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【オツカイ・フォー・コーヒー・パートワン】

【オツカイ・フォー・コーヒー・パートワン】フロム 【ハウ・キュート・マイ・キャット・イズ】 シリーズ!

【ハウ・キュート・マイ・キャット・イズ】 シリーズ とは:
yulou_headzによるニンジャスレイヤー二次創作、つまりテキストカラテのカテゴリーの一つ。グラスキャットのカワイイなワンシーン、日常風景、観察日記、彼女が愛用するヘッドホン端末のデータの一部など。ショートムービーめいた記録。文体は忍殺に準ずるものから箇条書きまで様々である。

春先、某日。グラスキャットは、ネオサイタマから離れた郊外の無人駅、「ヒサメ駅」へ向かう電車に揺られていた。ヒノモト・ワークショップからの依頼で「ユウダチ・ジルシのグリーン・プラント」を訪ねることになったのだ。

なんでも、コーヒーの品質が素晴らしかったため、ヒノモトがなんらかの資金提供、または技術提供……つまるところパトロンである……をしたいと言い出したのだ。無論出し惜しみはしないと言う。(((まあそれはそれとして豆を買いに来たんだけど)))

(((ウーン、技術提供……一番ウマイ淹れ方の研究とか、あとは……品質向上のための……土壌とか、水の質……日照時間……温度……)))グラスキャットは座席の端で思案した。(((猫、いるのかな。チャツボみたいな看板猫)))

師匠であるイズミはコーヒーをいつも飲んでいた。何処か遠くのコーヒー豆を鼻歌とともにローストし、更に挽き、そこから沸騰させた何処か遠くの水で蒸らし、抽出して、鼻歌とともに飲むのだ。凝っていた。鼻歌はあまり上手くなかった。

時々ケーキを買ったりしては共に嗜んだものだが、もうイズミが亡くなってから数年経つ。グラスキャットはそれなりに探しはしたものの同じコーヒーを見つけることは出来ず、グラスキャットはそのうち、探している間に見つけたロースト・チャを飲むようになった。ホットでもアイスでも美味い。

……見つからないと諦めてはいるものの、コーヒーの話になるとどうしても思い出す。それほどまでにイズミの飲んでいたコーヒーは香り高く、美味だった。そしてヒノモトが気に入ったコーヒーの香りと味は……よく似ている。思い出せば思い出すほど、似ているのだ。「フーム……」

あらためてヒノモトに紹介されたIRCを見直す。『丹精込めて育てています』『暮らしに一息』『利益度外視』そこには少し粗い画質の、ビニールハウスが並んだ写真と、「ツユ」と「シグレ」という愛嬌たっぷりの……祖母と孫娘、といった雰囲気の写真、それから「ユウダチ・ジルシのコーヒー豆」と手書きで書かれたシンプルなパッケージが載っていた。

『ヒサメ、ヒサメ……お降りの際は……』「ゲッ」グラスキャットは慌てて立ち上がり、足早に駅へ降りた。年季の入った、簡素な駅だ。線路の向こう側では、バイオスズメらしき鳥が畑でなにか啄んでいる。階段を通り、待合室と改札だけの駅構内から駅前に出ると、少し整備された小さなロータリーが見えた。

「サイバーモード、マップオン、集音モードオン」『重点!』サイバーサングラスを展開し、事前に指定していた地図を投影して道を確認する。「こっちかな」グラスキャットが振り向いた先には、ややサイバーな作業着に身を包んだ若い女性が立っていた。笑顔で手(サイバネだが女性らしいデザインだ)を振っている。『ニンジャソウル検知な』

グラスキャットは躊躇ったが、敵意のなさを確認し、歩み寄った。髪に淡い緑と水色のネオンケーブルを編み込み、ポニーテールにしている。「ドーモ、お待ちしてました!『ユウダチ・ジルシのグリーン・プラント』のユウダチ・シグレ、またはサンシャワーです!」「ドーモ、グラスキャットです。ニンジャだったんだ」「ハイ、あまり戦いはしないんですが」

「もしかして、わざわざお迎えに?」グラスキャットは尋ねた。「そうです、せっかくなので!ヒノモト=サンからお話は伺ってます、うちのコーヒー豆、すごく気に入っていただけたと!うれしいです」サンシャワーはオレンジ色のサイバネアイを輝かせた。人好きのする表情、仕草。グラスキャットは安心し、微笑んだ。

「じゃあ、詳しい話は後にして、向かいましょう!」「今日はヨロシクオネガイシマス!」グラスキャットは一礼し、弾むように進んでいくサンシャワーの後に続いた。爽やかな風が吹き、近くの家屋からコーヒーの香りを運んだ。

【オツカイ・フォー・コーヒー・パートワン】
終わり。おそらくパートツーに続く

唸りながら書いていました。難しい。
コーヒーの香りが好きです。☕️

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