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同人活動中断の前を語ってみると


ここからは同人関係の記事が減っていきます。

なぜ同人活動が続けられなくなったのかは次に譲るとして、コミケ初め同人関係にも新たな問題が発生してきました。


これらの問題や動きは同人活動をおえてからも続くのですが、活動そのものはしていませんでしたが、同人関係の情報は絶えず入ってきていましたし、自分も求められればできる限り協力するようにしていました。

また世の中の動きも大きなことが立て続きにありました。
どれが先でどれが後か分からないだけではなく、重なっていたりもしますので正確な順番が分からなくなっています。

なによりもバブル景気の崩壊で急激な景気の不振へと傾いていくのですが、どこかまだバブルの余韻を引き摺っているようなところがあって、多くの人に現実との認識にズレようなものが生じていたように思います。

つまり危機感が薄かったような気がします。
ですが、これらの危機感のなさも、「阪神淡路大震災」と「オウム真理教のテロ事件」で大きく変わっていきました。

まずは同人関係から──。


この時期に同人活動をやめることになるのですが、どこで活動をやめたのかは正確には分かりません。それは裏方作業が同人活動の大半を占めているのですが、やめてからもサークル仲間たちは活動を続けています。

ですがまったく新作を作らなかったものですから──これがやめた理由でもあるのですが──全ての問い合わせなどがそのまま自分の所へ届き続けていました。

また、この前から我々のサークルは即売会への参加もしなくなってました。
つまり殆ど全ての作業が、自分の所へといたずらに集中していたのです。


受け取ったものは仲間たちへと自ら持って行ったりしてしていましたので、
作品制作はしなくなってもある意味まだ続いているようなものでした。最終的に問い合わせなどが完全になくなったのが、約2年半後で最後の問い合わせがコミケ参加をしますかという雑誌からの問い合わせでした。

この問い合わせを最後に同人作業のすべてがなくなりましたが、最初から最後の最後まで「コミケ」なのかというとても嫌な想い出として強く残っています。


この頃にはすでに「まんだらけ」はできていましたが、古書店などが同人誌を扱うようになってきていました。

通販では20冊もまとめて申し込みがあったのですが、後日、これが古書店であったことが判明するなど、同人誌を扱う店が増えていました。これは普通の申し込みのようにやってくるのですが、古書店とはことわらずに購入して
自らの店舗ではプラスアルファの価格をのせて販売していました。

新しい動きだなと思っていると、同人誌の委託販売をする業者などが現れ我々のところへもお誘いがありました。

不思議なことに、アダルト規制があったが故に、同人誌というものが広く世の中に認知されていくような感じでしたね。また、「まんだらけ」のような専門書店の影響もあったようです。いわゆる後にオタク産業と呼ばれるような業種が、次々と現れ始めた頃でした。


この後にやってくるのが人気同人誌の海賊版です。

この「海賊版」騒動は長く続くのですが、この頃には同人活動を終えていました。しかし情報という点では、まだ活動を続けていたサークル仲間たちよりも詳しくもありました。

まず知らない方もいることと思いますので、同人誌の「海賊版」の説明をしておきます。

これは人気のある同人誌を購入して、この人気同人誌をそのままコピーして、自らの同人誌として販売する方法です。この「海賊版」の出現により今までずっと「パロディ」同人誌と呼ばれていたものが、とってつけたように二次創作と呼ばれるようになります。

これらの海賊版は即売会では頒布されず、先に紹介しました同人誌を扱うような古書店などで販売されていました。即売会へ持ち込めば海賊版の元である発行元のサークルと出くわすこともありますので、販売目的の同人誌ですから同人イベントには持ち込めません。

また、当時はPCも普及し始めていましたが、今のようにきれいにスキャナーで画像を取り込んで版下を作ることはまだできませんでした。高精度な画像で取り込んだり出力することは難しいし、できるようにしようとすると機械そのものが高価でした。

これらの同人誌の海賊版は、すでに「青少年保護育成条例」のところで説明しましたように規制の切っ掛けを作った同人誌の印刷会社が自ら作っていた同人誌と同じ、小さな印刷会社が作っていたのです。

摘発された印刷会社と同じであるかどうかまでは分かりませんが、同人サークルの証言がいくつかあって、即売会に参加していると手にとって同人誌を見ながら、数人でこの大きさなら画像がつぶれるとかつぶれないとか、かなり専門用語で話し合いながら入手していく人間がいたそうです。

それにこの時はサークルやイベント運営側を含めて「海賊版」の存在は大きな問題となっていました。ですから「海賊版」を作ろうとしても印刷会社がこれらの印刷を受け付けません。

つまり作りたくとも作れないわけで、それができるのは印刷設備の揃っている印刷会社以外にないのです。

なによりもとどめとして、この「海賊版」は古書店など同人誌を扱っている書店に営業の人間が見本誌を持って営業に回っていたのです。どんなに売れている同人サークルでも営業マンがいるサークルなんていませんでしたし、規制が始まった頃からいろいろな書店で同人誌を扱うようになってもいましたからね。

最近はこの「同人誌の海賊版」の噂を聞くことはなくなりましたが、一つには書店そのものの数が激減しているからではないかと思えます。

学生の頃から書店巡りが習慣となっているのですが、今は街の本屋さんが殆どつぶれてしまい残っていません。大型書店でも閉店してしまう状態で、古書店など良く行く店は15、16店舗もあったのですが、今や「まんだらけ」以外は全てつぶれてしまいました。

自分たちのような人間からすると寂しい限りなのですが、業界の根本的な激変により海賊版は消えて行ったのではないかと考えられます。Webでの専門サイトも沢山ありますし、「海賊版」が入り込む余地がないのでしょうね。

余談になりますが書店が消えて行くのがなんとも辛い、まさかここまでなくなっていくものかと唖然とするときがあります。


次にやってきたのが「版権」問題です。
自分たちのパロディ作品は放っておいて、海賊版ではかなり大騒ぎしていた同人関係ですが──自分たちの作品の著作権を主張しているサークルが殆どでした──予想通りというかこの問題が顕在化していきました。

もともとこの問題に関しては我々だけではなく、マイナーなアニメ雑誌などでも問題点の一つとして指摘され続けられていました。簡単に言ってしまうとある程度整備しておかないと、いずれ大きな問題に発展すると考えられていたからです。

パロディするアニメ作品を、ある程度のリスペクトというか、気を使うようなことは必要ではないかという気がしていました。同人の場合は作品の内容ではなくあくまでもキャラクターだけを使いエグい表現の18禁作品を作っていましたからね。

内容的に言えば、これでパロディをする必要があるのかという感じが強くありました。キャラクターの個性がなくなっていて、言い方を変えれば「コスプレのAV」作品と同じようなものです。

そしてやることも一本調子で、今放送されているアニメのパロディを作っていても、新しくアニメが始まればすぐに乗り換えて新しいアニメのパロディを作ります。

やっていることは前のアニメのパロディとまったく同じで、極端な話、キャラクターの顔を入れ替えるだけでそのまま通用するのではないかと思えるものばかりでした。

また、そういう作品の方が人気がありました。


少し話は寄り道しますが、我々が18禁作品へと切り替えても、ここら辺のところが割り切れなかったところでもありました。あまりにも芸がなさ過ぎて真似する気になれなかったですね。

どうしても自分たちが作る作品はオリジナル指向になってしまいます。
「セーラームーン」の二次創作も作ったのですが、オリジナルのセーラー戦士を製作するなどとにかくオリジナル性が強かった。

するとどうしてもエロが控えめになってしまうのです。
二次創作では、エロとキャラクターの個性のバランスをどうとるかという問題があって、これを次に繋げていきたいと思っていましたし問題の修正点も見えていました。

アニメ「ガールズ&パンツァー」を見た時、「やられた」と思ったのは、もし我々が同人作品として作っていれば、オリジナルとそのオリジナルの18禁作品を同時に製作できるからです。

実際にそういう考えに近い作品を作っていて、発想的には殆ど同じものだった。また「女の子と戦車」という組み合わせは、あれほどという位雑談では出ていたのですが、そういう作品があっても良いという発想そのものが、今一歩がなかったですね。
今更ですが、作っておけば良かったという気持ちです。


話を戻して、版権問題ですがこの時もまた同人らしさを女性サークルが見せていました。女性の小物好き、グッズ好きは同人だけにとどまらないのですが、アニメのパロディグッズが版権問題に触れると思っていなかったというのはお笑いぐさでした。

二次創作とはパロディ作品としての、一次創作と二次創作という対比なのですが、グッズに関しては作品でも何でもなくてただの商品でしかなく、もろに版権問題だったからです。

コピー商品の販売をしているようなものでしたからね。


「BL」作品でも自分たちの作る「BL」作品は、男性サークルが作るアダルト作品とは違い規制されないと思い込んでいたという、とにかく自己中な面が当たり前に存在していました。
版権問題の頃はかなり慌てていたようですが。

ちなみに版権問題で一番敏感になっているのは、「ディズニー」です。僅かな二次創作でも見逃さないという、ディズニーキャラクターがメインではない同人作品、僅かに登場するだけでもそれを見つけて規制されたそうです。

当時の同人では「ディズニー」アニメはアニメ作品とは認識されていないようなところがあって、誰も二次創作を作ろうとか、そんな発想すらもないアニメでした。
 

またアニメ作品の二次創作では比較的ゆるいようですが、ゲームキャラクターの二次創作は厳しいようです。

こうやって振り返って思い出していると、確かにゲーム関係の同人誌が多数作られるようになってきて初めて、版権問題が発生しているようなところがあることに思い至りました。 

ただこのゲーム関係も、自分が知っている事情は一方的なものではなかったと記憶しています。あらかじめゲーム会社の人間が同人イベントに出向いて名刺を配りながら、各サークルを回って説明していたという話を聞いたことがあります。

もうこの時期は同人活動そのものをやっていませんでしたので、イベント会場などで直接聞いた分けではありませんが。ただ今でもゲーム関係の二次創作は厳しいようです。


これらの問題を抱えながら、同人はアダルト同人誌は18禁マークをつけるなど一応の対策をとるようになりました。

TPP問題で一時期は版権問題も深刻でしたが、トランプ政権の誕生でこれもうやむやになりました。おそらくこれから先も、世の中の情勢次第では幾度も規制の動きを経験することになるでしょう。

ただ最近については、そろそろアニメ人気と市場規模の嘘がほころび始めているような所もあって、また規制の動きから同人は我々がサークルで活動していた頃に先祖返りしているようなところがあります。

それはまた後で解説しますが、同人誌の18禁マーク云々が言われはじめた頃にはサークルそのものが活動をやめていました。殆ど自然解散のような状態だったようです。

次回はサークルの事情と個人的な事情を掘り下げながら話を進めていきたいと思います。



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