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ルーキー先発投手の管理方法

昨年のドラフトでは、根尾昴・藤原恭太・小園海斗・吉田輝星らの高校生が注目の的となった一方で、上茶谷大河・甲斐野央・梅津晃大の東洋大トリオや松本航・東妻勇輔の日体大コンビなど大学生投手にも、焦点の当てられたドラフトでした。

そんな大学生投手たちですが、余程の素材型でない限り上位指名選手については、多くは二軍にじっくりと漬け込んでというよりも、一年目から一軍である程度の稼働を想定しているチームが多いのではと思います。

しかし、実力値としては即戦力級のものがあっても、周囲の環境が一気に変わり、かつ一年間緊張感のある試合をこなし続けなければならないため、かなりの負担になるはずです。

また、開幕一軍に入ることがまず最初の目標となってくるため、キャンプから自分の実力をアピールしようと飛ばし気味になってくるため、どうしても夏場辺りに疲労から成績が下降線に入りがちなように感じます。

本noteにおいては、ルーキー投手の月別成績推移から、その特徴を探っていくとともに、どのように管理していくべきなのかについて論じていきたいと思います。

1.月別成績推移から特徴を探る

2011年~2018年のルーキーで100イニング以上を投げた投手を対象とし、月別成績から、本当に夏場周辺で成績は下降線に入っているのかという点をまずは検証していこうと思います。

2011年~2018年のルーキーで100イニング以上投げた投手の月別成績をまとめたものが表①となります。

セルが黄色で塗りつぶされ赤文字になっている所は、月別成績を比較した中でで最も良い数値を叩き出している月で、セルが薄い青く塗りつぶされ青文字になっている所は、逆に月別成績を比較した中で最も悪い数値を叩き出している月となっています。

パッと見でも、月別でベストな数値が出ているのは3,4月、もしくは9,10月といった涼しい時期に多く、ワーストの数値が出ているのは6~8月の気温が高くバテやすい時期に多いことが分かります。

実際に月別にベスト数とワースト数を集計したものが表②となりますが、パッと見の印象通り、6~8月の夏場を底としたU字型の曲線を描く傾向にあることが分かります。

しかし、夏場はルーキーに限らず投手には疲労の色が見え隠れする時期であり、かつ気温や湿度の影響でボールもより飛びやすくなることから、この傾向はルーキー云々は関係なく、ある意味当然であると言えましょう。

ですので、ここからはNPB全体の平均的な傾向からどれほどの乖離があるのかという視点から、ルーキー投手の成績の出方の特徴を探っていきます。

過去5年のNPB全体の月別投手成績と、今回対象としているルーキー先発投手の月別成績を比較したものが表③となります。

春先と秋口の成績が良く、夏場辺りに成績の凹みが来る点はやはり共通していますが、ルーキー先発投手の場合は6月に大きく成績を落としているのに対し、NPB平均では7月に最も成績を落としているという差異が見受けられます。

この辺りは、キャンプから飛ばし過ぎるツケが早めに回ってくるということでしょう。

また、NPB全体とルーキー先発投手において、それぞれ平均からの乖離度を示したのが表④となります。(100%以上が平均より良く、100%以下は平均より悪いことを示す)

このような形で見ても、サンプル数の多寡の問題もありますが、ルーキー先発投手の方が、春先は自分のボールが投げられている+慣れやデータ不足から良い成績を残すものの、疲労やデータが集まっていた等の要因から6~8月の落ち込みが激しいことが分かり、首脳陣側としてはキチンとケアしてあげる必要があることが分かるでしょう。

2.ルーキー先発投手の管理方法

では、ルーキー先発投手はどのように管理していけば良いのでしょうか?

そのヒントは、ここ数年毎年ドラフト1位で投手を獲得し、いずれの投手も活躍している横浜の管理方法にあるのではと感じています。

上述の通り、ルーキー先発投手は春先の滑り出しこそ良いが、6〜8月の気温の上がる時期に成績を落とす傾向にありますが、ここ3年続けてドラフト1位指名から先発ローテーション入りを果たした、今永昇太・濱口遥大・東克樹の3名についても例外ではなく、表①を見ると一目瞭然ですが見事にそのような傾向が表れています。5月までは見事な投球を披露していましたが、6月7月には疲労の色が見られ、成績は下降線を辿っています。

そんな中、横浜首脳陣が下した決断が、間隔を空けるという決断でした。

その他の投手を見ても、春先に結果を残した投手は、夏場に成績が下降線を辿っても基本的には一軍の舞台で登板を続けています。

しかしこの3投手は、6月7月の二月でいずれも登板数は5登板と、その他の投手は7~8登板はこなす中、明らかに間隔を空けた形で登板しています。(濱口は故障が要因のため、意図的なものではありませんが)

これが良い契機となったのか、一軍の先発ローテーションに復帰後はフル回転し、CS進出や日本シリーズ進出に大きく貢献することとなりました。

そのまま投げさせたところで、フォームや自信を失ったりする恐れのある中で、この決断は非常に価値のあるものでしょう。

あくまでまだルーキーであり、本来は段階を踏んで経験させていくのが筋でしょうから、そのような意味では最初からローテーションに入り浸らせるのではなく、適度に休息を設けて、自分の納得のいくボールで勝負できる環境作りに徹しているのは、素晴らしいように感じます。

ルーキーには、まずプロ野球の1年間を体感させつつ、成功体験を積むことで、しっかりと自信を付けさせることを意識した起用を行うべきではないでしょうか。

3.まとめ

①仮説通り、ルーキー先発投手は6~8月の夏場における成績の顕著な落ち込みが見られる。②それを見越して、6~7月は二軍での再調整を行うなど、間隔を空けつつ疲労度に考慮した起用法を取るのがベター

上記が、本noteのまとめになってくると思いますが、このような起用法を実践するには、当然ながら投手陣の層の厚さが必要になってくるでしょう。

そもそも一軍レベルで先発をこなせる投手の数が少なければ、代替要員が用意できず、仕方なく不調のルーキー先発投手を起用せざるを得なくなることが起こりえます。

ですので、力のあるルーキー先発投手を二軍調整させても、大きく戦力の落ちないような層の厚い投手陣を作ることをまずは念頭に置いてから、この管理法が生きてくるということも忘れてはならないでしょう。

#野球 #プロ野球 #ルーキー #先発投手

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