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嘘にまみれる毎日

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毎日一つ嘘をつきます。誰も傷つけない嘘を。
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記事一覧

【嘘】バネに夢中

【嘘】バネに夢中

ボールペンをバラしたらバネが出てきた。
指先で潰したり、伸ばしたり、くるくる回しながら螺旋を辿ったりとしていたら、気が付くともう休み時間になっていた。
書き途中のノートには「ラクダよりもペンギンの、かさ」とだけ書かれていて、続きを確認しようにも黒板はもう綺麗に消されていた。
なんだかよく分からない。
今日の授業の内容はテストに出ないといいな、と願うと、バネがぴょんと跳んで、「気にするなよ」と言って

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【嘘】黒鍵とスキップ

【嘘】黒鍵とスキップ

子供のころは、ピアノの黒鍵の上をスキップをするように走っていた。
後ろから、綺麗な音楽がついて来るようになった。
すぐに追い抜かれ、大人になるとどこかへ行ってしまった。
スキップはもう、しばらくしてないな。

【嘘】記憶の中の黒板消しクリーナー

【嘘】記憶の中の黒板消しクリーナー

教室を思い出すといつも不安になる。
なにかが、変。ずっと。

違和感は最初から感じていた。
黒板が真っ黒なんだ。
確かにそうだ。本来、黒板は緑色のはずだったんだ。

あの黒板消しのせいだ。消しすぎた。なにもかもなくなってる。

早く黒板消しクリーナーを用意しないと。それもとんでもなく大きな。
一回、吸い込ませて綺麗にしよう、全部。

全部。

【嘘】茄子ロケット

【嘘】茄子ロケット

茄子を詰めたロケット。
それを太陽へと打ち上げる。
これでよし。

大晦日は遅くまで起きている人が多い。
そのため、どうしても多少は夢の提供が混み合ってしまう。
対策として、幾分かの夢を似通ったものにする事で、ある程度の負荷を低減させている。
幸い、おめでたい夢として共通の認識が広まっているので、それに則っておけば不満や不信は出にくい。

ロケットに詰めた茄子は、初日の出の共に夢に現れるだろう。

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【嘘】大きさ林檎と小さな喜び

【嘘】大きさ林檎と小さな喜び

家を出ると、また、玄関の目の前で巨大な林檎が回っていた。
今日のは、おおよそ2m前後の大きさだ。
芯を軸に横方向に高速回転し、ブウウンと低い音を上げている。
回っているのは良いことだ。

急いで家の中へ戻り、キッチンから果物ナイフを手に取り、林檎へと向かう。
高速で回転していることを利用すれば、皮を剥けるはずだ。

背伸びをして、果物ナイフをそっと林檎の上の方へ添える。
キュルキュルと細長く赤色の

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【嘘】この時期の仕事

【嘘】この時期の仕事

今年のサンタクロースは、ソリの上から袋いっぱいに入れたビー玉を夜空へと撒く事で、まとめて子供の希望を配るそうだ。
望みの多様化に対しての対策らしいが、個人的にはとても嬉しい。
夜空にきらめくビー玉は、今から楽しみだ。

でもそうなると、去年夜空に撒いた色鉛筆を片付けておかないと。

天袋にしまった折り畳み式のソリの出番かな。

【嘘】朝の新聞紙

【嘘】朝の新聞紙

朝、起きたらゴミ出しに行く。
これはいつもの日常。
だいたいいつも寝ぼけ眼で、うつらうつらしながらゴミ捨て場まで、パンパンの袋を両手にふらふら歩いていく。

今日は資源ゴミの日。
プラゴミの袋を入れ、ふと足元を見る。
新聞紙の塊が四つ積まれて置かれている。

新聞なんてここ何年も読んでないな。
ちらっと見てみる。

なんだこの新聞。
一面に「もももももももももももももももも」と「も」という字で埋め

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【嘘】朝ご飯の準備

【嘘】朝ご飯の準備

朝から食パンが空を飛んでいる。
今日は特に多い。くるくるくるくると、空を覆う勢いだ。

窓を開けて、布団叩きを長く長く伸ばしたら、ベランダから身を乗り出して食パンを落とす。

ぱんぱんぱん!

三つ取れた。
お、大麦粉入りか。いいね。

【嘘】雨の中の炭酸

【嘘】雨の中の炭酸

帰り道。
突然雨が降ってきた。傘なんて持ってきていない。
仕方がないのでしばらく雨宿り。やむまで待つことにする。

待つこと数十分。

雨は一向にやむ気配はない。
街灯やら車のライトやらが水たまりに反射して、夜の街はギラギラと光っている。
もう諦めて、濡れながら帰ることにする。
走ればなんとかなる距離だ。

雨はどんどん強くなる。
気付けばもう、これ以上濡れようがないほどびしょ濡れだ。
こうなった

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【嘘】っぽかったから

【嘘】っぽかったから

飲み方の席「幼い頃、勘違いしていたこと」という話題で「土星の輪っかは、誰かが輪投げで投げた物だと思っていた」と話しをした。
友達からは「可愛い子供だったんだな」とケタケタ笑われたけど、帰り道、空からは「正解!」と声が聞こえた。

やった、当たった。

【嘘】握手

【嘘】握手

砂場。
山を作ったら、強く固めてからトンネルを掘る。
向こう側へ抜けたら、両方から手を入れる。
右手と左手を繋ぐ。
ぎゅっと繋ぐ。

そのまま手を上げる。
えいやぁ。
そうやって内側から山を崩す。

山はわさっと崩壊し、砂にまみれた自分の手が現れる。
両手で繋いでいたと思っていたのだけど、右手も左手も掴んでいたのは砂の塊だった。

その日から砂場が親友になった。

【嘘】フラクタル宇宙論

【嘘】フラクタル宇宙論

とんでもなく巨大な蝸牛が、地平線を這ってズルズルと進んでいる。
夜空の星を食べてどんどんと、更に大きくなっているようだ。
やがて蝸牛は夜空を覆い尽くす程大きくなり、そしてそのまま、殻にこもり出てこなくなった。

その殻は銀河そのものであり、つまり、その中の蝸牛は宇宙空間なんだろうな。

【嘘】弦を替える

【嘘】弦を替える

久しぶりに楽器が弾きたい、そう思った。

家に置いてある長らく弾いていないアコースティックギターを取り出してみる。
弦が酷く錆びている。
幸い、替えの弦も置いてあったので、さっそく張ってある弦を外そう。

ペグを適当にグリグリ回しながらジャガジャガ弾くと、奇っ怪なハーモニーが鳴って面白い。
なんとなく、弦を替える時は皆この遊びをしているんじゃなかろうか。
そしてもう一つの楽しみ、弦を全て外した後、

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【嘘】猫の昼寝

【嘘】猫の昼寝

これは猫の秘密。
ただ、だらりと昼寝をしているだけのように見えるけれど、本当は日向を探しては太陽に話をしている。
人間たちはこのことをまったく知らないけれど、だいたいいつも、日向で眠ることの気持ちよさを伝えてるだけなので、何も知らずにかわいい寝顔を愛でていれば良い。
あとはたまに、おでこが痒いことを伝えてる。