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ブロマンス好き拗らせオタク女、推しコンビ香水を作る。

はろー、れでぃーすあんどじぇんとるめん。
今回のテーマは、オタクの嗜みとしてここ数年ですっかりと定着した節のある「推し香水」。この度、「推し香水」作りの雄とも言うべき『THE KAORI BAR FINCA』さんにお邪魔して香水を作ってきたのでレポをするよ~という主旨の記事です。

FINCAさんは推し香水作り界隈では言わずと知れた名店で、既にたくさんのレポがワールドワイドウェブ上に存在している訳ですが、
そんな中でも敢えてレポを書くことにしたのは、FINCAさんのレポでも、今回わたしが作ってもらった「ふたりの人物をイメージした香水」、俗な言い方をするのなら「推しカプ香水」を作ったよ! というレポが思いの外少ないように感じたからです。
実店舗で、実際の香りを嗅ぎながら、対面で細かくイメージをヒアリングしてもらって香水を作れるところが最大の魅力のFINCAさん。
そんなFINCAさんでも推しカプ香水って作ってもらえるのかな……? と思っているオタクの皆さん。

Don't worry. They're here!
(安心してください。彼ら、いますよ!)

という訳で早速ひあうぃーご。

1.創香の経緯

※読み飛ばしてもよい内容です。

そもそも今回、何故推し香水を作ろうということになったのかと言うと、遠方に住むおともだちと、長い自粛の時代を越えて実に3年ぶりに会って遊ぶぞ! となったことがきっかけです。

※注:拙作『無意識と直感は裏切らない。~アラサー女オタク、イメコン診断を受ける~』に登場のおともだちとはまた別のおともだちです。

今回のおともだちには、前回会った頃からずーっと一途に推し続けている二次元・三次元の推しさんがいるのですが、そんな彼女と推し香水を作りに行ったら、香水作りの過程でとってもアツい推しトークが聞けるのでは? それってめっちゃ楽しいのでは? と思った訳です。
オタクはステイホームの期間が長過ぎたせいで、もぎたてフレッシュな推しトークを生で聞く機会に飢えていたのであった……(よくわかるあらすじ)

で、どうせ一緒に行くのなら、せっかくならわたしにだって推しというものはいるし、いちオタクたるもの、ここらで一発嗜みとして推し香水を持ってみてもええんちゃう? となった訳ですが……
ここでちょっとした問題が発生しました。

実はわたしことみず野郎は、基本的にどのジャンルでもあまり単推しということをせず、コンビやグループやユニットを箱で推すタイプです。
早い話が、個性よりも関係性に萌えてしまうタイプのオタク。
現に、今の自沼(某海外スポーツ)における最推しは全部で4人いるのですが、どうにか頑張ってみたものの、どうしても2人までにしか絞ることができませんでした。

ふたりの内のどっちかを選ぶなんて無理!!!!!
ていうかこのふたりが一緒にいるからええんや!!!!!!!!!(泣)

なお、厳密に言うと、このふたりは「推しカプ」ではありません。「推しコンビ」です。
……まぁ、三次元の推しなので、たとえ妄想の中であってもおいそれとは付き合わせられないという大人の事情もあるんですが(ふたりとも普通に彼女いるし)、そういう事情を差し引きしても、別に付き合って欲しいとかイチャイチャして欲しいとか、そういう対象ではありません。
詳細は後述しますが、ふたりの間にある、愛とか恋とか友情とかいうわかりやすい名前で呼ばれるものではない、ただ確かにそこに存在している何らかの「感情」を推している、という、そういうふたりです。

そろそろお気づきだろうか。
そう、ブロマンス学会所属ストーゲイ派を名乗るわたしことみず野郎が、酷く性癖を拗らせた面倒くさいオタクであることに。

そんな拗らせ性癖が災いし、何をどう頑張っても推しコンビを分断することができなかったわたしは、駄目で元々で「推しコンビ香水」をお願いしてみることにしたのでした。

2.FINCAについて

ということで、今回お世話になったのが、新宿にある『THE KAORI BAR FINCA』さん。

FINCAさんがどういう香水ショップなのかについては、既に多くの良レポが存在するので詳しくはそちらを参照していただくこととして、
ここではざっくりとだけ説明すると、

・ショップオリジナルの香水を複数種類重ね付けすることで、理想の香りを作り出す「PILE-UP(パイルアップ)」という方法で香りを作る
・権利関係の問題があるので、推しの名前や画像を示して「この人(キャラ)をイメージした香りを作ってください」とオーダーすることはできない
・よって、創香はあくまでも、創香者(お客さん)が語るイメージに基づいて行われる
・購入した組み合わせの香水を「○○のイメージ香水作りました!」と、具体的に名前や画像を添えてSNS等に上げるのもNG

要は、オタクの持ち得る語彙力の限りを尽くして推しを言葉で表現しなければなりませんよ、と。おうおう字書きとしての腕が鳴るじゃねぇのよ!

とっても人気のお店なので、予約の上で訪問することをおすすめします。
webの予約フォームからはインタビューシートもダウンロードすることができ、これを予め書いて持っていくとよりスムーズに創香してもらえます。
創香の所要時間は、2023年6月時点で30分。結構タイトなので、とにかく自分の中で、推しのイメージをどれだけ事前に言語化しておけるかが鍵です。

目が……目がァ……!!!

こちらがわたしの書いていった実際のインタビューシート。読まなくていいです。全然読まなくていい。
何しろ今回は推しふたり分のイメージに加え、その関係性についても伝えなければならないので、紙幅なんか足りる訳がなかった……。字書きなので、イメージを言語化する作業にハードルはなかったんですが、言語化したものを書き切れないというまさかの誤算。
何とかして枠内に収めなきゃ! けどこの文量を手書きで綺麗に書ける自信が微塵もない上に面倒くせぇ! と葛藤した結果、ものっすごいちっちゃいフォントサイズでギチギチに印字する暴挙に出たという。
スタッフのお姉さんが目をしぱしぱさせていました。こんなの読ませるなよな……。

なお、FINCAさんでは、名前を出せない都合、推しのことを「彼」「彼女」とスタッフさんが呼ぶ、というのをレポで読んで予習していたんですが、
今回は「彼」がふたりだとややこしいなと思ったので、推し①を「M」、推し②を「C」とシートに書いたところ、その便宜上の呼称がヒアリングでも採用されました。
よって以下、推しコンビのことはMとCと呼びます。いやただのイニシャルなんだけども。なんか誰のことだか容易にバレそうだな……。

※※以下免責※※
お店のルールですので、この記事や他の記事からの状況証拠的にMとCがそれぞれ誰だかわかっても、コメントやSNS上で名前を出すことはくれぐれもお控えください。

みずくんとの約束だ!

3.創香開始!

それでもこのクソほど読みにくいシートに基づいて、嫌な顔一つせず創香開始してくださるスタッフさん。
「推しがふたりいて、どうしても一人に絞れなかったのと、ふたりの関係性が好きなので、それを表現したような香りが作れればと思ってるんですけど……そんなことってできますか?」と恐る恐る尋ねたわたしに、「もちろん! できますよ!」と力強く応じてくださいました。プロです。ここにプロの仕事人がいる。

シートに目を通し、「ふーむ」と小さくうなずきながら考え込むような顔をなさり、
「まずは、このふたりの関係性のどういうところが好きなのか、聞いてもいいですか?」

おおう。そこからお聞きになりますか! またよりによって一番オタクが拗らせているところを!!
でも、拗らせているということは、裏を返せばそこが本質だということです。くどいようですがスタッフさんはプロです。そのことを大変よく心得ていらっしゃいます。

「えぇと……このふたりは子供の頃、競技を始めて初めて出会ってからずっとライバルで、実力も伯仲で、だからこそお互いのことが大嫌いだったって証言してるんですけど……でも、大人になって、今、世界トップレベルのカテゴリで再会してからは、バチバチのライバルっていうよりは、和気藹々としてるんです。試合の後、インタビューや記者会見の間に楽しそうにお喋りしたりとか……その雰囲気が好きで」

「ほぉぉー」

「ふたりは現在のカテゴリの若手選手の中では最も才能があると言われていて、試合中のバトルの仕方が凄くハイレベルなんですけど、そもそもそうやって全力で競い合えるのって、お互いの手の内を知り尽くしてて、尚且つ信頼がないと成り立たないことなんですよね。じゃないと重大な事故になって、最悪しぬような競技をしているので……。そういう、バトルからうっすら垣間見える、信頼とか、わかり合ってる感じとか、きっと単純な友情とか好き嫌いじゃ語れなさそうな感情がお互いにありそうなところが、いいなぁと」

難しい!!!!!!!
推しコンビの推しポイント語るの難しいよ!!!!!!!!!!!!

ですが、このわたしの拙い説明と、インタビューシートに書いてあった「実際の当人達はガソリンとかオイルとか排ガスの匂いがしそう」というスポーツのイメージから、
「バトル……なんか、情熱とか、汗っぽい感じとかですかね?」と的確に汲み取ってくださり、「それなら、ぴったりの香りがあるんですよ!」と早速一つのボトルを手に取って提案してくださいました。

「この、汗とか情熱っぽい感じの香りをふたりの共通のベースにして、そこに、ふたりそれぞれのイメージの香りを合わせて作っていきませんか? そうすると、ベースと1本目を組み合わせるとMの香り、ベースと2本目を組み合わせるとCの香り、っていう風にしても楽しめますよ!」

何それ最高じゃん。(単純)
ていうか汗と情熱の香りがあるんですね……? マジFINCAさん、逆にこの世の何の香りなら置いてないのよ。

4-1.推し①ことMの創香

という訳で、ここからMとC、それぞれの香りを探す旅が始まります。
最初はMからスタートしたんですが、シートのMの説明書きを読んだスタッフさん、ここへきて少しだけ険しい顔になりました。

「うーん……。このMの彼、『こういう香りがしそう』っていう具体的なイメージって、何かあります?」

実に鋭い質問です。
何故ならそれがわたしにもピンときていなかったからです。(笑)
シート上に並んだキーワードも、「強さ」「エネルギッシュ」「アグレッシブ」「パワフル」「剛毅」「わんぱく」「率直」「素直」「曲がったところがない」「無邪気」「純粋(ピュア)」「キュート」「乙女」「お茶目」と、統一感がない感じ。

「うん、そうなんですよね……。なんか当人、全然洒落っ気がないし、ファッションセンスも『家のその辺に置いてあった服を適当に着てきました』みたいな感じで結構無頓着で、香水とかつけるタイプには全く見えないんですよ……。だから、強いて言うなら、やってる競技柄でそれこそオイルとかガソリンとか、そうじゃなかったら、多分使ってる洗濯洗剤とか柔軟剤みたいな、飾りっ気のない素朴~な匂いがしてると思います」

「なるほど、洗剤と柔軟剤(笑)」

推しの香りについて、わたしの中で解像度が低過ぎる。
これにはさすがのスタッフさんもちょっぴり苦笑いです。それでもスススっと、石鹸系の香りをいくつかピックアップして並べてくださったのですが。
と、そんな少し困り顔のスタッフさんを見ていて、ふっとわたしの中をよぎった光景がありました。

「あ……強いて言えばなんですけど、彼の所属してるチームの親会社が、エナジードリンクを作ってまして。そのエナジードリンクは仕事柄よく飲んでるので、そういう匂いはするかも知れないです」

「……エナジードリンクですか! なるほど!」

きらーん! と、スタッフさんの目の中で何かが光るのを見た気がしました。
さて、ここからいよいよ創香が始まります。最初に決めたベースの香りと、5種類くらい選んでくださった候補の香りとを組み合わせて、順番に嗅がせてくださいます。
最初の3つは、「洗剤」「柔軟剤」というキーワードにヒントを得た、シャボン系の爽やかさと清潔感のある香りでした。推しっぽいかは一旦脇に置いて、間違いなく好きな香りです。うんうんこんな感じかも~、と楽しく嗅ぎます。
4つ目は、シート上の「キュート」「乙女」というワードから、フルーツっぽさやジューシーさのある香りを作ってくださいました。これがパッションフルーツみたいで、すっごく可愛い香りだった! 「でも、ちょっと可愛過ぎるような……?」「ですよねー、これはかなり可愛いと思います」などとスタッフさんと話します。
そして最後。

「これが、ちょっと『エナジードリンク』をイメージしてみた香りなんですけど~……どうでしょう?」
「えっ、エナジードリンク? そんなのも作れるんですね!?(笑)」

と、ものすごーく軽い気持ちで鼻先にムエット(お試し用に香りを吹きつけた紙)を近づけてみたら……

!?!?!?

すっげぇ、饐えたスパイシーな男の汗(概念)とエナジードリンクが混ざったみたいな香りがするんだが!?!?
コンビニで250ml・¥213で売られてるあのエナジードリンクっぽい、今にも翼を授かりそうな香りがするんだが!!!!!

またその、少しだけフルーツみがありつつも、決して甘過ぎずフレッシュでエッジとパンチのある香りが、剛毅さの中にピュアな可愛らしさがあって、曲がったところのない素直なMのイメージに図らずもドンピシャで。
思わず「んっふwww」って変な声が出てしまいました。そのわたしのリアクションを見たスタッフさんも、ニマリとしたり顔です。

「……いましたか?(笑)」
「……いました。試合の後、会見中に汗の染みたユニフォームの膝んとこにエナジードリンク零した推しの姿が見えました。間違いなくこれです!」

最早ドンピシャ過ぎて危ない幻覚が見えています。
冗談はさておき、本当に新鮮な、驚きの体験でした。数あるレポの中で、鮮明に「いる!!!」ってなって膝から崩れ落ちそうになった~という経験談はいくつも目にしていたものの、「えーほんとにそんな『いる!!!』ってなるの? 大げさじゃない?」と当日まで実は半信半疑だったのですが……

とんでもねぇ。
マジで出会えます。衝撃受けました。

4-2.推し②ことCの創香

さてさて、そうしてMとまさかの衝撃と感激の邂逅を果たせたので、この調子でCとも出会うぞー! と意気揚々ともう一人の推しの創香に移ります。

正直、Cの方が楽勝だと思っていました。
というのも、シートを読んだスタッフさんも、「やさしさ」「したたか」「朗らか」「お人好し」「好青年」「王子様」「美人」「華やか」「天然」「図太い」「大胆」「大雑把」「ファッショナブル」「芸術家肌」「気障」「陽気」というキーワードから、
「結構、Mの彼とは逆で、華やかさのあるイメージですよね~?」とすぐに掴んでくださった感じがありましたし、わたし自身も、「そうなんです! CはMとは逆で、将来はファッション関係の仕事もしてみたいって言ってるくらいファッショナブルな子で、凄く華がありますね。多分香水なんかも日頃からつけてると思います」とさらさら答えることができました。

「何よりもう、当人がめちゃめちゃ整った容姿をしてるので……ほんと、突然変異的に綺麗な顔をしてまして」
突然変異(笑)。凄いですね!」
「一言で言うと『王子様』っていう感じなんですけど……でも、これは個人的な解釈なんですけど、わたしはどちらかっていうと、そういう『王子様』っぽい華やかよりは、その根っこにある、アグレッシブさとか、図太くて図々しいところとか、大雑把なところとか、実は飾らなくてド天然な部分もあるところとかを推してるので、あんまり正統派王子様~みたいになってしまうと、ちょっとイメージと違っちゃうかもです」

MよりもCに対しての方が拗らせまくってることがよくわかりますね。
結果、予想外に難航しました。Mと同様、5種類くらい選んでもらい、ベースと組み合わせて嗅がせてもらったのですが、結局どれもMほどの衝撃をもってはピンときませんでした。
内訳としては、出身地であるモナコの海街のイメージから、アクアやマリン系のすっきりした香りとの組み合わせがバージョン違いで3つ。残り2つは王子様路線で、ムスク系の優雅さやフローラル寄りの華やかさのある香り。
どれも素敵な香りなのですが、どれが正解かがわかりません。どれも正解な気がする。

「うーん……。自分から『海っぽくしてください』ってお願いしておいて申し訳ないんですけど、やっぱり後半の王子様系2つのどっちかかな~とは……でも……」

爽やかでクリーン過ぎて図々しさと図太さが足りないという判断に至り、海系3つは捨てることにしたものの、王子様系2つのどちらも決め手に欠けるなと悩みに悩んでいると、そこへスタッフさんが助け舟を出してくださいました。

「Mの彼と一緒にしてみますか?」

えっ???
いきなりですね!?!?!?

急展開で一瞬戸惑ったものの、そもそも今回の創香コンセプトは「ふたりの」イメージ香水ですから、最終的にふたりを混ぜた仕上がりで判断してみるというのは、今にして思えば非常に合理的です。くどいようですがスタッフさんはマジモンのプロなのです。
プロの助言に大人しく従い、迷っている2つの香りそれぞれとMを混ぜた香りをムエットで嗅いでみると……

「あ……!!」

1つ目の、爽やかさと華やかさ寄りの香りは、Mのエナジードリンクみと路線が近いからなのか、C独自の個性があまり感じられませんでした。
ところが2つ目の、ムスク混じりの優雅さ寄りの香りと混ぜた時。
感じました。Mのつよつよな波動の中に、それと全く引けを取らず、Mと比べると多少控えめながらもけれど確かに自己主張してくるCの存在を!!

いる!!!
ちゃんと「いる」!!!!!!!!
決してお互いの存在感を邪魔しない形で、でもちゃんとMと戦ってる!!!!!!!!!!!

「……こっちです!」
「いましたか!」
「いました! なんかこう、先に嗅いだ方はMにCがちょっと負けちゃってる感じがあったんですけど……後から嗅いだこっちは、ちゃんと『張り合えてる』感じがします……!!

これを踏まえて、改めてもう一度C単体で嗅いでみると、優雅で華やかながらもイケイケ過ぎない、シンプルで、でも奥底にストロングさもある「柔よく剛を制す」ような香りが、Cのイメージにしっくりと合います。

とても不思議な体験でした。
まさか、Mと組み合わせたことによって、まるで光が差せば影が伸びるように、却って浮き彫りになってCの存在感がはっきりと確かめられるようになるだなんて……エモい……推しコンビ、激エモいよ……!!!

最後に、選んだM、C、ふたり混合、それぞれの香りのムエットを持ってお店の外に行き、新鮮でクリーンな空気の中で嗅いで最終チェックをして完成です。

5.完成!

FINCAさんでは多くの場合、創香が終わったら、香水のボトルと香りをイメージしたラベルとをお洒落なカゴに入れてSNS用の写真を撮らせてもらえるというサービスをなさっているんですが、
わたしの場合は30分という制限時間ギリギリまで創香に費やしてしまい、あまりに切羽詰まって写真を撮る時間がありませんでした。
ほとんどの人は30分で推し1人のところ、我儘を聞いて2人分、めいっぱい時間を使って提案してくださったスタッフのお姉さまには感謝しかない……! 時間の終了間際、「では、ふたりをお迎えに行ってあげてください!」ととびっきりの笑顔でお会計に送り出してくださったのが大変にうれしかったです。推し……お迎えするんですね……。

所属チームのカラーが青と赤だとシートに書いておいたら、そのカラーのカードにレシピを書いてくださった。演出がいちいちオタクにやさしい。福利厚生が手厚い。

そしてお迎えした香りがこちら~。
そんな訳で、写真はセルフです。洒落っ気もへったくれもない……。これでもヘッダー用のは、この日新宿で泊まったホテルのラグジュアリーな雰囲気のお部屋で撮りました。

《共通の香り》

SPANISH WATER(スパニッシュウォーター)

Top:ベルガモット・ネロリ・ジンジャー・カルダモン・グリーンノート
Middle:ジャスミン・ラベンダー・ゼラニウム
Base:ムスク・ウッディー・アンバー・トンカ・マリン・モス

公式サイトより

別名・情熱の水。
ベルガモットやジンジャーやカルダモンやジャスミンなどが効いていて、「饐えたスパイシーな汗」とも言うべき、爽やかだけどアグレッシブでパッショナブルな香りがします。
このスパニッシュウォーターを「汗の匂い」として扱うのは、最近FINCAさんでは密かに人気の解釈なのだそうです。

《Mの香り》

INNOCENT ANGEL(イノセントエンジェル)

Top: ベルガモット・レモン・マンダリン・プチグレン
Middle: ベイ・ラベンダー・ジャスミン・カーネーション・ミュゲ
Base: モス・シダー・ムスク・バニラ・ウッディ

公式サイトより

またの名を赤裸々天使。
持ち帰ってホテルの部屋で開封してから「天使!?」となって、膝から崩れ落ちそうになりました。
しかもイノセントって……図らずも名前からしてぴゅあっぴゅあなMのイメージにぴったりなんだが……。
単体で嗅ぐと、甘ったるくない、清楚っぽいフルーツとフローラルの香りがします。これを「汗臭」ことスパニッシュウォーターとミックスすると、スパイシーさとアグレッシブさが加わってマジでエナジードリンクみたいな香りになる。
このエナジードリンク的な香りは、「ねぇ! 私、今日、エナジードリンクの香り作った! 傑作!」とスタッフさんが隣にいる他のスタッフさんに報告してて、そんな風にわたしと一緒にはしゃぎながら作ってくださったのがたまらなくうれしくて楽しかったです。
なお、出来上がったMの香りを最初に嗅いだ時のわたしのリアクションは、スタッフさん曰くめっちゃ面白かったらしい。あまりにストライク過ぎて素で吹いちゃったもんな……。

《Cの香り》

IVORY HEART(アイボリーハート)

Top:レモン・ベルガモット・ペアー
Middle:スペアミント・ローズ・ゼラニウム・ミュゲ
Base:ムスク・アンバー・メロン・パチュリ

公式サイトより

またの名を素心。
これもねー。後から名前を知って「あ~~~」ってなりました。わかりみしかない。名前からしてCにドンピシャ過ぎる。
Mのイノセントエンジェルと同じく、シトラス系が入っている香りなんですが、ローズとパチュリとペアーとメロン、更にベースに比較的しっかりムスクが生きていることによって、優雅さとしたたかさが同居したような香りがします。大人っぽくてちょっぴりセクシーな気もする。
でもね、これも甘過ぎないし、しつこくないの。しつこくないけど地味にじわじわ自己主張が激しいの。
スパニッシュウォーター(汗臭)とミックスすると、アグレッシブさと粗野さが加わって完全にCになる。優勝した。

で、3つ全てを混ぜ合わせると……
そりゃあもう、この世のものとは思えない、とんでもねぇいい香りが錬成されます。
何ていうか、どこでも嗅いだことのない香り! そりゃあわたしだってこの世の全ての香水を知っている訳じゃないけど、それにしても初めて経験する匂い!
Mはぴゅあっぴゅあで元気ハツラツつよつよフルセンドだし、Cは優雅に王子様してるかと思えばちゃんと図太くてしたたかだし。
ふたつの個性が存在を主張し合って、まるでバトルの様相ではありながら、スパニッシュウォーターによって表現された「スポーツの汗」を共通項にしたことによって、お互いに潰し合ってしまうことなく「共存」している……!
完全なる解釈の一致の香りです。この度は誠にありがとうございました。
ていうか推しがどうこう以前に、実はわたしが個人的にずっとこういう香りが欲しかった。図らずも日常使いできる香りになってくれて万々歳です。

6.出来上がった香りの楽しみ方(余談)

出来上がった香りは、このレシピをしたためたカードに吹き付けて最後に渡してもらえるんですが、
「香水と一緒にショップバッグの中にしまいましょうか?」と尋ねてくださったスタッフさんに「あ、入れたいところがあるので、このまま貰います!」と言ってそのまま受け取りました。
カードの行き先は、創香中も肩から提げ続けていたミニポーチです。
ここには、居ても立ってもいられなくなって3月に勢いで自作した、某もち風形状のMとCのぬいぐるみ(手のりサイズ)が入っていました。

推し、実は創香してる間、ずっと一緒に居たという。笑

で、その後午後いっぱいポーチの中でカードと一緒にしておき、夕方、チェックインしてホテルの部屋についたところで取り出したら……

「う……ウワーーーーーーッ!」
(※情緒が滅茶苦茶になったオタクの悲鳴)

推しのぬいぐるみから推しの匂いがするゥーーーーーーーーーーーーー!!
しかも両方のカード入れといたから、時間経過で香りが混ざって、めっちゃふたりの香りになってる!!!
「ずっとふたりで一緒に居たでしょ!」って香りがしてる! 友達じゃないはずなのに! ライバルなのに! でも一緒に居……頂点で戦うふたりだけにわかり合える世界に居た後の……ウワーーーーーーーッ!!!(情緒の崩壊)

どうでもいいけどこの日泊まったホテルのラウンジ
こんなラグジュアリー感満載なホテルの部屋で推しコンビ香水浴びてみろよ。
容易にメンタルブレイクするぞ。

頭のおかしいオタクの感想はさておき、おともだちも2匹のぬいを掌に乗せて「えーっめっちゃいい匂いしますね!?」ってカードと一緒に何回もくんくんしてくれました。
おともだちもシトラス系とか、フルーツやフローラルでも甘ったるくない香りが好きな人なので、気に入ってくれたみたいです。うれしさと感謝しかない。

なお、(わたしの中で)今回の創香ツアーのメインだったおともだちは、もう長いお付き合いである二次元の推しさん(某刀の付喪神)をイメージして、お茶系とサンダルウッドの爽やかで頼りになる薄緑なイケメンの香りを作ってもらっていて、これもめちゃめちゃいい香りでした!
すれ違った時にこの香りがしたら、その凛々しい佇まいを振り返ってあまりの格好良さにため息ついちゃう。そういう香り。(相変わらず強めの幻覚)

彼女がちょっぴり照れながら「彼」の話をしているのを隣で聞いているのは、本当にワクワクしておなかいっぱいな気持ちだったんですが、残念ながら途中からわたし自身の創香が始まってしまって全部を聞き切れなかったので、それだけがやや心残りです。おともだち……また改めて推しさんの話を聞かせてくれよな……。
同じ時間枠で予約した場合、創香は同行者と同時進行になるので、もしお互いの推しトークを聞き合って順番に創香したい場合は、連続した時間枠で予約する方がおすすめです!

おともだちも推しさんの小もちを連れてきていたんですが、やはりカードと一緒にしておいたら絶妙に香りが移り、めちゃめちゃイケメンな匂いのするぬいが爆誕していました。
もし推しのぬいぐるみもお持ちでしたら、ぬいぐるみに使うの、超おすすめです!!
推しから推しの香りがする体験ができます!!!

※ぬいぐるみに直接香水を吹きかけると、布地が変質してしまったりシミになってしまったりすることもあるので、吹きつけたカードと一緒に箱や袋に入れて香りを移す方法をお勧めします!
※ずっと香水漬けにしていると沁みついて変質してしまい、ぬいぐるみが異臭を放つようになってしまうことがあるので、適宜干したりクリーニングしたりしてあげてください

但し、お外でやるとぬいぐるみを吸う怪しいオタクになってしまうので、それだけご注意ください。
超ラグジュアリーなホテルのお部屋でぬいぐるみの香りを吸引していたわたしとおともだち、傍から見る人がいたらめっちゃ奇妙な絵面だったと思います。笑

7.総括!

という訳で、人生初の推し香水作り、大変楽しく創香できました! FINCAのスタッフさんには感謝してもし切れん!

まとめますと……

  • FINCAさんでは、推しコンビ・推しユニット・推しカプの香水もばっちり作れました!

  • 但し、30分の創香枠で複数人分のイメージをまとめるのはかなりタイトなので、事前にどれだけ作りたい推しの香りのイメージをしっかり固めておけるかが鍵になります。

  • カップルやコンビの場合、推しAで1本、推しBで1本、計2本という作り方ももちろんできますが、ご予算が許すようであれば今回のわたしのように、共通項となる香りを入れて3本~で作ってもらった方が、より精度の高い香りを作れます。

  • 共通項となる第3の香りを入れ、AとB単体での香りも楽しめるようにした場合は、第3の香りだけ消費が激しくなります。FINCAさんではそれを見越して、共通の香りだけ倍量で購入することもできます! もちろん、後日、足りなくなった種類だけ買い足すこともできます(ボトルを持っていくとお値引きもしてもらえます)。サポートが手厚い……!

お迎えした香水そのものはもちろん、個人的には、創香のプロセスや、何なら事前準備でインタビューシートをうんうん唸りながら書いた時間と体験そのものが、一番の財産になったなと思います。
シートやヒアリングを通して言語化することによって、自分の中で、推しのどんなところが好きで推しているのかが明確になり、より推し達のことを好きになれましたし、
推し云々はさておき、自分が言葉で伝えたイメージを、スタッフさんが汲み取って香りに仕立て上げてくださり、それが自分のイメージに「ばちっ」と嵌まった時の、あの感覚……得も言われぬ快感……!
Mのドンピシャの香りが見つかった時の衝撃も凄かったですし、そのMと組み合わせる中でCのイメージが明確になっていた体験もとっても不思議で面白かった!
スタッフさんと一緒にワイワイ香り探しをする、その過程だけでも面白くて楽しくて値千金だと思います。

ていうか、こうやって香りを嗅ぎ比べて合わせて楽しむのって、香合わせとか薫物合わせって言って、平安時代に貴族の皆さまが嗜んでいたような遊びなんですよねー。
実に伝統的、且つ高貴な遊びな訳です。笑
時代が変わり、形が変わっただけで、香りを楽しむことは立派な嗜みですので! オタク、臆せず軽率に推し香水を作って香り遊びをしたらいいと思うよ!!


このレポが、「FINCAさんでも推しカプ(コンビ)香水って作れるのかな……?」と思っている全てのオタクの皆さんの背中を、少しでもやさしく押してくれますように!
みんなも推しイメージの香水作っていい夢見ろよー!!

おわります。


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