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稜線フォトアルバム2023

 登山の記憶に残る風景といえば、稜線だ。稜線とは、山の峰から峰へと結ぶ線のこと。 

 私が「山へ行きたい」という気持ちとともに妄想するのは、森林限界を超えて、パッと視界が開けたときに出逢ってしまう、その一本道だ。

 山頂へ延びる、うねうねした道。
 まるで生き物のようだと思うし、光と影の織り成す世界が、かっこよくもあり、ちょっと色っぽい。

 山肌を沿うように延びている一本線が目に飛び込んできた瞬間、どんなに疲れていても、暑かったり寒かったりしていても、「今日、山に来てよかったなぁ」と思ってしまう。

 そんな威力が、稜線にはある。

 稜線好きにはたまらない、稜線だけを集めたフォトページがあってもいいなと思った。そこで、今年歩いた山で撮影した写真を集めてみた。楽しんでもらえたら嬉しいです。


徳島|剣山


剣山から見る次郎笈じろうきゅう


 剣山は、四国・徳島にある。標高1955mでありながら、リフトで標高1700m地点まで一気に上がることができる。そこから山頂までは、標準タイムで50分ほど。

 短時間で、迫力のある稜線歩きを楽しめるので、初心者でも挑戦しやすい、人気の百名山だ。(むしろ、登山口まで1時間山道を運転しなければならないので、そのほうが大変かも。)

2023年11月 撮影


 もっとしっかり歩きたい方は、三嶺みうねから剣山までの1泊2日登山がおすすめ。稜線歩きが存分に楽しめる縦走路がある。

 私は秋にこの縦走路を歩いたのだけれど、「晴れていてよかった」と、何度安堵したことか。
 
 途中、無人の避難小屋があるので、そこで寝泊まりすることができる。少し離れたところに水が流れているところがあり、そこで水を汲むこともできる。食料や寝袋を持参する必要があるので、山でのテント泊のスキルは必要。

山肌に沿って、山道が伸びている


滋賀|霊仙山


開放感のあるさんぽ道


 鈴鹿山脈の最北に位置するのは、霊仙山りょうぜんざんだ。標高1084mで、眺望がよい。標高が1000mちょっとで、この絶景を堪能できる山は、なかなか無い。日帰りで十分に楽しめる。ほんと、近くていい山。

2023年11月 撮影


兵庫|鉢伏山


お手軽に高原歩きを楽しむ

 
 冬季はスキー場になるのだという鉢伏山はちぶせやま。標高は1221m。兵庫県の小学生たちの郊外学習場所としても利用されているそうだ。

 氷ノ山の方面から、鉢伏山に向かって伸びる縦走路(ブン廻しコースという)があり、その途中で、芝がきれいに整えられた稜線を歩くことができる。ちょうど秋に訪れたときは、ススキが一面に広がっていて、わさわさと揺れていた。

 手軽に高原歩きを楽しみたいときは、鉢伏山のみがおすすめ。総距離5.8kmを、およそ2時間20分ほどで楽しめる。

2023年10月 撮影
遠くに見える山が鉢伏山


長野県|北穂高岳


ごつごつと、切れたった稜線を眺める


 稜線とは、山の峰から峰へと結ぶ線。なので、柔らかな線だけでなく、ごつごつした岩肌も、「稜線」ということになる。

 こうした「岩稜」を楽しめる山域の一つが、北アルプス。中でも、穂高連峰といわれる山脈は、切れたった山道を歩くことができる。

 北穂高岳の山頂直下にある北穂高小屋からは、大キレットと呼ばれる岩稜と、その奥に槍ヶ岳を見ることができる。山の朝焼け(モルゲンロート)は、息を呑む光景だ。

大キレットと槍ヶ岳
2023年8月 撮影
岩稜ある、北穂高のテント場


滋賀|大谷山


寒風から大谷山に向かって伸びる稜線

 滋賀県の北部にある赤坂山(標高823m)は、とても歩きやすく、眺望の良い山だ。そこから栗柄峠を越えて、寒風と呼ばれる地点に進む。さらにその奥にも道が伸びていて、大谷山(標高813m)のほうへ視線を向けてみる。

 視界を遮るものが、なにもない。

 私が山を歩いたこの日は、道脇に無造作に生えている植物に、朝日がやさしく降り注いでいた。こんなに穏やかな世界があるのかと、心が震えた瞬間だった。

 麓の景色も見える。山から町を眺められるだけで、なぜか安心感が胸に広がっていた。


大谷山へ延びる道
2023年5月 撮影


滋賀|蓬莱山


雪に埋もれて、生まれた稜線


 最後に、雪景色をお届けしようと思う。滋賀県にある比良ひら山系は、最高峰が標高1214mでありながらも、冬になると積雪量が多くなる。

 
なので、身近でこんなに遊べる雪山があるという、とても贅沢でありがたいお山なのだ。

 訪れたのは、電車で登山口までアクセスが可能な蓬莱山。標高は1174mだ。

 2月の頃は、雪がばっちりあり、道にはラッセルの跡が。この写真は、蓬莱山の山頂へと続く道中なのだけれど、本来の登山道はどこかに埋もれてしまい、わからない。それが、きれいな稜線を作ってくれていた。

 積雪によりルートの自由度が高くなる、雪山ならではの景色だった。


2023年2月 撮影


 ひと言で稜線といっても、その姿は十人十色。その姿の背景には、自然の営み、歴史が詰まっている。そして、数え切れないくらいの登山者たちの踏み跡がある。
 
 私も、その内のひとり。
 
 心地よさを思う存分味わいながら、その一歩一歩を踏み締めている。


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