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優しさを表現できるか

https://voicy.jp/channel/2511/589419

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

今日は「優しさを表現できるか」というテーマで短くお話ししたいと思います。

あなたは、優しさを表現することは得意ですか?そもそも、その優しさって、どうやって表現しますか?どうでしょう?

優しさは、顔の表情や身振り手振り、身体の姿勢、そして言葉などで表現するでしょう。また、単に言葉と言っても、その発音のイントネーションだったり、言葉と言葉の間だったり、色々な言語表現の工夫があります。

僕は、東京にも、東京以外の関東圏にも、そして地方にも住んだことがあります。そんな経験を元に、この優しさの表現を考えてみると、住んでいる地域によって明らかに優しさの表現に差があります。

ただ、地域ごとに個人的な付き合いをしてみると、みなさん、優しいんですね。この地域に住んでいると性格が優しいとか、優しくないとか、そんなことではなくて、優しさの表現の質に明らかに地域差がある、ということです。個性を差別をしたいわけではありません。ただ、日本語によるコミュニケーションの質が明らかに地域差を見せる、ということなんです。

例えば、東京に比べて、明らかに地方の方のほうが、日本語で優しさを表現することが上手と思います。「おもてなしの心」を表現することが得意とも言えるかもしれません。おそらくこの「おもてなしの心」は、日本独自の文化と思います。でも、その日本独自の文化が地域差を見せている、ということです。

つまり、「おもてなしの心」の表現の質が、地方ではまだ保たれているけれど、都心部ではずいぶん変わってきている、ということです。そう感じるのは、僕だけではないと思います。

その原因はというと、これまでの時代では都心への異文化の流入や忙しい生活があるでしょう。特に英語圏の文化などを中心に、どんどん海外の文化が都会に入ってきました。その影響により、日本の文化が変化するスピードが早かったんだろうと思います。また、忙しい生活の中で、心の余裕が失われやすい側面も確実にあります。

でも、これからの時代では、地方も明らかに変わってくるでしょう。今はインターネットによって、異文化に触れる機会は増えました。住んでいる地域がどこであろうと、インターネットを通していつでも海外の文化や情報に触れられます。話す様子も、日本語的な抑揚の付け方とは違う話し方に慣れてしまうかもしれません。

つまり、これからの時代は地方でもより一層、おもてなしの心の表現方法が変わる可能性があるということです。日本の文化を意識しなければ、どんどん無意識のうちに優しさの表現が変わるでしょう。本当は優しいけれど、その優しさを表現する方法が少しずつ変わっていく。あまり意識されないことかもしれませんが、小児科医としては、言語による優しさの表現の違いを意識しておくことは大切なことと思っています。

もちろん、海外の文化を否定するつもりはありません。ただ、日本語が変わっていくことへの意識は持っておく必要があると思っています。日本語で育つ子どもたちが、日本語で優しさを柔軟に表現できること。そして、日本語で育児をする親が、日本語で柔軟に優しさを表現できるか。そのことが、日本語圏での子どもの生きやすさを変えるんです。

今日は「優しさを表現できるか」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。

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