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エネルギーの未来とは

近年、地球温暖化問題を背景に、グローバルで脱炭素化が本格的に始まっています。今まで、石炭・石油を中心としたエネルギー産業の構造が大きく変化する潮流が不可逆です。
そこで今回、(Plug and Play Japan)の Energy Director を勤めるKathy Liuが「エネルギー分野のイノベーションとその発展」をテーマにお話いたしました。
(本内容は2021年9月3日に開催したSummer/Fall2021 Summit内のEnergy Batch 1 EXPO内で実施したKeynote Sessionの内容をもとに作成しています)

【登壇者プロフィール】
Kathy Liu
2012年に京都大学法学Ph.Dを取得後、三菱商事系コンサルティング戦略部門及び外資系コンサルティングのエネルギー部門を経て、2021年Plug and Play Japanに入社。エネルギー関連企業及び製造業を中心に、事業戦略立案、事業性評価、新規事業戦略、海外進出戦略に強みを持つ。エネルギー分野において、主にハイテクノロジーを活用した新規事業を中心に取り組んでいる。

ーーエネルギーと共に発展した人類の文明

Plug and Play Japanでは、2021年6月に新たなプログラムとして「Energy」を立ち上げました。このことがきっかけで私はPlug and Play Japanにジョインしました。私は、これまで10年弱、コンサルティング業界でエネルギー産業のキープレイヤーたちの中期計画、新規事業検討、子会社の立ち上げ等を支援してきました。
その中で、エネルギー分野における次のイノベーションは何か新規事業を効率よく推進していくための仕組みは何か、を常に考えていました。
Plug and Play Japanに参画することで、国内外スタートアップや、大手企業の皆さまと一緒に、改めてエネルギー産業のイノベーションについて考えていくと共に、私が大好きなエネルギー産業を支えて行きたいと考えています。
エネルギーの未来を考えるにあたり、エネルギーの歴史を振り返ることが大切です。エネルギーの進化は、人類の文明を導いていると言っても過言ではありません。
エネルギーの歴史の中で、産業革命など変革が起き、人類の発展に深い影響を及ぼしてきました。
まず最初に人間は火を発見し、燃やすという行為で知恵を授かりました。その知恵を使うことにより、生活が大きく変わりました。
その次の段階として、大きく文明が進化したのは第一次産業革命です。
第一次産業革命は、石炭の発見と安価な開発によりもたらされました。石炭の発見によって、機関車が現れ、人や物を大量に遠くへ運ぶことができるようになったのです。人間の移動範囲も広がったという点で大きな意味があります。
第一産業革命から100年が経ち、人間は石油を発見し、開発するようになりました。これが第二次産業革命です。人類はまた一歩大きな進化を遂げ、電気を利用したインフラの構築やと重化学工業などの産業が発展しました。技術の発展に伴い乗用車の普及が進み、より自由に移動や生活ができるようになりました。
このように歴史を振り返ると、エネルギーの大きなイノベーションと人間の文明の進化には相互関係があることがわかります。

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ーー次のエネルギーのイノベーションでは何が起こるのか?

では、次のイノベーションはいつ起こるのでしょうか?もう既に第二次産業革命から100年以上の時が経ちますが、現在もまだ石油や石炭が利用されています。
火や石炭、石油の発見から人々が豊かになってきた歴史や私自身の経験も振り返ると、人間のエネルギーに対する欲望が何であるのか明確にわかります。
使っても、使っても、溢れ出てくるエネルギー、どこでも、いつでも、使いたい時に使えるエネルギーが欲しいのです。また、環境の代償も、お金の代償も、なるべく払いたくありません。
私は、これは人間がエネルギーに対して究極的に求めている欲望だと考えています。
欲望があれば、イノベーションは必ず発生します。夢のような話で、実現できるのか懐疑的に思われる方もいますが、実は既にイノベーションは起きています。
例えば、太陽光風力を含めた再生可能エネルギーや分散型電源の普及によって、資源国と利用国という概念はなくなるでしょう。また、再生可能エネルギーの限界費用ゼロによって、再生可能エネルギー由来のグリーン水素やグリーン燃料などの新産業も立ち上がるでしょう。まさに、今、100年前と同じような産業革命のインパクトが起きています。
さらにデジタル技術と掛け合わさることで、モビリティーを含めた産業全体が変化していき、これまでの生活様式では考えられない、私たちの想像を超えるイノベーションが現れるはずです。
2050年までには、以下3つのキーワードに沿って、イノベーションが発生すると考えます。

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「脱炭素化」「分散化」「デジタル化」については、2010年前後からすで、に各国で取り組みが始まっています。
まず再生可能エネルギーがより広範囲に普及することは確実です。再生可能エネルギーは幅広く普及することでコストが大きく抑えられ、グリーンエネルギーを生産することができ、グリーンエネルギー産業はさらに飛躍していくでしょう。非電力の分野で脱炭素が進んでいくことに加え、蓄電技術もより成長していくことが考えられます。
先進国や一部の新興国などでは、今まで使用してきたインフラが老朽化するタイミングで、都市の形も変わってくるはずです。特に地方都市では、少子化によってインフラのコンパクト化やスリム化が進んでいきます。
今後は屋根の上のソーラーパネルやEVなど、多様なエネルギー源が生み出されていき、それに伴い複数の異なるエネルギー源を制御するデジタル技術も必要となるので、進化していくはずです。
その結果2050年には原価費用0かつ安定供給可能な再生エネルギーの世界的な普及によって、安価なグリーン燃料の実現、エネルギーの地産地消という新しい構造に変わっていくのではないでしょうか。

ーー電力分野、非電力分野で起こるイノベーション

電力分野では電源として再生可能エネルギーや分散型電源が増えており、今後も電化比率が増えていくことは確実です。
ここで大事なことはエネルギーのサプライチェーン機能が全体としても形としても変わっていくことです。特に機能はさらに高度化する必要がありで、デジタル技術やデジタルトランスフォーメーション(DX)が必ず必要になります。
これまで非電力分野は、化石資源で大きく支えてきた、規模産業需要化の石油精製、鉄鋼、ケミカル等の分野では、CO2フリー水素、メタネーション、合成燃料、カーボンリサイクルなどの新しい技術がイノベーションとして必要になっていくと考えられます。
実際に、世界中のエネルギー分野のスタートアップは、すでに、この2つの分野を取り組んでいます。

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例えば、2010年時点ではエネルギー分野の国内外スタートアップのうち、デジタル分野に着手している企業は20%前後に留まっていました。しかし、2020年には50%を超えるほどに増加しています。特に先進国を除いた新興国のスタートアップでは64%近くまで高まっています。
一方でクリーンエネルギー分野のスタートアップについては、そこまで割合が変わっていないように見受けられます。
しかし、40%のスタートアップは、水素やメタネーションなどさまざまなクリーンエネルギー分野を2010年時点から10年以上取り組んできて、現在に至ります。

あと30年、どのような、私たちが、今時点で考えられないイノベーションを発生するでしょう。Energy産業を変えていくチャレンジャーたち、今日はイノベーションストーリーを楽しみにしております。

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