【ぴくっ03 ドヤ街に捨てられそうになる】

ぼくが母の思うとおりに勉強しなかったことで、
母がまた激怒しました。
「おまえを西成に捨てにいくから、
すぐにリュックに自分の荷物を詰めろ!」
と命令されました。

ぼくはこの家には二度と戻れないのか、
ということは愛犬のぺるとももう再び会えることはないのか、
ととても悲しくなり、
ぺるを抱きしめました。
ぺるが寂しげな眼差しでぼくを見つめました。

夜も深い時間です。
大事にしていた宝物や着替えをリュックに詰めると、
母と駅へ向かい電車に乗り込みました。
車内で母はぼくに口をきかず、
そのことがかえってぼくの心身を硬直させました。
体のチック運動が増え、
「おんっ、おんっ」と声が出ます。
電車はしばらく地下を走り、
終点の動物園前駅で降ろされました。
そこは釜ヶ崎ともあいりん地区とも呼ばれるところでした。

駅から少し歩いたところで、
「それじゃ、あとはここから独りで生きていきなさい」
と母が突き放しました。
「お母さんなんか、ハルマゲドンの業火で滅びてしまえ!」
とぼくは最後の一声を振り絞りました。

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