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私は社長だ。

親指の付け根下のふっくらしたところや、手首やひじの内側にぷっくり盛り上がる血管を撫でると、ふわっと全身の力が抜ける。
ぞわっとした後に、ぬるっとした気持ち悪さを覚えて、次の瞬間、冷たい血液が頭から下へ急降下し、体から力が消える。
だからこそ採血は泣くほど苦手、いい歳の大人が、横たわって歯を食いしばって涙目で耐えるなんてカッコ悪いから、余計に苦手だ。
と言う訳で、検査はいつも何らかの理由をつけて逃げ回っていたのだけど、今回は逃げられなかった。

心と頭、過去の経験やら何やらの、至る所からありったけの勇気を掻き集めて挑んだ健康診断は、見事に尿検査で引っかかった。
敗北。惨敗。領土はくれてやる。

総コレステロールとクレアチニン数値が高く、調べたらそれは腎臓機能の低下を意味するらしい。
腎臓は血液の濾過を担当するポジション、老廃物の排出、いらないものを容赦なく捨てていく断捨離の名人。
体がとても浮腫むようになったなぁ…とか思っていたから、理由がわかった。
名人のための働き方改革を、体の経営者として迅速に考えなければ。

この体の社長は私だ。
様々な社内組織が常に自ら的確な指示を出せるように、現状をしっかり把握し、予測し、ダメなところは早めに改善に取り組まなければならない。
1つの組織が上手く稼働していないことに長く気付かないでいると、連鎖し、経営が苦しくなり、赤字に息が上がり、終いにこの会社は立ち行かなくなる。
悪化しているその1つの組織とはいつも、左胸の奥にいる私からだいたい遠いところに居るものだ。

だから社長は全員の顔をしっかり見つめ挨拶をせねばならない。
スマートに簡潔に、いつもシンプルに考えねばならない。
どんな小さなことでも疑問に思い、クリアになるまで社長自らが突き詰めなければならない。

つまり私は、毎日のポテトチップスを止めることから考えねばならない。

赤字経営。
本当に、この体に申し訳ないと思っている。