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「窓辺の猫」第四十七回 猫に媚びる

どうも、猫に媚を売る人間です。
猫たちに嫌われることを恐れています。
嫌いも好きも、猫たちは住環境さえ与えれば、不満など言わないわけですが、私が勝手に、あれこれ、これは猫に気に入らないんじゃないかと恐れているのです。

わが家の猫たちは「ダメ」という言葉を覚えています。
ダメと言われても、トンボ猫の盗み食いは止まりません。しかし以前よりはごはんを前に「ダメ」と言われたら一旦止まってみることが増えました。
セミ猫に至っては、「ダメ」と言われたらショックを受けます。別の場所に行ってふて寝するのです。常に人間の前で良い子でいたいセミ猫です。

トンボ猫が来てからセミ猫の手癖が悪くなったと家族は言います。
けれども、相変わらず飼い主がうっかり皿からこぼしてしまったご飯は拾い食いしません。後輩猫が扉をボロボロにしてしまっているのに、扉を壊さないように丁寧に扱います。

私や母が編み物をしていても邪魔しません。ほんの少しじゃれつくことがあるにはあります。しかし、完成まで待っています。完成したら自分のものだと思っているのは相変わらずです。

セミ猫があんまりしょんぼりするので、だめと言いたくありません。しかし、トンボ猫にダメと言うと、セミ猫が自分に言われたと勘違いしてショックを受けたりするのです。

セミ猫は具合が悪いと、自らケージに入って寝たりおとなしくしている印象です。
しかし、見た目にはおとなしく見えても体調が悪いとやはりイライラはしているようです。

先日、私がひょいと前触れもなく抱き上げたら、窓ガラスに映った自分を見て、外の猫と勘違いしてしまったようです。ぎゃーと鳴いて暴れて私の腕に傷がつきました。私を怪我させたことにセミ猫はショックを受けていました。1時間くらいは反省していました。
1時間後には膝に来ました。

窓ガラスなんて見慣れているはずなのに、どうして自分の姿を外の猫と間違えてしまったのでしょうか。猫は自己認識ができないそうです。しかし、蝉猫はテレビに写っている猫にうなり声をあげたりはしません。鳥が映っていると触ろうとします。

雨が降っている日でした。窓ガラスに歪んで映った自分の顔が、よっぽど恐ろしかったのでしょうか。私もそういう時はままあります。お風呂に入ると浴室の鏡に自分が写ってギョッとすることがあります。

セミ猫は私が猫に媚を売りたいタイミングもわかっています。そういう時を狙って膝に来ます。なかなか賢い猫様です。

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