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#StopHateforProfit から考える、インターネット広告はどうあるべきか

#StopHateForProfit (#StopHate4Profit)というタグをご存知でしょうか。直訳すればこれは「金儲けのためのヘイトを止めろ」という意味になります。

極めて単純化して言えばこれは、「Facebookに広告を出すな」というキャンペーンです。日本人でこの流れを知っている人は少ないかもしれませんが、このキャンペーンに賛同した企業は少なくありません。

・ユニリーバ
・コカコーラ
・Microsoft
・PUMA
・ソニー
・North Face
・Ben & Jerry's
・フォード

上に上げたのはほんの一例で、その数は拡大し続けています。興味のある方は下をご参照ください。


一件、Twitterで盛り上がっただけでこれだけ多くの企業が広告を取りやめるのか?と思われるかもしれません。そもそも、このキャンペーンは、日本で想像されるよりも遥かに大きく、そしてパブリックなものです。

ADLやMozilla、NAACP(全米黒人地位向上協会)など、公的な機関や企業がサポートしているもので、単なるTwitterだけの盛り上がりではないのです。


なぜ Facebook は悪の象徴となったのか

2010年にジェシー・アイゼンバーグが「ソーシャルネットワーク」でFecebookの創業者、マーク・ザッカーバーグを演じたとき、世界は彼のものであるようでした。

2015年に産休をとったときも、世の中は絶賛しました。


彼を「若きリベラルな成功者」から「邪悪な王」へと変えてしまったのは、2016年の大統領選挙です。

「破滅論者」スティーブ・バノン主席戦略官が仕切ったこの選挙に関わっていたこの選挙で、後に数々の疑惑に見舞われるドナルド・トランプ大統領が当選を果たします。

この選挙に関わっていたのがイギリスの分析会社ケンブリッジ・アナリティカでした。(この辺は、Netflixの「グレート・ハック」をぜひ)

ケンブリッジ・アナリティカは、Facebookのアプリ機能を悪用することで大量のデータを不正に集め、選挙戦を左右させるターゲティングによるプロモーションを行った、とされています(実際のところ、それがどの程度効果的だったのかは未だに不明ですが)。

ともあれ、これによって意図せずとも「トランプ誕生の立役者」と思われてしまったザッカーバーグ氏は、連邦議会の公聴会に引っ張り出され、袋叩きに合います。


ファクトチェックと広告

ザッカーバーグ氏とFacebookが批判されている内容は、以下のようなものです。

・Facebookはろくにファクトチェックをしていない。選挙戦において出そうと思えば偽の広告を出すことができる
・ファクトチェックのパートナーに、Daily Callerという右派系のニュースを持ってきた(Daily Caller 自身が有名なフェイクニュースサイト)
・Breitbert news (全米で最も有名なフェイクニュースサイト)を信頼できるメディアとして認証した


ところで、Webのプラットフォーマーとして、あるいは旧来からの自由主義の常識に従えば、Facebookとザッカーバーグの説明は、間違っているようには聞こえないかもしれません。

偽の広告を出したとしても、選挙でどこに投票するか判断するのは国民だし(だから、暴力的、アダルトなどのもの以外は出せるようにする)、

Daily Caller がファクトチェックのパートナーになったのは第三者団体に加入しているからだし、

Breitbert news はアクセスが多いし、多様な意見のために排除するようなことはしない……というのがザッカーバーグの大まかな回答です。


ところが、残念ながらすでにこれは「充分」な回答ではないとみなされてしまいます。

つまり、単に平等であるだけではなく、公平性を担保するためには、偽のニュースや、差別的な広告を排除するために、プラットフォーマー自身が投資をしなければいけない。それが、少なくとも #StopHateforProfit 運動などに賛同を示す人にとっては共通の見解になっているのです。

Facebook は、「差別や情報操作、虚偽報道と充分に戦っていない」とみなされている。それが現在のFacebookの立ち位置です。


そして #StopHateForProfit が始まった

このような前提のもと、#StopHateForProfitは始まりました。Facebook が今後どうなっていくかはわかりませんが、一つ明確なことがあります。

それは、プラットフォーマーも明確に責任を問われる時代であるということです。Google にせよ、Facebook にせよ、Twitter にせよ、すでに広告で莫大な収益を上げていますが、Web広告の嫌われ度合いは年々増しています。


スマホのノンターゲティングの漫画系の広告はもともとひどいですが、最近ではYouTubeも、ひどい広告ばかりです。

エログロならまだマシですが、人間を不快にさせることでアテンションを集める手法が蔓延し、Webの空間は大きく汚染されています。(いじめ、不倫、浮気の漫画、あとブスだとかブサイクだとかが飛び交う恋愛・自己啓発系のコンテンツなど、みなさんも見に覚えはあるでしょう)

テレビCMにせよ、ラジオCMにせよ、媒体は通常審査をするわけですが、この審査の部分を媒体側に丸投げし、プラットフォーマーが十分に行えていない。

そのくせ文字の比率が何%だとかはチェックするというのは一体どういう至高なのか、と思ってしまいます。(この点では、FacebookやAdSense / Google広告はマシな方で、TwitterやYDNのほうが断然ゆるいですが)


広告とはなにか

結局の所、広告というのは見せたくないものを見せることでお金が発生します。かつその見せたくないものが「刺激的」であればあるほど、効果が高くなります。それが日本ではエログロですが、海外ではヘイトコンテンツです。(日本にもありますが)

このような構造がある限り、プラットフォーマーが投資をし、収益性の高い広告を諦めてでも健全性を取り戻さなくてはいけません。


今のWeb広告はひどいものです。だからこそ、儲かっているプラットフォーマーが、株主の圧力をはねのけ、適切に審査を行うようにしなければいけない、という点に関して私は100%同意します。

Tech Giantは2010年代の寵児でした。ソーシャルメディアは多くの面で世界を変え、情報が誰でも簡単に手に入るようになった。それは世界にとって素晴らしいことでした。

そして、情報が存在するところ、広告は常に血液として存在します。しかし、かつてのSEOスパムが駆逐されたように、社会的に不利益な広告をしっかりと規制しない限り、その血液自体が腐敗していく、ということではないでしょうか。

励みになります!これからも頑張ります。