パルプ・ヒーロー・オーバーアクション

「父さん!目を覚ましてくれ!」

「ならん、息子よ。この世は悪に満ち溢れている。私には使命があるのだ。」

私は息子に言い放つ。齢60にして使命に目覚めることも珍しいだろう。しかしブッダもキリストも30を越えてその使命に目覚めた。私は二人を合わせた年齢だったと言うだけだ。

手足に巻き付けたダクトテープを確認する。私の体を締め付け、パワーを与えてくれる、いわば唯一の同志だ。そのまま体中にダクトテープを巻き付け、顔にも巻く。ヒーローのマスク。決別した人間性を守る最後の砦。

色違いのダクトテープで胸に『P』と書いた。これで私は御年60のベンジャミン・スミスではなく、世界最初で最後のヒーロー『ゲットバックゴーホーム』となった。

「泣くな息子よ。男には行かねばならない道があるのだ。」

私は2020年より始まった第二次南北戦争により荒廃したニューヨークを目指し、歩き始めた。大統領を殴るために。

【続く】

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