【ぴくっ01 チックデビュー】

ぼくは産まれた頃からおばあちゃんっ子でしたが、
母のことも好きでよくなついてました。
母もぼくをかわいがってくれることはよくありましたが、
ただ、母はもともと気質にヒステリーを持っており、
自分の思い通りにぼくが動かないと、
怒り出すことで事を進ませようとするきらいがありました。

ぼくは幼稚園へ入る前から
マンション内にある公文式へ通い(小学2年まで)、
私立の幼稚園へ受験して通い、
また私立の難関の王門院小学校に合格して電車で通学し、
はじめの3年ほどは比較的ゆったりとした生活を送りましたが、
小学4年くらいから学習塾へ入塾し、
小学5年からは隣県にある高度な進学塾へ電車で通いました。

日曜日は進学塾の授業が朝から夕方まであったので、
母から食事代として千円札を一枚もらってました。
昼食は大好きだったマクドナルドで買い、
なるだけお釣りを貯めるようにして、
漫画月刊誌のコロコロコミックや単行本のコミックを買ったりしました。
また、毎月のお小遣いでミニ四駆を買ったり、
母が月に数回ビックリマンシールを
近所のコンビニで箱買いしてくれたりすることは、
とても嬉しかったです。

しかし、ぼくが勉強で母の期待通りの結果を出さなかったりすると、
とたんにヒステリックに罵声を浴びせられたり、
殴られ蹴られ投げ飛ばされて、
一生続くのだろうかとさえ思える終わりの見えない日々は、
生前の地獄かと思えました。

チックの初まりは、
進学塾で黒板や問題集を見ていると、
瞼を強めにギュッ、ギュッと、
まばたきせずにはいられなくなることでした。
口を斜めに歪ませずにはおれない仕草もありました。

そして自宅でファミコンで遊んでいるときに、
なぜか誰もいない後ろを振り返る症状が出てきたのです。
まるで誰かから監視されているかのように……。
学校への登校時や下校時、
そのほか外を歩いているときにも、
後ろを振り返る症状が常時続くようになりました。
まるで誰かから跡を尾けられているかと気にするように……。

「おんっ、、おんっ、、おんっ」
と声を出す症状が発症しました。
視聴覚室で下級生たちとの合同オリエンテーションがあり、
教頭が「さっきから誰が、『おんっ』て言ってるんだね?」
周りの学校生全員が、一斉に僕のほうへ向きどっと笑い声が上がり、
机の下へ隠れたくなるくらい屈辱感を味わいました。
オリエンテーションを終えて教室へ戻るときに、
何人もの下級生に「おい、おん! おん!」と言われバカにされたことは、
非常に悔しい思いをしました。

そのうち音声チックに変化が生じました。
少年漫画によくある少しエッチなセリフを目にして影響を受けたのか、
「イヤーン!」と声を出さずにはおれなくなりました。
自分なりに何とか工夫して、
「よーん」「よーん」と単語を偽装して生き延びましたが、
ときおり自宅で「イヤーン」と思わず叫び、
それをたまたま母に聞かれ、
「変態か!変態みたいな声を出すな!恥ずかしい!」
と言われました。

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