忘れてやらね一
バレエで工夫を閃いたらかけられた凍てつくような
「ズルしないで」
「こふゆちゃんは褒められるのになんであなたは呼ばれないの」
と言われた時の改装前の駅ビル
「ひとり親はだめな子です」
壇上の副校長から放たれた春の気温
家庭訪問時の鉛のような空気
「クラスで一番心配です」
12年踊った矢先に投げられた
「なにも計画性がない」
「なんだその目つきは」
「そんな簡単じゃないのにできるの」
合宿で褒めてくれてありがとうの次の瞬間
「なにそれ笑覚えてない」
早慶の学生だった自分の自慢ばかりするダサい教師
毎日飛び込みを計画して泣いた戸塚駅三番線
いつかバスからみた知らない女の子が絶望して歩いてる様子
それが完全に自分だと気づいた瞬間の小石のような僕
いつどこにも属せぬ孤独の眼の色
忘れてやらね
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?