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縁の下の力持ち・菊池保則

前半戦の広島リリーフ陣を支えた中村恭平・一岡竜司・レグナルトらが、7月に入り続々と二軍落ちを経験するなど、夏場に差し掛かる中で苦境に陥った広島リリーフ陣を支えたのは、他でもない菊池保則でしょう。

昨オフに福井優也とのトレードで楽天から移籍してきましたが、丸佳浩の人的補償で巨人から移籍してきた長野久義やゴールデンルーキー・小園海斗ら豪華な新入団選手の影に隠れ、当初はあまり注目された存在ではありませんでした。

しかし、オープン戦からリリーフとして好投を続け、開幕一軍入りを果たした後も、様々な場面で登板を続け、楽天在籍時の昨季から大きく成績を伸ばし、今やチームに欠かせない重要なピースとなりつつあります。

そんな菊池保について、セリーグへの移籍で成績が向上した要因を探るとともに、その存在がチームにとってどれほど重要であるかを明らかにしていきます。

※成績は8/9終了時点でのもの

1.成績向上の要因とは?

楽天在籍の過去3年は、一軍登板数はいずれも一桁試合にとどまり、苦しいシーズンが続いていた菊池保ですが、今季は既に37試合に登板し、防御率2.90とセリーグへの移籍で水を得たように好投を続けています。

また、7月以降の登板は全て無失点と、多くの投手が苦しむ夏場に入り、一層安定感が増してきており、直近では勝ちパターンを担うケースも見られます。

そんな菊池保ですが、なぜここまで成績を向上させることが出来たのでしょうか?

その要因としては下記点が考えられます。

①シュートの活用

菊池保の年度別球種割合をまとめたものを見ると、2019年のFT%が前年の4.1%から26.9%まで伸びており、広島移籍とともにシュートの投球割合を増やしていることが分かります。

それまではレパートリーには入っていたものの、ほとんど投じていなかったシュートを多く投球することによって、より横幅を使った投球が可能になり、同じ横変化であるスライダーを有効に活用できるようになったのではないでしょうか。

球種別のPitchValueに目を向けて見ると、シュートの指標(wFT)自体は-4.2と低く、むしろ投球割合を増やすことがマイナスになっているようにも見えますが、スライダー(wSL)やフォーク(wSF)の指標は過去数年を振り返っても大幅に改善しています。

ここには、打者にシュートの存在を印象付けているために、逆方向に曲がるスライダーやフォークがより効果的となって、指標には大幅プラスという形で現れているのではないでしょうか。

また、PitchValueをトータルで見ると、キャリアハイの成績を残した2015年よりも指標は良く、トータルで成績を伸ばすためにシュートという球種を有効活用出来ていることが分かります。

シュートの投球割合を増やした影響からか、被打球性質もフライが多かったのが今季はゴロの方が多くなっており、天然芝のためゴロ性の打球の勢いが死にやすいマツダスタジアムの恩恵を受けることになった点も、見逃せません。

②対セリーグへの優位性

菊池保の投手のタイプとしては、スライダーやシュートで横の揺さぶりでカウントを稼ぎながらも、最後はノビのあるストレートや元々のマネーピッチであるフォークで仕留めるというタイプの投手です。

そのような投球スタイルの投手がセリーグ内にあまりいないことと、パリーグの方が打者の実力が高いため、パリーグの時と比べてセリーグの各打者の対して優位性を保てているというのも、成績向上の大きなポイントでしょう。

実際に、セリーグ各チームとの対戦防御率は1.50に対して、パリーグ各チームと対戦する交流戦での防御率は、6失点を喫したオリックス戦の影響が大きいものの14.54と大幅に悪化しており、見慣れられたパリーグにはシュートを活用するスタイルへの転換を図っても、通用しなかったことが分かります。

2.その存在がどれほど重要か?

これまでの菊池保の登板シチュエーションを振り返ると、非常に多岐に渡るシチュエーションに登板しており、「便利屋」という名が相応しいように思います。

ここまでの登板状況を表④のように整理して見ると、ビハインド時や大量リード時の終盤での登板が多いものの、時には0~3点差のようなホールドシチュエーションでの登板もあり、チーム状況に応じて様々な役割をこなしているのが改めて分かるでしょう。

また、この表には表れていませんが、元々先発投手を務めていたことから、スタミナも十分で回跨ぎもこなせるため、複数イニングの消化も出来るという特徴もあります。

上記から、登板状況的には、それほど重要ではない場面が多いため、勝ちパターンを担う投手とは違い、菊池保が代替可能な存在ではないかと感じられてしまいますが、内実はそうではないと考えます。

それは、実力的にも年齢的にも、このような多岐に渡るシチュエーションへの対応に適した投手が現状の広島には存在しないからです。

このような役回りは、自身の登板するケースが読めず、何度も肩を作ることになるでしょうし、回跨ぎやイニング途中からの登板も多いため、高い適応力やタフネスさが求められてくるポジションです。

登板状況的には、多少のビハインドやセーブやホールドが付かない程度のリード時となるため、勝ちパターンとはいかないまでも、その一歩手前くらいの実力は必要ですし、回跨ぎをこなすだけのスタミナも要求されます。

昨年は、このような役回りをアドゥワ誠がこなしていましたが、登板数イニング数ともに嵩みやすく、20歳の若手有望投手がこなすような役回りではないため、年齢的にもっと扱いやすい投手の存在が求められました。

そこで、実力面や年齢面から合致したのが、菊池保というわけです。

菊池保のような勝ちパターンの下に控える投手の存在が、誰を起用するか困る場面に対応してくれることが、勝ちパターンの投手やその他の投手の負担を減らすことに繋がり、チームの投手運用を楽にしてくれます。

ですから、単純に緊迫した場面に登板することは少なくとも、間接的にその他の投手の負荷を減らしてくれるという、まさしく「縁の下の力持ち」となって、チームに大きな貢献をしてくれているわけです。

3.まとめ

・成績向上の要因
①シュートの有効活用
シュートを積極的に活用することで、スライダーやフォークといった既存のメイン球種にプラスの作用をもたらした。
②対セリーグへの優位性
似たようなタイプが少なく、打者レベルもパリーグより落ちるため、楽天在籍時より相対的優位に立てている

・存在の重要性
投じる場面自体は重要ではないが、誰を投げさせるか困る場面や回跨ぎを十分にこなせるだけの実力があり、年齢的にも多少雑に扱っても問題ないことから、他の投手の負荷減に大きく貢献している。

以上が本noteのまとめとなります。

直近では勝ちパターンに組み込まれたつつあるなど、登板シチュエーションの重要性も確実に上がってきており、縁の下の力持ちとは言えない存在へとなりつつあります。

ただ、一年間丸々一軍で戦い抜いた経験はないため、今後は疲労にも考慮しながらの起用を行い、これまでと変わらずリリーフ陣を支えてもらいたいものです。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #楽天 #菊池保則 #リリーフ

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