モバイルマネー詐欺で、残高が100円になりました。inケニア

振り込め詐欺のニュースって、正直「いや胡散臭すぎ、なんで振り込むんだよ」って思って見てました。大いに反省です。本当に悪い方に頭の働く人は、どこまでも賢い。(褒めてません)記憶が鮮明なうちに、そして後悔の念が消えないうちに、文章にしておこう…。

先週火曜日、用事があってオフィスを離れていました。
用事を済ませて先方のオフィスを出たとき、着信が入っていたことに気づいてかけ直しました。登録されていない番号です。
要件を聞くと「モバイルマネーで間違えて送金してしまったから、返金をお願いしたい」とのこと。3500円くらいを送金したという内容の送金確認メッセージも転送されてきました。
この時点では特に何も疑いませんでした。電話番号を入力すれば送金できる仕組みなので、一桁間違えることはよくあります。
ちょっと不思議だったのは、自分は仕事用とプライベート用でSIMをふたつ持っていて、片方しかモバイルマネー口座を開いていないのに、開いていない番号のほうにその連絡が来たことでした。
ケータイ会社に報告したから、ケータイ会社のほうから連絡が行くと思う、と言われて、その人との電話は終了。
ケニア人にとっては3500円は大金なので、返してあげなきゃ、としか思いませんでした。

そもそも、モバイルマネーサービスの仕組みがちゃんとわかってないが故、これに引っかかったんですが、ものすごい自責の念に駆られている一番の理由は、2本目の電話で話している間ずっと「あやしい!」と思っていたのに電話を切らなかったことです。
ケータイ会社のカスタマーサポートを名乗る2本目の電話は、正直あやしいところだらけで、実際何回も、
Why do I need to do this?
みたいなことを聞いた記憶があります。
ただ、こちらが伝えていないのに、相手がもうひとつのSIMの番号を知っていたこと、3500円返してあげたいと思っていたこと、早く切り上げてオフィスに戻りたかったこと、いろんな要素が絡み合って、結局まんまと引っかかってしまいました。
気付いてすぐ、近くのモバイルマネーサービススタンドに駆け込んで、そこのおじちゃんが返金の手続きをしてくれましたが、既に全額おろされていて、返ってきませんでした。

被害額、1万円。
1万円でよかったよ、と周りに言われたりしましたが、「ですよね!」とはいかない自分がいます。
つい最近まで、貧乏学生をしていた身です。バイト代1万円と思うと、痛いです。それに、自分の貯金の内訳を考えると、その1万円は、奨学金の一部でもあります。めちゃめちゃ大事なお金だから、1万円でも許せなかった。
もっと言うと、これで被害に遭ったのがケニア人だったら、と思うと一番怒りが湧いてきます。うちの顧客がどれだけハードに働いて、手元に残るのがいくらか。うちの社員が月いくらの給料で働いているか。そういうことを考えたら、働かずに、人を騙して、1万円をかっさらってく人がいることが許せない。

敵意じゃないかもしれないけど、こいつからお金を騙し取ってやろうと、マイナスのエネルギーを向けられたこと。自分が不用心だったこと。自分にとっては大きな額で、大事なお金だったこと。いろんな気持ちが混ざり合って、オフィスに戻って涙ボロボロでした。(心配かけてしまった社員たちにごめんねって言わなきゃ)

1本目の電話番号も、2本目の電話番号も、おそらく「捨てSIM」です。ケニア人なら、1キャリアあたり5枚までSIMが作れるらしく、キャリアは複数社あるので、簡単な収入源として、自分のSIMを売るという人がそれなりにいるからです。日本の口座売りと同じ構図です。それが犯罪に使われては捨てられて、という繰り返しです。
一応ケータイキャリアには報告しましたが、同様のケースが多すぎて、おそらく対応してもらえないです。
周りの人に聞くと、警察もほとんど動かないようで、犯人にたどり着くのは絶望的だそう。

こんなことを経て、1週間弱電話恐怖症になりつつ思ったことは、やっぱり自分がここで仕事としてやりたいことは明確。
信用スコアリングです。
今は中古車ファイナンスの与信基準として使っているスコアリング、まだまだ形にできていないけど組み込みたいものがアイデアとして(とっ散らかってるけど)頭の中にあります。
もっと精度を上げていって、ローンの申請だけじゃなくて、事業を始めるのにも、家を借りるのにも、メルカリのようなCtoC取引にも、いろんな所で自分の信用証明になるようにしたい。
詐欺を働く人よりも、地道に仕事して、ちょっとずつ貯金をするようなひとが、その努力を認められるように。

一方で、少し時間が経って、(完全にではないけど)頭が冷えて「今回の詐欺の犯人を恨まないようにしよう」と思っています。自分から盗んだ1万円で、何か欲しいモノを買ったかもしれないし、おいしいモノを食べたかもしれない。でも、それって本当に彼にとってハッピーかと言われると、疑問です。毎日毎日、人に電話をかけまくって、たまに騙されてくれる人がいたり、いなかったり。で、彼が今後、何か事を成す可能性があるかというと、おそらくないです。だって、仕事=振り込め詐欺なので、家や車を買うローンを得られるはずもなく、新たに仕事に就くにしても、一度詐欺の味をしめてしまうとコツコツ真剣に働くなんてきっとできない気がします。
彼にこのお先真っ暗な道を選択させたのは何かというと、きっと環境です。詐欺を働いても、警察には捕まらないから、って誰かにそそのかされたんですね、たぶん。で、ほんとにやってみたら、(彼らの生活水準からすると)一攫千金。真面目に会社に勤めても月収2~3万円の世界では、そっちのほうが合理的な生き方なのかもしれません。
だから、厳しく取り締まったところで、頑張って抜け道を考える方向にしか、彼は進めないのでは、という気がして、それはもう、怒るよりも、嘆くしかないなと思います。

もちろん、真面目に働いている人だってたくさんいます。でもそれが、見えないし報われない。真面目に働いた先を夢見られるほど、余裕がない。自分は、それでもコツコツ働く、うちの顧客のような人たちに一縷の希望を見出しています。
自分の仕事を通して、「まだ詐欺なんてやってんの、時代遅れだね」という潮流を生みたい。「こっちは信用上がったから、車も買えたし、仕事も順調だけど?」って。
それを見て育った子どもが、自分の人生は生まれた環境次第じゃなくて、自分でデザインできると信じられるようになるまで。

詐欺の話のはずが、結局オチは仕事の話でした。
会社が好きすぎるだけなので、ご容赦ください。
次にnoteを書くときは、ポジティブな話だといいな。

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