遠藤 結万 | CMO

CMO株式会社代表取締役。早稲田大学卒。Googleを経て、CMOを設立。国内外トップ…

遠藤 結万 | CMO

CMO株式会社代表取締役。早稲田大学卒。Googleを経て、CMOを設立。国内外トップカンパニーのマーケティング・DXを支援。 著書に「エッセンシャル・デジタルマーケティング(技術評論社)」など。

最近の記事

「生きているだけでいい」のか問題

4月が誕生日という点には良い点と悪い点がある。 良い点は、桜が咲いてめでたい気分になれることだ。悪い点は新年度からすぐなので、仲良くなる前だということだ。 ということで、新年度でスルーされがちな僕の誕生日について覚えてもらいたい。4月9日だ。この記事を書いている今日、ということになる。 同じ誕生日の人にあったときにはさぞかし意気投合し、熱い抱擁を交わしたいところだが、残念ながら同じ4月9日生まれの人に会ったことはほとんどない。 1957年の4月9日はマルタン・マルジェ

    • 七転八倒、十年目の起業日記

      小学校の頃、色んな仕事を調べて将来の目標を書くという授業があった。 折しも、ホリエモンがもてはやされていた。起業ブームである。アナウンサーとホリエモンが飯を食っているだけの番組がテレビに放映されていたのを覚えている。今考えれば何かがおかしかった。 小学生の僕は目標欄に「社長」と書いた。 同級生に理由を聞かれて答えたのは「人の下でやっていけそうにないから」。小学生にして、適切な自己分析が出来ていたと言える。 思い返すと、「将来の夢」が叶ったのはもう随分前のことになる。2

      • たぶんいい人ではない

        私の中に残る罪悪感が、この文章を書かせている。罪悪感を原動力に書いても、ろくなことはない。でもやっぱり、書かなければいけない。 2年前、いくつかの誓いを立てた。 僕にとっては特別な意味を持った誓いだ。誓いを立てた理由を説明するには、一人の知人について語る必要がある。 何度か会って話しただけだから、友人と言える資格があったかも怪しい。だから知人と書く。 話の内容の大半は、仕事の愚痴だった。週末の夕方ですら、知人は会社の「社長」からひっきりなしに電話を受けていた。とにかく

        • CMOって、結局何の会社?

          CMO株式会社もおかげさまで9期。来年は10期目です。こんなに長く続く会社になるとはとても思ってなかったです。 結局我々が何しているのかよくわからん、という人もいると思うので、総括代わりに説明したいと思います。(正直我々は黒子であることがほとんどなので、具体的に何をしているというのがあまり言えません……) 今何をやっているかというと 企業向けのマーケティング・DXコンサルティング 企業向けのマーケティング研修 自社サービス開発 書籍の執筆 などです。逆に、 広

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          Twitterはなぜ赤字だったのか、イーロン・マスクはこれから何を目指すのか

          Twitterの買収により大量のレイオフが発生しており、波紋を広げています。 文字が好きな自分にとっては、愛着もある大好きなSNSですし、GoogleとTwitterは人材交流が盛んでもあり、他人事ではないというのが正直なところです。 コンテンツモデレーションやスパムに関しては(元Google→Twitterの)長山さんがプロ中のプロなので、こちらのブログが非常に参考になったのですが、 僕の方は広告の観点から、なぜTwitterが赤字で、ここからTwitterがどこに向

          Twitterはなぜ赤字だったのか、イーロン・マスクはこれから何を目指すのか

          亡くなった人のフォローを外す

          夕日を眺めながら、Twitterのフォローを外している。 10年以上Twitterをやっていると、時々、ふっと消えてしまう人がいる。「あの人はどうしているかな」と思った時に、すでにその人は亡くなっている。 死んだ以上、そのアカウントをフォローしておく意味はない。もう更新されないからだ。 フォローを外す前に、生前のつぶやきを一通り見る。そこには日常がある。生活の営みがある。ちょっとした悩みや些細ないらだち、愛や嫉妬や欲望がある。陽の光が当たる、普通の日々がある。 でも、

          亡くなった人のフォローを外す

          夜の空港を歩く

          オンラインで大学院の授業を受け、いくつかのオンラインのミーティングをこなし、連載の原稿をオンラインで送信したのち、唐突に夜の空港を歩こうと思った。 元々空港は好きだ。時々行きたくなる。旅行に行く前の空港で待つ時間は特別好きだ。 でも、いくら空港が好きだからって、飛行機に乗る理由もないのに、わざわざ夜の8時に羽田空港に行く理由なんて、何もなかった。 空港について、ぼんやりと歩く。もちろん予定なんてない。人はまばらだ。緊急事態宣言が開けたとはいえ、往時の活況はない。 時折

          夜の空港を歩く

          自分のための文章を書く方法

          以下に書くのは、「自分のための文章」を書く方法だ。自分のための文章とは、このエントリのように自分が書きたいものを書いた、特に意味のない文章のことを指す。 わかりやすくロジカルな文章を書く実践的な方法はない。 自分のための文章を書くというのは、要は「言葉にまだなっていない言葉」を捕まえるということだ。 こういう思い出がある。 20代の頃、よく残業の後、タクシーに乗っていた。今考えてみれば特に意味はなかった気がする。家に帰ってやっても良かったのだから。 遅くまでオフィス

          自分のための文章を書く方法

          人生は3手詰で出来ている

          こんなエントリを読みました(バズってた)。 いろいろモヤッとしたところはあるのですが(ビジネスサイドでもMTVで活躍している日本のGooglerなんて一杯いるとか)、それはこのエントリでは置いておいて「田舎初段」について、ちょっと思うところを書こうと思います。 田舎初段とは この方は、筋よく指す有段者から見ると弱いけど、素人には勝てる、というような将棋指しのことを差して使っているようです。 元エントリでは悪しざまに言われていますが、初段って結構強いんですよ。そもそも、素

          人生は3手詰で出来ている

          こちら側で、無力なままに

          震災で、今でも忘れられないことがあります。 あの日、神谷町で地震が起こり、携帯電話もつながらず、帰宅難民となりました。 徒歩で帰宅途中に、どこからか「千葉でガスタンクの爆発が起こってこれから汚染された雨が降ってくる」という噂を話している人がいて、人生の終わりを覚悟しました。 食べるものもなく、水も消えて、外に出ると被曝するという噂も流れ、コロナすら比じゃないほどの「死の町」がそこにありました。 次の日もテレビを見ると頭がおかしくなりそうで、それでも消すことも出来ずただ

          こちら側で、無力なままに

          森喜朗氏の発言と、 #わきまえない女 に感じる不快さ

          森発言を聞いた時、私は「これは問題になるだろうな」と思った。怒った訳でも不快になったわけでもない。あえて正直にいうなら、面白い、とすら思った。 なぜなら、森喜朗という人は、平成生まれの人間にとっては「失言」の象徴的なアイコンであり、そのアイコンがまさに期待された通り「失言」をしたからだ。 森喜朗氏というのは、政治家の中でも飛び抜けて失言が多く、理解し難い精神構造をしている人間であり、いわばそれは、ドナルド・トランプ元大統領の発言に「また言ってるよ」と感じるようなレベルで、

          森喜朗氏の発言と、 #わきまえない女 に感じる不快さ

          人種差別を真っ向から描いたナイキのCMは、なぜ作られたか

          ナイキが制作し公開したCM は、予想されたとおりに一定の反発と、称賛と、様々な議論を読んでいます。 私はもちろんこのCMについて肯定的な立場に立つものですが、中には不買運動などを主張したり、Twitterで怒りの感情を吐露するユーザーも居るようです。 このような怒りが適切なものであるかどうかは別にして、そもそもなぜこのような「社会的な」CMが作られたのかを解説しましょう。 話は2年前にさかのぼります。ナイキが「Just do it」キャンペーンの30周年の記念キャンペー

          人種差別を真っ向から描いたナイキのCMは、なぜ作られたか

          スタートアップはCMO(的人材)に何を求めるべきか

          昨日たまたまCMO(弊社ではなく、職位としての。しかしややこしい社名だ)についてつぶやいたんですが、CMOに何を求めるべきかという話。 (スタートアップにおいて)CMOという職種は何をやるかマーケティング専任担当を置く場合、100人くらいまでのベンチャーでようやく1〰3人、300人くらいに行って10人いたら多い、くらいの感じだと思います(事業形態にもよりますが)。 つまり、CMOという職種は「マネジメントチームの長」ではなく、「マーケティングっぽいことは全部やってね」とい

          スタートアップはCMO(的人材)に何を求めるべきか

          藤井聡太二冠が将棋界を救った(救える)わけではない。救えるのはきっと、一人ひとりの将棋ファンのはず

          こんな記事がバズっていました。 素敵な文章だし、大変に将棋が好きな方なんだろうな、と思います。その上で、この文章だけだと、誤解を招く部分が多分にある、とも思いました。 私は15年来の将棋ファンであり、アマチュアの将棋指しであり、同時に一定程度将棋界に関係性がある(あった)人間でもあります。 下記の文章は、上記の記事の補足であり、内容を否定するものではありません。 AIはいつ棋士を超えたのか将棋界にとって、2010年代最大のコンテンツの一つは電王戦でした。ある意味でそれ

          藤井聡太二冠が将棋界を救った(救える)わけではない。救えるのはきっと、一人ひとりの将棋ファンのはず

          #StopHateforProfit から考える、インターネット広告はどうあるべきか

          #StopHateForProfit(#StopHate4Profit)というタグをご存知でしょうか。直訳すればこれは「金儲けのためのヘイトを止めろ」という意味になります。 極めて単純化して言えばこれは、「Facebookに広告を出すな」というキャンペーンです。日本人でこの流れを知っている人は少ないかもしれませんが、このキャンペーンに賛同した企業は少なくありません。 ・ユニリーバ ・コカコーラ ・Microsoft ・PUMA ・ソニー ・North Face ・Ben

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          海の向こうの人種差別に憤る前に、我々の社会にある差別を考えよう

          George Floyd の死から始まったデモ、そして怒りの声は、全米でさらに広まり、とどまっていません。 暴動ばかりがクローズアップされますが、多くの方々は様々な形で連帯を示しています。警察官、軍人、市長、知事など、立場を変えた多くの人が、デモに賛意を示し、何ら有効なメッセージを発しないドナルド・トランプ大統領を批判しています。 マイケル・ジョーダン、マティス前国防長官など、これまで頑なに政治的話題に沈黙してきた人たちすら、です。 語ろうと思えば、いくらでもこの件に関

          海の向こうの人種差別に憤る前に、我々の社会にある差別を考えよう