猫とマウス

12月9日マウスの誕生日に

 マウスが好きだ。パソコンで絵を描く道具としてマウスを使っている。

マウスと出会ったのは1988年

 私が初めてパソコン画面に絵を描いた時は、マウスも付いていなければお絵かきソフトも付いていないコンピュータで、Basicでプログラムとして画面に点を表示するコマンドを使って描いていた。ついでにモニタが表示できる色数は8色だった。はじめは円とか線などの図形を描いていただけだったのだが、そのうち今で言うドット絵みたいな絵を2パターン描いて交互に描画させて2コマアニメにしてみたり、陰影を表現するにはどうしたらいいか考えて面積あたりの光の当たり具合を計算してそれを点の密度の濃淡にして立体物を描いてみたりした。どれも結構な行数のプログラムになって、達成感はかなりなものだった。
 そんな時代だったので、マウスとの出会いは劇的だった。大学の研究室にMacintoshIIがやってきたのだ。まず画面が白い!明るい! それまで使っていたパソコンの画面は基本真っ黒でそこに文字が光って表示されるのに、新しく来たヤツはやけに明るい。そういえば紙に絵を描く時の紙はだいたい白いことが多いんだから、あんな感じなのね?と思ったものだ。デスクトップ、フォルダ、ファイル、ゴミ箱という事務作業をする環境になぞらえて操作できるというのも新鮮で面白かった。そして、その操作を行なうのがマウス。今までコマンドを入力しないと描けなかった線がマウスをグリグリするだけで自由に描けてしまう、素晴らしい道具だ。
 当時MacintoshにはHyperCardというソフトが付いていたので、教育学部の学生だった私はマウスをグリグリして教育ソフトを作った。作っただけでは意味がないので、中学生を借りてきてこのソフトを使って授業をした。まだファミコンがようやく浸透してきた頃だったので、ほとんどの中学生がマウスを使うのが初めてだった。「ネズミに似てるからマウスっていうんですよ」とぶら下げて見せて「こうやって操作します」と一度見せるだけで、全ての生徒がすんなり操作して作ったソフトを最後までやりきってくれた。よく考えたら一時限40分、移動とビフォアアフタのアンケート記入も合わせるとたった20〜25分程度の時間しかないのに、すぐ直感で使えてしまうのもすごいことだと後から思った。

紆余曲折あってもマウスを使い続ける

 マウスとの出会いから一年、私はMacintoshの雑誌の編集部にいた。そして今度はペンタブレットと出会う。ペンタブレットはさらに鉛筆のように描ける道具だった。が、しかし、器用に細部まで描けてしまうが故に計算が働くというか、打算が生じるというか、描きたいものが直に出てこないように感じてマウスに戻ってしまった。後に絵本作家さんの講演で「自分に気づかれないうちに線を描く」というのを聞いたり、高名な画家さんがフォトコラージュ作品を作るときに操作のしやすさに作品が左右されないためにオペレーターの人に操作してもらっていると聞き。私がマウスを使い続けるのも似た気持ちがあるなぁと思ったりした。
 さらに、編集部にいると色んなMacintoshを見る機会があり、同じ形のマウスでも産地によって中身の材質が違ったりして、描きやすいものと描きにくいものがあることがわかった。中のコロコロ動くボールが金属のものより樹脂の方が軽くて疲れにくかったのだ。このマウスの描きやすさ問題はこの後もマウスが変わるたびに付いて回った。角ばったマウスから卵型になった時は少し重心が後ろになって扱いにくかったし、まん丸のマウスになった時は動かす方向が回ってしまって困ることがあった。ボールから赤外線に変わった時はマウスの下に敷くものによって反応が変わるので快適に使えるマウスパッドを探すことになった。また、少し前の単三電池を入れるタイプのマウスは重くて手首が痛くなったけれど、充電式になって軽くなったので、今は比較的描きやすい。右手手首のところにマウスだこがある。マウスを動かすときに支点としている部分だ。そのぶん指のペンだこはほとんどなくなっている。マウスだこの部分は仕事が混んでくるとよく使うので痛くなる。なるべく長時間マウスだこが痛くならないマウスが手に馴染む良いマウスだ。

ところで、今年、マウスの誕生日が登録された。12月9日、50年前1968年の今日誕生したらしい。なんと、前述のMacintoshの雑誌の当時の編集長が登録したと知らせてくれた。とすると、私がマウスと出会う20年前にはすでに誕生していたということだ。このマウスと私の30年間のエピソードをマウスの50歳の誕生日に贈りたい。
大好きなマウスに愛を込めて「Happy Birthday!」

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