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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜         P5

1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン④

「ここ、通勤経路なの。自宅はもう少し遠いんだけど…。ここに入ったのは今日で2度目。実は工事中の時から気にしてたお店なの」
会社では落ち着いたトーンで事務的な事しか話した事がなかったから余りのギャップに困ってしまう。

関口さんってこんな明るい話し方をする人だっけ?え? 別人???

「ねぇ良かったら一緒に飲まない? 一人で飲むのも味気ないなぁって思ってたの。席どこ?」
セリフいっぱいに笑顔があふれているような誘い言葉に俺は思わず頷くと素直に切符を見せる。
「『マウンテン号 2号車 7D  窓側』って書いてある」
「うわっ! 変な席取ったね。隣空いてるかな?」
ぶちぶち言いながら彼女は券売機へと向かった。

何が変な席なんだろ?

俺が首を傾げていると…
「取れたよ。隣の『マウンテン号 2号車 7C通路側』」
と、切符をヒラヒラさせて戻ってきた。
「行きましょ。そろそろ改札始まるから…」
彼女に促さられるまま俺は【待合室】とドアに書かれている部屋へ入る。
部屋はそこそこの広さが有り椅子が等間隔に並んでいた。
しかし空席は無く、どちらかと言えば混雑している。
俺は彼女と並んで壁際に立つ。
部屋に居る人々はスマホの画面を眺めている人もいれば本を読んでいたり小声で雑談していたりと様々である。
しばらくすると放送が流れてきた。
『お待たせ致しました。列車はまもなくオリオン駅に到着致します。どなた様もお乗り遅れの無いよう、ご乗車下さい」

部屋の中の人々が椅子から立ち上がり、ぞろぞろと入ってきた時とは別のドアから出てゆく。
俺達も人々の流れに沿って部屋から出た。

居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン⑤

 へ続く





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