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「非モテオフ会」の誤解と実態

初めに

 去る2024年3月2日(土)、私は念願の「非モテオフ会」に参加してきた。現場で体感した、会の意義や素晴らしさを伝えるべく、そしてネット上に流れている会への邪推や誤解を解くために、レポートを書くことにした。

 主催は、"孤立してしまう人"のエンパワメントを理念に日々情報を発信し、イベントの紹介や開催もしておられる元井さん。参加要項やこれまで開催された内容については元井さんのnoteをぜひお読みいただきたい。

 私の参加した「第15回非モテオフ会」も従来通り元井さんがTwitter(自称X)上で参加者を募り、男性5名、女性は私を含めて4名が集まった。

実態① 営利目的の会ではない

 会はレンタルスペースを利用し、雑費もかかるため参加費はもちろん無料ではない。
 多少は主催者の懐が潤う仕組みにはなっているものの(企画や準備、調整をしているんだから当たり前だ)、情報商材購入の案内・カウンセリングや占いへの勧誘は無かった。
 唯一の宣伝らしい発言は
「来月はね、たくさん集まってメシ食ってボドゲとかして遊ぶ大規模なオフ会もやります。楽しいよ」
といったもの。元井さんは別途営利活動もされているが、だからと言って短絡的に非モテオフ会を"利益に繋げるためのビジネス臭のする会"と思うのは完全なる誤解である。

実態② 男性と女性とでは参加条件が異なる

 これもよく知らない人からしばしば誤解されていた。男性は「これまで交際経験が無い人(会における"非モテ"の定義)」が参加条件だが、女性側の条件は「非モテ男性に対して悪意が無く、話をしてもよい人」である。非モテか否か、恋人や配偶者の有無については問われない。

 そしてこの「話をしてもよい」という部分に関して、最も大きな誤解があるようだ。

実態③ 合コンでも"無料キャバクラ"でもない

 会が始まると、用意された飲み物とお茶菓子を楽しみながら、各々の恋愛や人間関係における悩みや苦しい経験、取り組んできたこと、非モテ観などについて1人ずつ順番に語る。
 ワイワイと会話をするわけではない。誰かが話している間は、軽い相づち以外は決して口を挟まず最後まで静かに真面目に聞くのがルールだ。
 そのためもちろん、合コンでもない。"そういう目"で見ないことを条件に参加しているし、「趣味は◯◯で〜す、仲良くしてくださ〜い」「どうしたら彼女できますかね〜!?」なんて話題も出ない。そういう会を希望する人もいると思うが、非モテオフ会にそのようなノリは無かった。

 実態を知らない人が"無料キャバクラ"だなんて揶揄しているのも聞いたことがある。優しい女性が非モテ男性の話をウンウンって聞いて「かっこいいから自信持ちなよ〜!」「こうしたらモテるよ〜!」なんてチヤホヤヨイショしている想像でもしてしまうのだろうか。概要だけでそう早合点しているのかもしれないが、それも無い。
 悩み相談や、会話の練習をする場でも、肯定的なリアクションを浴びて自信をつける場でもない。女性参加者も、褒めやケア的な関わり方など一切する必要が無い。

 時折、参加経験者間で過干渉やハラスメントの様子が見られたり、異性間トラブルが暴露されたりすることがあるため、非モテオフ会自体が不健全な関係の温床のような誤印象がついているのかもしれない。しかしそれらはあくまでも個人間に起きた問題であり、会の性質が発生を助長しているのではない。
 トラブルメイカーはどんなコミュニティでも独特な距離感で人付き合いをしがちで、それが過去の非モテオフ会の参加経験者にもいたというだけだ。
 大多数の良識ある各回参加者の名誉のためにもきっぱりと否定する。女性参加者が"話し相手をさせられる"または"経験を積む相手としてあてがわれる"ような運営はされていない。

実態④ 安全な自己開示の場である

 では、何のために集まる会なのか。当日のレポートに戻る。話すのに割り振られた持ち時間は1人あたり15分(参加者数によっては20分らしい)。非モテにまつわる自分の話をひととおり語り終えると質疑応答タイムとなり、話した内容や平素の考え方などについて他の参加者から問いかけがあり、それに答える。
 この時も、アドバイス禁止・攻撃的な発言は禁止とされている。敬意とデリカシーをもって、穏やかにやり取りを重ねた。
 もちろん元井さんも、非モテ男性たちに向かって演説をぶち講釈を垂れるなどということはしていない。参加者が話しやすいよう、ルールの徹底をリマインドしつつ静かに聞いて、優しい質問を投げかけていた。

 この通り、社交を目的とした場ではなく、自分のことを語り、人の話を聞き、互いの立場の解像度を上げる、相互理解に努めるための場だ。
 非モテオフ会に参加する最大の意義はここにあると私は思っている。
 人に打ち明けにくいことを正直に話して、それを嘲笑も上から目線の助言もされず、ただ受け止めてもらえる。安全が保証されているので、自己開示に羞恥や劣等感が伴わない。
 "仲間"の素直な自己開示に触れて、自分の苦しみが減るわけではないけれど、人それぞれに想像の及ばないような苦しみがあることを実感をもって知る。

 傷付きや苦しさについて自分のペースで話せて、それを温かく一生懸命に聞いてくれる人がいる場。見栄も自虐も無い、他者の生の声や本音を聞ける場。それは日常生活で、特に非モテ諸兄にとっては得難いものだろう。
 何らかのコミュニティに参加して、そこで友人知人を得ることは出来よう。しかし、そこで知り合った人たちと腹を割って過去の恥や苦い経験、悩み事を話し合えるかと言うと、よほどの信頼関係が築けない限り無理だろう。

実態⑤ 男性参加者が得られるもの

 非モテオフ会では、それができる。邪魔も入らないし、こんな話どう思われるかななんて気に病む必要も無い、そんな場が用意されている。

「普通は話せないことを洗いざらい話せた。女性からキモがられたり引かれたりしないどころか、真面目に聞いてもらえて、新鮮な感動を覚える有意義な時間だった」

「ネットで非モテの友人と愚痴って慰め合っていたせいで女性嫌悪になりかけていたが、優しい世界もあると知れて良かった」

「見下されたりアドバイスされたりするのが嫌で誰にも打ち明けられないことが話せた。それをしてもいい場なんて無かったから、参加して良かった」

「非モテという"罪と罰"を、背負わなくていいものだと思えるようになった」

 これらは私が、非モテオフ会に参加したことのある男性たちから聞いた感想だ。
 参加した途端に何かが変わるわけではない。しかし確実に彼らの中に、前を向く心強い温もりが芽生えている。
 ただ話し、ただ聞く。それだけの会なのに、経た後には確かな所属感が得られ、コンプレックスや人に対する物怖じからほんの少し解放されているようだ。

終わりに

 非モテが非モテでなくなるためには、人に好印象を与えつつ信頼を築く必要がある。良い印象を抱かれるのは必ずしも明るくて楽しい人や、善良な正しい人だけというわけでもない。
「自分とよく向き合っていて、人の話を聞く姿勢がある」、これが人付き合いにおいて信頼を生む根幹であると私は考えているのだが、非モテオフ会はまさにそれを体現できる場なのだ。

 また、参加後に"同期たち"との繋がりを保つのは、個々人の自主性に任されている。深い悩みや有意義な時間を共有した皆とは、お互いに進捗をシェアして時には称え、時には思考整理に付き合い、うまくいかない時は支え合える伴走者になれる。
 恋愛目的や出会いを期待して集まったわけではないから、そういった意味での緊張感や気兼ねの無いフラットな人付き合いができて、健全に女性慣れもできる。
 そうした中で得た安心感や自信を胸に新たな挑戦をしてみたり、また別のコミュニティで良い人間関係を築けたりと、参加経験者からの喜ばしい報告は多い。


 私も、彼らの良き伴走者になりたい。勇気を出して非モテオフ会に参加しようと1歩を踏み出した友の、日々の取り組みや努力を心から応援している。


おしまい

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