おとぎ話「花と鏡」⓷

「花と鏡」②の続きです。


翌朝、ローズはいつもより早起きして、ドレスではなく、汚れてもいい服装に着替えました。

ここ数年は、いつも見た目重視な恰好をしていたので、このような恰好をするのは本当に久しぶりです。

「ローズ様!こんな朝早くからどうしたのですか?」

いつもより早く起きて、また動きやすそうな服装に着替えて来たローズをみて召使いたちはとても驚いています。

「・・・ちょっと、お花に水をやりたくて」

ローズは少しばつが悪そうに答えます。

「それでしたら、マーガレット様がちょうどやっておりますよ、一緒に水撒きをしたらどうでしょうか?」

召使いが奥にある庭を指さします。

ローズは昨日のことを思い出し、一瞬躊躇しましたがありがとうと伝え、庭の奥に向かっていきました。

「ああ、やっと芽が出たのね!!これから楽しみだわ!!」

庭へ着くと、小さな花壇にマーガレットが佇んでいました。そばには庭師がいます。二人で花の世話をしているようでした。まだ、ローズが後ろにいることに気付いていません。

「あら、こっちは何か病気にかかっているみたいね・・・大丈夫、庭師さんからいい肥料をもらってきたから。すぐに治してあげるからね!」

マーガレットは相変わらず、服が汚れてしまうことなんておかまいなしに、素手で土をさわります。

「マーガレット様、いつも手伝ってくれてありがとうね!昨日も結構長い間手伝ってくれたけど、大丈夫だったかい?昨日は、王子さまがうちにいらっしゃったんだろう?」

「そうなの。昨日は、お姉さまの大事な方が来ていたのに私ったらすっかり忘れて、お姉さまに恥ずかしい思いをさせてしまったの。だからね、明日は絶対綺麗な服を着て王子様に挨拶しないと!!」

どうやら、本当にマーガレットは自分のせいで王子さまが帰ってしまったと思っているようでした。

「そうかい!しかし、王子さまは、ローズ様の婚約者になるんだろうか?たしか、ほかのご令嬢さんたちの所もまわっているのだろう?確かにローズ笹様は別嬪さんだが・・・なんていうか、ねえ?」

そのあとに続く言葉は聞かなくてもローズには予想できました。

―――そうよ、わたしはどうせ、顔しか美しくないわ

マーガレットは庭師の言葉にきょとんとした顔をします?

「・・・?なにか問題があるの?お姉さまはお母様に似てとっても美しいわ!みんなも知っているでしょう?わたしはあんな綺麗な人がお姉さまであることがとても嬉しいの!!大丈夫!お姉さまは美しさだけではなく、礼儀や品格をもっているわ!王子さまはきっとお姉さまを選ぶわ!」

「まあ、ご令嬢さんとしての品格はお持ちだけど、なんていうか、もう少しばかり我々に対してマーガレット様のように接してくれてもねえ」

「・・・私のように?」

「そうさ、わしら以外にもこの屋敷のメイドやコック、執事、家庭教師、そんな人たちにね、マーガレット様はとても親しくしてくれるだろう?ローズ様は確かにお綺麗だ。でもね、ローズ様にはわしらの事が見えてないように思えちまうんだ。それがご令嬢ならば当たり前ってことはわかっとるんだが・・・マーガレット様とお話ししているとねえ。正直、わしらはローズ様よりマーガレット様のほうが王子さまのお嫁さんになってほしいって思っとるよ」

―――ガタンッ

その時、隠れて聞いていたローズの手がうっかり、近くにあったスコップに当たり、スコップが倒れてしまいました。

「あ、こ、これは、これはローズ様!こんなお早い時間から庭になんの用ですかい?」

庭師は動揺しています。

「・・・その、私も、お花に水をあげようと」

「なんと!!これはこれは、失礼!じゃあ、わしは違う所をやるから、マーガレット様!あとはローズ様とよろしく頼みますぞ!!」

そう言って庭師はそさくさと離れて行ってしまいました。

「お姉さま・・・おはようございます」

「おはよう・・・」

「えっと・・・」

マーガレットはなにかローズに言おうとします。それより先にローズが口を開きました。

「久しぶりに、早く起きたの、わたしにも水撒き、とか、その、手入れの仕方、教えてくれる?その、なんていうか、久しぶりすぎて、忘れちゃって」

ローズの発言に、マーガレットは一瞬目をぱちくりさせましたが、すぐに笑顔になりました。

「もちろん!!大丈夫ですよ!小さい頃いつも一緒にやっていましたもの、すぐにお姉さまなら思い出しますわ」

マーガレットはローズに最初から親切に教えてくれます。それをローズは素直聞いて、ふたりでお花の手入れを始めました。マーガレットは久しぶりにローズと花を手入れすることができて、とても嬉しそうです。そんなマーガレットをみながら、ローズはゆっくり話し始めました

「マーガレット、昨日はごめんなさい。あなたがこうやって毎日お世話をしてくれているのを知っていたのに、それでも急いで準備してきたのに、ひどい事を言ってしまったわ」

ローズは自嘲気味に笑います

「さっきの、庭師が言っていた通り、わたしは本当に彼らに対して何も関心がなかったわ。いて当たり前だし、やってもらって当たり前だと思っていたの。バカみたいよね。マーガレット、わたしも彼らと同じ意見よ。私なんかより、マーガレットの方が王子さまに相応しいわ」

それを聞いたマーガレットは悲しそうな顔をしました

「お姉さま!!なんてことを言うのですか!!私はたとえ庭師さんたちとお話しする事はできても、王子さまとは楽しくお話しは出来ません。お姉さまが持っている教養があるからこそ、王子さまと楽しく会話することができるのですよ!!わたしは、わたしにとっては自慢のお姉さまです、そんな、悲しいことを言わないでください。いつものように自信満々なお姉さまでいてください」

そう言うと、マーガレットはすすり泣いてしまいました。

そんなマーガレットをみて、ローズは本当に心が美しい子なんだと実感しました。

「・・・わたしも、あなたがわたしの妹であることを誇りに思っているわ。ありがとう、昨日は本当にごめんなさい。なんとかして王子さまに気に入られようと、少し焦っていたみたい。反省したわ。もう大丈夫。明日、王子さまに、もう一度あなたのことを紹介するわね」

「昨日は、わたしが悪いのです。明日こそはちゃんとした正装でご挨拶しますね」

二人はそれから、なごやかに会話をしつつお花の手入れをしました。そのあとも空き時間に二人でお屋敷の色々な場所に行き、召使いたちのお手伝いをしました。そこでローズは今までの態度を謝罪しました。

最初は突然謝罪されたことに驚いていた召使たちも、ローズが普段なれない掃除などを一生懸命やっている姿を見て、とても嬉しい気持ちになりました。

――――――――――――――――――――――――――

今日はここまでにします。

続きは明日公開予定です。

以上、星空夢歩くでした。

読んでいただき、ありがとうございます。プロットの設定は迷子になっていますが、なんとか書いています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?