帰る場所があるということ

年に数回、長野県へ行く。上田市と松本市。とは言っても、上田へは行かない年もあるし、松本へ行くようになったのは今年からだ。上田へは池袋から、松本へは新宿からバスに乗っていく。電車よりバスが良い。バスに乗っていると窓の外の景色が毎分変わっていく。住み慣れた街を離れ、旅へ出る。それがより一層感じられて好きなのだ。本のページを捲ったり、軽食を食べたり、溜まったメールの返信をしたり、うつらうつらとしたり。気付くと窓の外は見覚えのある景色になっている。また、この大好きな街へ戻ってきた。

「おかえりなさい」

そう声をかけられると、ふっと笑ってしまう。帰ってきたのではなく、訪れているのに、おかえりなさいと言ってくる。なんだか、くすぐったくて照れくさくて、笑いながら「ただいま、、?」と返す。ふふふ、変なの。ふたりで笑いながら、また会えたこと、この大好きな街へ帰って来た喜びを噛みしめる。

この街は、わたしの帰る場所なんだ。いつだって、帰って来て良い場所なんだ。そう思ったら、胸の奥がきゅーっと苦しくなった。目頭が熱い。「おかえり」って、すごく安心する。ひとつ、居場所が増えた、そんな感覚。わたしの帰りを、会えることを、待ってくれているひとがいる。すごく有り難くて温かくて幸せなこと。

東京へ帰ったら「おかえりなさい」と言ってくれる家族と友人が待っている。わたしも、彼女たちが東京へ帰ってくるのを「おかえりなさい」の準備を万端にして、心待ちにしていよう。ここもまた、わたしの帰る場所で、彼女たちの帰る場所なのだ。

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ユリ

『しあわせの瞬間』 日常のちいちゃな幸せを見逃さず、心と身体で感じ、言葉にしていたい。日々のこと、読んだ本のこと、美しい物もののこと。
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