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自分を傷つけないと、ことばで人の心を動かせない

ネットの恋愛記事はとにかく無難だ。恋愛は人それぞれの価値観が反映する多種多様な出来事なので、恋愛記事は多くの人に共感されるために「まあそうだよな〜」とうなずける無難な内容を書く。最後にいかがでしたか?と聞かれても困るくらい、ありがちなノウハウが並んでいる。暇つぶしとして読むのは楽しいけど、ネットの恋愛記事で覚えているものは全然ない。スラスラと文字が心の中をスワイプされていく。

今朝のニュースはジャニーさんの追悼一色だった。どの番組をみてもマッチやシブがき隊、SMAP、嵐の曲が流れている。そしてジャニーさんのすごさと、ジャニーさんとのエピソードを語るアイドルの映像と、アイドルたちの追悼コメントが流れていく。最初に訃報を聞いたときは驚いたけど、3番組くらいみるともう十分だった。キムタクの追悼文も亀梨のエピソードも、全然頭に入らなかった。

ただ、TOKIOの長瀬は違った。長瀬がジャニーさんに向けた追悼文をご存じだろうか?長瀬のまっすぐな純粋さがこめられた、とても印象に残る追悼文だ。

あなたは少年のような心を持った男でした。僕はあなたから教えてもらった遊び心とプロ意識でここまでやって来れた気がします。僕が音楽や作品にここまで情熱的になれたのも、あなたの作品や表現者に対する情熱を見てきたからこそだと思います。
ありきたりな言葉を言ったらつまらないと言うような男だとわかってるので僕なりに言わせていただきますが、あなたは最高です。最高以外の言葉が見つかりません。ジャニーさんはカッコ良すぎるのでたぶん地獄行きです。僕も地獄を目指している男なのでまた地獄で会いましょう。それまでゆっくりお休みください
長瀬智也「ジャニーさんはカッコ良すぎるのでたぶん地獄行き。また地獄で会いましょう」…ジャニー氏追悼コメント

「地獄行き」だなんて、遠くへ行く人に言っちゃいけない。順調に生きていた10代のわたしでさえ、地獄に行った死後を考えて暗い気持ちになった。詩の世界はまっくらの未知の世界で、生きている間でも不安なのだから、追悼文は穏やかなことばを選ぶのが普通だ。

でも長瀬はあえて「地獄」というワードを使って、周りと一味違ういたわり方をした。少し過激なことばだからこそ、ジャニーさんへの尊敬と愛情が伝わってくる。芸能人だとイメージやしがらみでなかなか言いたいことも言えず、特にジャニーズのようなアイドルならなおさらだろう。そんな中で地獄のメッセージを送った長瀬はすごい。リスクを背負っておくったことばには、誰よりも愛情と尊敬が込められていると感じた。

傷つく覚悟がことばのうまみを増す

傷つくリスクがなければ、ことばに魅力が生まれない。少年サンデーや女性セブンの創刊に携わった豊田きいちさんの著書『編集』で、こんなことばがある。

誰にも恨まれない評論というのは、本当の評論ではない。自分が傷つかない文章は、本当の文章ではない(P207 )

スキがほしくて書いた文章は、読む人にすり寄って書いている。恋愛記事みたいに、多分これならわかるかな~なんて無難な線を狙っていく。自分も誰も傷つかないけど、誰の心にもしるしを残せない。ササ~~ッとスワイプされて流れていってしまう。

でも自分が傷つく、傷つく覚悟をして書いた文章にはやっぱり力があって、とても面白い。noteを読んでいていい文章はたくさんあるけど、中でもここまでするの?!と思うほど赤裸々に自分の感情を書き綴られた文章は強い。泣きそうになりながら、気づくと最後まで読んでいる。自分に傷をつけて、誰かの心に記しを残している。

長瀬もアイドルの自分に傷をつける覚悟をもって、一風変わった追悼文を披露したのだろう。(何も考えてなかったかもしれないけど笑)人と違う方向に進むのは勇気がいる。でも思い切ってやり遂げると、誰かのこころに引っかかることばを生み出せるはずだ。

自分の話が嫌いなわたしは、会社でも積極的におしゃべりはしないし、気を抜くとnoteですら無難なことばばかりをツラツラ書いてしまう。傷つく覚悟が全然できていない。ただ幸い?にも、最近仕事でミスが重なりすぎて落ち込んでおり、周りの人全員が自分より仕事ができるような気がしていた。すべての面倒事を投げ出したいと思っており、ずーーんと暗い感情を抱きながらPCに向き合っている。仕事ではピンチでも、noteではチャンスかもしれない。せっかくなので自分が傷つく覚悟で、書きたくないと思う出来事を書いてみよう。これ以上トラブルが増えない程度に……涙

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