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マルチリンガルになるまでの3つの通過点

複数言語ができる「マルチリンガル」。
それってどうやってなるの?
今回はわたし「ゆめこ」のケースを解説。

言語の勉強法ではなく、生い立ち紹介みたいなかたちですが
「こういうケースもあるのね〜」とかるく読んでいただければ。

そもそもわたしは「どうマルチリンガル」なのか

わたしは

・中国生まれ
・4歳まで中国人の祖父母に育てられた
・親戚に会いにときどき中国に行く
ために中国語ができる

のと

・小さい頃から英語を習っていた
・中学・高校で力を入れて勉強した
・カナダの4年制大学を卒業した
ために英語ができる

のと

・国籍は日本
・4歳〜高校卒業まで日本で生活
・日本で就職したことがある
ために日本語ができる

ので「マルチリンガル」と自称している。

「トリリンガル/トライリンガル」といわれることもあるけど
・響きがかっこいい
・英語話者との会話でよく使われる
・今後ほかの言語も習得するかも(イタリア語は挫折したけど)
という理由で、ここでは「マルチリンガル」で統一する。
(定義が気になる方はこちら。)

でも、楽してマルチリンガルになったわけではない。
母親が中国人でも
英語圏に留学しても
複数言語を使えるレベルまで引き上げて保つには努力がいる。

でも振り返ると、その努力のプロセスは楽しかった。

わたしがマルチリンガルになるまで

マルチリンガルになるまでに、それぞれの言語で3つの通過点があった。
◇環境にどっぷり浸かる
□文化への興味をもつ
△楽しく勉強する

わたしの場合、これらのどれか1つが欠けても、今のレベルの言語能力は習得できなかったと思う。

◇環境にどっぷり浸かる
ありがちなんだけれど、これはやはり近道。
そして年齢が若ければ若いほど有利なのは事実。
環境の中で、とにかくネイティブの表現を盗む。
そしてとにかくトライ&エラーを繰り返す。

□文化への興味をもつ
その言語の文化に興味がないと、習得はできない。
外国文化に興味がもてる環境・きっかけに恵まれたことは、本当に両親に感謝。

△楽しく勉強する
いくら環境が恵まれていたわたしでも、「勉強なし」でここまできたわけじゃない。
でも先述の「多文化への興味」ががっつりもてていると、内的モチベーションが保てる。
そうすると、「勉強」を「ツライ勉強」と思わなくて済む。
自発的に楽しく勉強するから、伸びないわけがない。

順番はシチュエーションによって異なる

わたしの場合

【中国語】
①○環境にどっぷり浸かる
②□文化への興味をもつ
③△楽しく勉強する

【英語】
①□文化への興味をもつ
②△楽しく勉強する
③○環境にどっぷり浸かる

【日本語】
①○環境にどっぷり浸かる
②△楽しく勉強する
③□文化への興味をもつ

それぞれの言語ごとに解説していく。

【中国語】

①○環境にどっぷり浸かる
実はわたしの母語は中国語。
幼少期は両親と離れて中国で祖父母に育てられたので、4歳までは日本語にほとんど触れずに育った。

②□文化への興味をもつ
小学生のころは、年に1回のペースで中国に「里帰り」していた。
大好きな祖父母との会話は中国語だし、
わたしに中国語を忘れてほしくなかったのだろう。
母はいつも現地の絵本や教科書を用意して
中国語に触れられるようにしてくれていた。
母から中国語の「宿題」を出されたことも。

でもじぶんからもっとうまくなりたいと思うようになったのは
小学校の総合学習(異文化教育)がきっかけ。
授業で中国のことを話す機会があったり
母がゲストスピーカーで呼ばれたりして
じぶんのもつ中国のバックグラウンドや
中国文化を知っていることに誇りをもてたからだ。

③△楽しく勉強する
読み書きがあまりできなかったため、
カナダの大学で中国語を1年ほど履修した。
英語で中国語を学び直すのはおもしろかった。
そのクラスで少し語彙力は増えたのかもしれない。
(そこで当時の恋人と出会ったから、授業の効果についての記憶はあまりない。)

また、移民国家カナダでは、中国語圏からきた人たちと知り合って親しくなることも多かった。
だから中国語で話す機会も、少なくなかった。

そしていま、台湾に来て、また改めて勉強している。
独学で中国語検定の勉強をして合格もした。
中国とはまた別の中国語環境にどっぷり浸かり、学び続けている。

【英語】

①□文化への興味をもつ
ほとんど記憶のない小さい頃から英語レッスンに通わせてもらっていたみたいだけど、
当時言えたのは「I don't know.」のみだった。
その後小3ごろからまた1年ほど通って
「あ、わたし英語得意かも!」と思った。
でも当時はまだどう役に立つかピンときていなかった。

でも小さいころからサンタさんのプレゼントはなぜか英語のものが多かった(おなかを押すと英語で「くすぐったい!」と笑うエルモのおもちゃとか、ピーターラビットの英語CD付きの本とか)から、母の思惑どおり、英語は身近なものだった。

じぶんから「もっと英語がうまくなりたい!」と思うようになったのは、小5のとき家族旅行でオーストラリアに行ってからだ。
そのツアーで現地の小学生やガイドさんたちと交流する機会がたくさんあって、「こんなフレンドリーな人たちがいるんだ!もっとおしゃべりしたい!」と思った。

あとは、衛星チャンネルで観ていたハリウッド映画の影響もある。
洋画や洋楽が好きになって、ぼんやりと「欧米文化」への憧れを抱いたのだ。

②△楽しく勉強する
わたしの場合はすでに2ヶ国語で日常会話ができたから、3ヶ国語目の英語は入ってきやすかった。
習い事や中学校の授業では好成績をとった。

高校では英語との関わり方が変わった。
普通の英語クラスではなく、ネイティブ教師が教える帰国子女が集まるクラスに入ったため、授業は英語の映画を観たり洋書を読み込む授業だった。
英語で英語を学ぶようになった。
カナダの大学に行くために英会話に習い、
日本の受験英語ではなくTOEFLの勉強をした。
英語力への自信を失ったり、取り戻したりしながら、夢中になって勉強した。

③○環境にどっぷり浸かる
カナダでの大学生活が始まってからは、
もちろん英語漬けの毎日。
授業・課題、アルバイトでのやりとり、友達・恋人との会話。
そのほか生活のすべてが英語だったから、英語で夢をみるようになるまでにそう時間はかからなかった。

ネイティブの表現をひたすらマネした。
聞いた表現を使って話してみる!
読んだ表現を盗んで書いてみる!
それを積み重ねた記憶しかない。

最初は授業がわからず、泣きべそかきつつ
教授のオフィスに通って質問攻めをした。
テキストを読むのに、論文を書くのに、
ネイティブの3倍の時間をかけた。
グループの中に入って会話についていけないこともしょっちゅうだった。
それでも必死にしがみついていたら、
なんとかなるんだ。
気づいたら、ことばで困ることはなくなっていた。

【日本語】

①○環境にどっぷり浸かる
「コレハ ナンデスカ?」しかわからない状態で来日&帰化。
でもいまでは日本語がネイティブ言語。
それはやはり家でも日本語、保育園や学校でも日本語、という環境にどっぷり浸かったからにほかならない。

日本の保育園に入ったころ、日本語は話せなかった。
でもすぐにおともだちができた。
「あんたが中国語、おともだちは日本語、でコミュニケーションをしていたのを見て、感動したよ!」と母が話してくれた。
幼児ってすごい。
その後どう日本語を習得したかは、
残念ながらまったく覚えていない。

②△楽しく勉強する
学校の「国語」は得意なほうだった。
漢字テストは満点だったし、文法の活用の授業も好きだった。
でも、楽しく勉強できたには古文が出てきたあたりまでだったかも。

あれから10年以上経ってから、
日本語教師になるにあたって、養成講座で日本語(教授法)を勉強し直した。
日本語の奥深さ、難しさを再確認。

そして今、このように文章を書くにあたって膨大な時間がかかるあたり、わたしはもっと日本語を勉強する必要がありそう。

③□文化への興味をもつ
中国語や英語とは違い、日本文化への興味は大人になってからじわじわと湧き出てきている。
なにせ海外にいると、
わたしは「日本代表」になる。
日本人だというと、文化についていろいろ聞かれる。
それに答えられないと恥ずかしい。
言語を教えるとなると、さらに知っておかなければいけないことが多い。
だから今さらだけど、一番生活していた期間が長い日本についても、もっと知りたいと思う。

マルチリンガルであり続けるために

3つの通過点を経てマルチリンガルになった。
でもそれで終わりじゃない。
マルチリンガルであり続けるためには、
◇いろんな形で言語に関わり続ける
ことが必要になる。

ある程度言語を習得したら、そのスキルを保つのが大事。
言語は使わないとすぐ忘れてしまう。
運動しないと筋力がおとろえるように。

動画コンテンツを観たり
(字幕をつけるならその言語の字幕で)
本やオンライン記事を読むようにしたり
その言語を話す人たちと積極的に会ったり。
地味だけどそういう形で磨くしかない。
細々としたインプット・アウトプットを重ねるのだ。

でもわたしが一番効果があると思ったのは
その言語を人に「教える」こと。
いままで無意識に習得して運用できていた言語も、教える立場になるとあらためて構造を調べ直して理解するようになる。
それを人に説明できるようになると、
その言語スキルを「キープ」するだけでなく
効果的に「ブラッシュアップ」できる。

わたしはこれからも
マルチリンガルでありつつ
言語というツールをとおして
「多様性」にオープンな人を増やしていきたい。

さあ、みなさんも

○環境にどっぷり浸かる
□文化への興味をもつ
△楽しく勉強する

”お好み”の通過点から
マルチリンガルへの第一歩を踏んでみませんか?
もしくはお子さんを、マルチリンガルに育ててみませんか?

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