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猫たちが会話できたなら

おやすみなさい。温かくして寝ましょうね。

猫たちが寝床を変える。寝相が面白くなる。今猫がこんな気持ちだなとなんとなくわかるような気がするのです。
「あなたの望みがあなたの居場所でわかりますよ」
猫相手にそんな自慢をしたくなります。

人間は猫の行動で猫の気持ちを読み取ろうとします。実際に読み取れることもあります。

一方で猫同士はどうでしょうか。猫は猫の気持ちがわかるでしょうか。もっと言えば、猫は猫と会話できるのでしょうか。

私は、猫は猫と会話ができないと思います。
そう感じるようになった具体的な事例があるのです。

うちには2匹の猫がいます。三毛猫のセミ猫は2年前の子猫の時から家にいます。たまに脱走しますが、野良生活がほとんどなかったので、他の猫との付き合い方がわからないまま育ってしまったのでしょう。

3ヶ月前に庭に迷い込んできた麦わら柄のトンボ猫が我が家に加わって、しばらくは随分と警戒した様子でした。攻撃したり喧嘩したりという事はなかったのです。ただ、いまだにくっついて一緒に寝るような事はありません。

トンボ猫は避妊手術がしてあったので、以前にも人間のおうちで飼われていたかもしれません。しかし、野良生活が長かったんじゃないかと思われるような行動も見られるので、それまでの生き方はよく解りません。

ただ順応性が高いようで、セミ猫の行動をよく観察して真似しています。

例えば、数日粗相をしていたものの、今ではトイレの使い方はセミ猫よりも丁寧です。
しかし、セミ猫の真似の仕方がちょっと残念なのです。

最近はほとんどやらない日が多いですが、セミ猫はトイレの大をスコップにいれてくれます。それは、人間のトイレ掃除を手伝ってくれる意図があるのだと思います。初めて見たときに感動して、なでまくって褒めてあげたのがとてもうれしかったのかもしれません。それから頻繁にやるようになりました。セミ猫は人間を喜ばせることが好きなのです。

トンボ猫も猫用トイレの端っこの定位置に立ててあるスコップを一生懸命トイレをした後に砂と一緒に引っ掻いています。小した時も大をした時も、砂の上にスコップが転がっています。

そうじゃないんですよね。セミ猫は失敗する時もありますが、大の時だけスコップにブツを入れてくれるのです。それは人間への気遣いであって、一刻も早くトイレを掃除してほしいというアピールでもあります。

猫同士で会話ができたら、「ちがうよ。トイレを済ませた後に砂の上にスコップをおけばいいんじゃなくて、ブツをスコップの中に入れなきゃいけないんだよ」とセミ猫がトンボ猫に教えてあげられたでしょう。

しかし、猫は猫同士で会話ができないので、よくわからないまま相手の行動を真似するしかないのです。その行動をどんな気持ちで相手がやっているかということも、人間ほど猫同士は理解することができません。

トンボ猫は人間に対してよく頭突きをしてきます。また、甘噛みもします。しかしうちの家族はセミ猫も含めて乱暴な行為を好まないのです。セミ猫はしつこいほど追いかけっこを止めません。しかしどんなにはしゃいでいても、猫同士の取っ組み合いの相撲というのはやったことがない上にやろうとも思わないのです。

人間も猫に甘噛みされるのは好みません。セミ猫はよく人間を舐めます。舌がじゃりじゃりして痛いので、大抵途中で止めてもらいます。それを見ているトンボ猫は舐めることと甘噛みの区別がついていないようです。
トンボ猫にも何回か舐められたことがあって、セミ猫ほど舌がじゃりじゃりしていなくて心地良かったのですが、そのままアマガミしてきたので、つい体を離してしまいました。

セミ猫の真似してトンボ猫も何度か膝に抱っこされに来ました。しかし、セミ猫のようにふわっと飛んでくるのではなく、爪を立てて膝によじ登ってこようとしたので痛かったのです。一応我慢しましたが、そんなことしょっちゅうされるわけにはいきません。爪が肌に食い込まないように分厚いズボンを履いてないと怪我をしてしまいます。
そろっと乗ってきてくれたこともありましたが、あまり寝心地が良くなかったようで、すぐにどこかに行ってしまいました。
セミ猫は寝心地が悪いと、人間に姿勢を変えてと要求します。転がったりくっついたり何度も立ち上がったりアピールするのです。

もしも猫同士で会話ができたなら、「人間をベッドとして使うなら、人間にもっとアピールしなきゃだめだよ」と教えることができたはずです。

しかし、実際にはトンボ猫はなぜセミ猫が好んで人間の膝に行くのかよくわからないままです。そうしておけば撫でてもらえて、おやつをもらえる率も上がるとわかっているのはまだセミ猫の方だけです。
人間の後を追いかけなくても、扉の前に座っていれば開けてもらえるし、ご飯の時間にならなくても、いつももらうご飯皿の前に座っていればいいし、おやつが欲しければ膝の上に乗ってアピールすればいいし、トイレを掃除してほしければ我慢して人間が来たときにトイレを使うんじゃなくて、トイレをした後一声鳴けばいいのです。
セミ猫は人間の使い方をよくわかっています。トンボ猫はまだまだわかっていません。だって先輩に教えてもらえないのですから。

そして、セミ猫より一生懸命人間の後をストーカーしているトンボ猫は、先輩にならって自分もいい思いをしようと今日も空回りしています。

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