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うちの猫はマタタビが嫌いである

猫を飼ったらやりたかったいろいろ


猫を飼ったら一通りのことをしてみたくなるものである。しかし、一足遅かった。子猫の時に我が家の庭に現れた弱弱しいセミ猫様であった。飼うのを決めないうちに、噛まれた傷の手当だ避妊手術だワクチンだノミダニの薬だと病院通いに忙しなかった。そうして、一足遅くなった。
見つけた時は青かった目も、写真に収める前に色が黄色く変わってしまった。乳歯の生え代わりは見つけた。しかし、猫が歯を飲み込んでしまうなんて知らないものだから、貴重な1本をまだ外にいて薄汚れた猫の何を食べているか分からないものだという気もして、人間と同じように窓から庭に投げて、ご丁寧に埋めてしまった。
子猫の足型もとりたかったけれど、墨汁と紙を買ってくるのが面倒で、とりわけ、猫がまだ足のあたりを触られるのを嫌がっていた時期だったから、引っ掻かれるのが怖くて取れないままだった。

おとなになって試せることは全部してみたいと思ってみても、もう1歳を過ぎると手もかからず、10年も一緒に暮らしている空気みたいな存在になって、人間の家族と同じようにあーしてやろうこーしてやろうというのは気持ちばかりになってしまった。

うちの猫はフレーメン反応をしない

うちのセミ猫は匂いをよく嗅ぐ。
猫全般そうだと言われるかもしれない。セミ猫は特にご飯についてそれが顕著で、刺身も食べなければ、魚を茹でて身をほぐして与えてもほとんど食べなかった。鰹節に至っては、匂いを嗅いで鼻息で蹴散らした。砂をかける仕草をして、見向きもしないのだ。煮干しの入ったキャットフードも食べないが、これは固いせいかもしれない。何せ子猫の頃はウェットフードすらほぐしてやらなければ食べにくいと訴えて鳴いていたくらいだ。1歳を過ぎた頃からほぐしてやるのを待たずに皿に顔を突っ込んでくるようになった。

布団に乗ってくるときも慎重で、ひょこりと顔を覗かせては毛布やかぶり布団に鼻先を近づけてふんふんとよく匂いを嗅ぐ。よほどこちらが臭いのかと弱気になる。布団を洗って干しても、やはりよく嗅ぐので嫌な臭いではないのだろうと思いたい。しかし、そうやって慎重に匂いを嗅いで布団に乗っても、やっぱりちょっと臭かったというみたいに、リビングのテーブルの下に行ったり、母から奪ったビーズクッションの寝床に戻るのである。

うちの家族はタバコを吸う人間がいる。たまにポケット灰皿をリビングの書斎机に置き去りにしていたりする。それを猫が机に乗って匂いを嗅ぐ。しかし、よくよくいつものように嗅がない。すんと小さく臭いを吸い、後は避けて見向きもしないのである。

嫌な臭いには近づかないというのが、セミ猫の鉄則である。いきなり鼻先をくっつけたりせず、匂いも一気に吸い込まないので、出来心で少し匂いの強いものを嗅がせようとした時も、ギャッと驚いて顔をしかめるようなことはしない。元々三毛で複雑な模様をしているから、顔をしかめても分からないのだろうというのは悪しからず。いくらつぶれ顔でも、口をゆがめたり半開きにすれば分かるはずだ。

猫なんだから、こっちがちょっと脅かす意思を見せた時には、大げさに驚いて見せるのがご愛敬ではないか。うちのセミ猫は、顔も怖いが可愛げもない。いや、可愛いけれども、それは多分、家族にだけ3割増しそう見える。

抱っこしようとしたら、喜ぶとか暴れて嫌がるとかそういうことはない。おとなしく抱えられて、すっと元居た場所に戻るのである。そして、振り返って「そういう気分じゃありませんので」という顔をする。静かに寝かせろというのである。早朝にはすりすり甘えて、しばらく顔の横に寝たりするのに、猫の決まった時間や気まぐれでしか触れ合えないなんて理不尽だ。庭に脱走しても、もうご飯の匂いには釣られない。遊びが優先で、飼い主を翻弄する。

マタタビは子猫の頃から避けていた

初めて100均で買ってあげた爪とぎはマタタビ付きであった。まだ外飼いしていた(庭に居ついて)頃で、庭木の方が爪を研ぐのによいのかと思っていた。ところが、懲りずに二つ目を勝ってきたら、そちらは喜んで使う。マタタビの袋をうっかり取り払っていた。そして、二つめが壊れてくると、元買ったものを使いだした。

最初はマタタビがついていたことも気づかなかったくらいだ。気づいてもそんなに猫が一般的にゴロゴロすると思っていなかったから、テレビでマタタビにゴロゴロする動物園のライオンを見て、うちに来た猫は面白い反応をしてくれなくて面白くないやつだなと猫にとっては理不尽な思いを抱いた。

私は最初家族が反対して飼う気もなかったしボール以外手作りしようと凝っていたくらいだから、猫の玩具はほとんど買わなかった。すると、不思議なもので、避妊手術が終わって猫を玄関先に入れると、猫を飼わないと言っていた家族の方が玩具を買いだす。手術後に外に出すのは可哀想という。人間は誰しも天邪鬼なものなのか。反動が大きくなるのか。

それで、マタタビの玩具が嫌いなこともほどなく判明した。嫌がるというより、触らない。避けて近づかない。近づけてもあわてて逃げはしないが、冷静にふんふん鼻先を近づけてすっとどこかに行ってしまうのである。それでも、1ヶ月くらいしたら、マタタビの匂いは消えるらしく、使ってはみてくれるが、そもそもクッションを抱っこする習慣がない。

父の足の先を近づけてもさっと避けていくので、ふわわアというあのフレーメン反応を見ることができない。元々しかめっ面のような三毛模様の鼻ぺちゃだから、フレーメン反応をしていても表情から読み取れないということはないはずだ。半開きの口になっていたら気づくだろう・・・多分。

まとわりつくのが嫌なのか、単純に匂いが嫌いか

マタタビは、蚊よけのために猫が体に擦りつけるという説があるらしい。
では、うちのセミ猫は蚊に刺されても気にしない性質だから、マタタビを体に付けようとしないのか。

判断がつかないが、そもそも子猫時代からあまり何かに潜りこむということをする性質ではなかった。猫が全般そうなのかもしれないが、毛並みを整えることに熱心でブラッシングが大好きである。身体を擦りつけるのはよくしている。そもそも人間の目につかないところで何かするということが少ないので、大体行動の予想もつく。かくれんぼをしてもご覧の有様で、コストコの大きな袋から見つかるように顔を出している。

ノミダニの薬も相当気持ち悪がっていた。ちょっとずつ値段の高いものに代わっていったくらいである。ご飯を食べるが吐くというのがどれほど体の負担になるか分からないのだが、気持ち悪いと意思表示するのだからしょうがない。付けられる時にはおとなしいのが寧ろ不思議だ。

それが匂いがするものを体につけるのが何か嫌だというくらいなら、うちの猫がマタタビを嫌いなのは好みというか、ただの我儘である。

真相は猫のみ知るところであるが、セミ猫様は匂いに相当こだわりが強いということは言えるだろう。

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