリを避けて階段を上がっていった。傍から見れば非常に滑稽だっただろう。

カマキリゾーンを通り抜けてから思った。カマキリ目線で考えたら、とんでもない事件が起きていたんじゃないか。たまたま休んでいた場所に巨大な物体が現れ、自分の近くに大きな棒(足)をドスンとやられた。それでも逃げずに待つ選択にかけ、どうにか命の危機を乗り越えたのだ。

わたしは自分よりはるかに小さなカマキリにビビっていたのに、カマキリは巨大な人間相手に恐れず立ち向かっていた。すごい……!山月記の一節を真似るなら「尊大なカマキリと臆病な人間」といったところだろうか。

巨大だろうと矮小だろうと、最後に勝つのは自信や度胸があるものなんだろう。きっとそこには人間も動物も関係ない。わたしももっと自信つけないとな……と思った有意義な月曜日だった。

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