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言葉が好き

地元の夕方のニュースに、同級生が出ていた。
今は拠点を東京に置き、言葉のプロになっている。
物書きではない(あ、でも書籍は出している)。

新しい言葉を常に探し、辞書の編さんなどに携わっている。
彼がその道で有名になったのはずいぶん前から知っていたし、でも、今日のテレビで、彼が地元の街を歩き、取材に応えている姿を見て、なんだかあらためて誇らしく思えたし、ずっとこの道を進んで来たんだなぁとしみじみ思った。羨ましくもある。

高校の同級生だった。
三年の時には同じクラスにもなった。
特に話したこともないし、彼は私のことを覚えていないだろうけど、私はよく覚えている。
だって変わっていたもの(笑)

当時から国語が好きで、その成績も良かった。言葉のオタクだった。

今日のインタビューでも自分で語っていたが、運動は苦手だった。
見たことないような走り方をしていて、どんだけ運動オンチなんだと思っていた。そう、エリマキトカゲみたいな走り方。

人付き合いもあまり得意ではなかったように思う。

昼休みになると、誰とつるむでもなく、一人黒板にあみだくじのくじ• •を漢字で書いていた。これである。 

「籤」

嬉しそうに書いていた。
私は遠くからそれを見ていた。
話しかけたようなかけなかったような……。
でも聞かなきゃ「籤」なんて漢字知らないもの。
私、話しかけたのかなぁ。

インタビューによると、言葉に興味があったのはずっと小さい頃からだったようだ。言葉をコレクションのように思っていたと。

東京の大学に進み、そこでも真っ直ぐに言葉の道をゆき、そのままその大学の教員になった。助教授から教授になったんだったっけなぁ?
その辺は深くわからないが、いつからか、テレビでちらほら見かけるようになった。言葉の解説者として。

同級生と集まっては、「〇〇くんは好きなことを貫いててすごいよねぇ」なんて言い合っていた。

インタビューで彼は、子どもの頃はコレクションのように思っていた言葉を、今では、人と考えや思い、情報を伝え合うためのものと語っていた。

今でも街に出ては新しい言葉を探し、それを写真に撮ったりしている。研究室に籠っている学者ではない。言葉ハンターなのだ。それは彼をとてもワクワクさせるらしい。

歩き、探し、撮り、聞き、語り、考え、生きた言葉を辞書に落とし込もうとしている。

高校時代、ニキビ顔で挙動も不審で、どちらかと言えばコミュ障だったと思われる彼は、表情もすっきりとし、人との会話もとてもスムーズに、にこやかに出来るようになっている。

当たり前と言えば当たり前だけど。
もういい大人なんだし。

好きな道を貫き、今もワクワクとしながら言葉の仕事をしている彼。

やはり羨ましい。
オタクは強い。

そういえば、新しい言葉として挙げられていた中の第三位に「かわちい」が入っていた。
それを見て一人萌えてしまった。

いい年をして「かわちい」を使うことに少しためらいがあったが、学者さんも認識しているのなら、堂々と使えそうだ。

言葉ハンターを前にして、noteの自分のプロフィールに「言葉が好き」だと書いてあるのが、なんだか恥ずかしくなった。なんならプロフィールから消したい。

が、まぁ、なんとか気にせず、自分なりに好きをどこにどう落とし込むか、これからもぼやっと思い続けていこう。かな。



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